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なんでも手に入るようになりました。
衣食住は整いモノが溢れたことで、質と安さが追求された必需品が、どこでも買えるようになりました。供給者側の競争は大変ですが、おかげで消費者側は助かっています。雇用や労働環境においても、労働者人口の減少によって、働き手が優位です。スマホとインターネットによって、誰でもどこでも欲しい情報を、求めるがままに得られるようになりました。
私たちは自由になりました。しかし、政治の世界にも、その自由を持ち込んでいいのだろうか、というのが今週のブックレットのテーマの背景です。
私たちは、政治を執り行う議員を選任する、投票権を持っています。世論を通して、既存政党にNOを突きつけることもできます。
ただ、政治は、ビジネスや経済、消費活動とはなんとなく違う気がします。政治は、多様な人々が暮らす社会の根幹をつくるものだから、あまりにも自由を振りかざしてはいけない気がしていたのです。でも、何が違うのか、いまいちイメージできていませんでした。
イギリスでは、1990年代後半から、「政治的マーケティング革命」を経験してきたとされています。マーケティングとはビジネスの世界が起源であり、つまり政治も消費者を向いたような活動が、行われるようになったということです。そして、最近では、市場・有権者を向きすぎた結果として、ポピュリズム(大衆迎合主義)として、その政治姿勢が揶揄されています。ビジネスの世界では奨励されるマーケティングを、政治で用いすぎると、何らかのリスクを抱えることになるようです。どうやら、政治の世界と、経済やビジネスの世界は、なにかが違うようです。
ブックレットでは、イギリスの政治的マーケティング革命の内容や、それが起きた背景を概説しています。その上で、政治と、経済・ビジネスとで何が違うのかを考え、それらを混同したことによって生じている、ポピュリズムについても紹介しています。
最後に、その違いを認識した上で、私たちは、どういう姿勢を持つべきなのかを考えました。政治は、国家にだけではなく、企業や地域など、人が集まり何かを進める場には存在します。私たちの生活と切り離しがたいその世界を知ることで、また少し、いい生き方を見つけるきっかけになるのではないかと考えています。
(吉田)