2020.07.05

人間は創造的だ。

 よくアイディアやイノベーションは、異なる要素の組み合わせでしかないとか、もたらす効果は既存の行動の代替にとどまるとか、そんな話になります。これはこれで肝に銘じておくべきことなのかもしれませんが、なんだか少し寂しい気もします。もっとクリエイティブであると信じたいとか、新しいものを生み出せると思いたいとか、そん風にも思うのです。そう思える方が頑張れる。
 そこで今回は、「人間は創造的だ」という立場に立って、太古の実例を鑑賞していきたいと思います。

 私の中で外せないのは、ドイツで発見された約32,000年前のものと思われる「ライオンマン」です。体が人間で頭がライオンの象牙彫刻です。
 3万年も前に、人は何を思いこのような像を創り上げたのでしょうか。衣食住も十分に整っているとは言えない時代に、人間の体にライオンの頭をのっけたのです。そして、おそらく崇拝していたのでしょう。ライオンマンは、神の表現であるとか宗教的な道具であるとかいう考えが有力なようです。
 人々はライオンマンを創造し、崇めてました。ライオンマンも、ライオンの体と人間の頭という異なる要素の組み合わせではないかというツッコミもあるでしょうか。しかし、ここで着目したいのは、ライオンマンというこの世には存在しないモノを生み出す人間の精神です。そしてそれを神に見立てるという意味付けの力です。

 直線や真円も外せません。
 自然界には、直線っぽいものや円っぽいものは存在しますが、私たちが定規で引くような厳密な直線や、コンパスで描くような真円は存在しません。このような自然界に存在しないものを、遠い昔の誰かが生み出しました。
 私たちが思い浮かべる中で最も古い直線や真円は、金属器ではないでしょうか。銅剣の刃に見られる直線や、銅鏡に見られる真円です。人々は、直線や真円を初めて見た時、どのようなことを思ったのでしょうか。私たちが初めてディズニーランドに行った時と比べて、どちらが大きな衝撃だったのでしょうか。
 おそらく、自然界に存在する直線っぽいものや真円っぽいものに魅せられて、職人気質な人物が、直線や真円を描く方法を考え続けたのでしょう。そして、直線や真円になるように丹念に磨き上げていったのでしょう。

 人間は、頭や心に浮かんだ想像を、どうしても創造しないではいられない性を持っているのではないかと思わざるを得ません。人間は創造的であると、私は思います。


〈参考〉
・画像元のフリー写真提供者:https://www.photo-ac.com/profile/2176408

(吉田)

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