山頂に多くのチョウが集まっているのを見たことがあるでしょうか。登山者にとっては山の賑わいとして捉えられるかもしれませんが、学者の間ではなぜ山頂に集まるのかは謎であったそうです。
アリゾナ州立大学の行動学者であるジョン・アルコックは、その謎を観察によって解き明かしました[1,P114]。
アルコックの観察によると、アリゾナの砂漠地帯では、何キロも離れた山の頂上までチョウやハチが登ってくるのだそうです。そして、オスが山頂の低木の枝先や岩の上で待っていて、メスが登ってくるとアタックするのです。
普段、平地で分散して生活しているチョウは、やみくもに相手を探しても見つけることは困難です。
そこで集合場所が必要でした。それが、高さという分かりやすい特徴があり、オスにとっては高いところからメスを見つけられる山だったのです。高い山に登ったチョウが、相手を見つけ子孫を残すことができ、今日まで生き残っているとも言えます。
生き残るために高いところへ上る。
人間界では「高みを目指すことが目的なのか」という議論もありますが、チョウは生き残るために高いところへ上るのです。高いところを目指すというのは、わるくないと思います。
〈参考〉
1.吉村仁著『強い者は生き残れない ー環境から考える新しい進化論』(新潮選書,2009)
(吉田)