昨日今日は、各々が読みたい本を持ってくる読書会でした。みなさんが持ってきた本は学び・学習に関する本や文学・小説など、そして私は昨日はハンナ・アーレントさんの本を今日は遺伝に関する本を読みました。
ハンナ・アーレントさんは、第二次大戦前後を生きたドイツ出身の哲学者です。ユダヤ人であったがために様々な理不尽で壮絶な困難にみまわれました。それでも生き抜いた、生きる力が強い人。
小さい頃から哲学に触れ、大学は博士課程にまで進んだ知識人ですが、もう一方で野生の勘のような決断力や行動力もある。時代背景やハンナさんの哲学者としての業績よりも、その人物像や生き様に興味があって読んでいます。
遺伝の本は、今度のブックレットが遺伝子の観点から「“自分は”何を学ぶべきか」を考えるものになるため、その予備知識として読んでいました。遺伝に関する知識は、使い方にとても気をつけなければいけないものだと読書会で話していて思いました。
科学的な見地からいうと、確かに人の能力に対する遺伝の影響は無視できないと言えます。国語や数学などの学業成績、音楽やスポーツ、勤勉性・外向性・協調性などの様々な性格的な特徴など、研究によって遺伝的影響と影響の割合が明らかになってきています。
使い方に気をつけなければいけないと思うのは、遺伝の知識は人生を左右するほどの影響力を持ちうるからです。遺伝的に向いていないなどと言われれば、早々にその方面に進むことを諦めたり鍛錬することを中断したりすることにつながりえます。
しかし、遺伝的能力は環境によって発現する側面があるため、今はまだ開花していないだけかもしれません。また、社会で生きていく上では、決して「国語ができる」というような一つの能力だけで活躍できるわけではないと思います。いろいろな能力の掛け合わせでユニークな存在になれたりするのだと考えられます。
たとえば、金メダル選手を育てるようなスポーツの指導者には、選手として勝負し尽くした結果、才能がないことを自覚し指導者に転向したというような人もいると思います。おそらくですが、その指導者の素晴らしいところは、そのスポーツに関する自身の経験と、挫折を知っている精神性と、才能の不足を感じたが故に学んだ科学的知見などの掛け合わせにあるのではないかと思っています。
生きていく上では様々な能力の掛け合わせが必要であり、それぞれの能力で100点をとる必要もないのではないかと考えています。今度お話を伺わせていただく先生は、一人一人遺伝子も生きる環境も異なる私たち人間は、自分自身の遺伝的形質に関する価値の発見を生涯を通じて行っていく必要があるというようなことも書かれていました。自分はどこで生きるのか、ということは長い目線で考え続ける必要があるものなのかもしれません。
来週は、土曜日は各々が読みたい本を持ち寄る読書会、日曜日はリベルのブックレット『人々が仰いだ古墳 〜認められるリーダーになるために〜』を使った読書会です。時間ができた方、気が向いた方、お待ちしています。
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(吉田)