2019.09.19

個の時代と政治について。

 昨日は、ヨーロッパ政治学を専門とする先生のもとを訪れました。今回のリベルの関心事は、イギリス政治において政治家にも個の時代が来ているらしく、政治の側から個の時代に対する理解を深めたい、ということでした。

 政治家の個の時代とは、かつては政党や、その政党イデオロギーで有権者は支持政党を選び、選挙で投票していました。しかし、現代は、有権者が明確な支持政党を定めなくなってきており、それに伴って、政治家もどの政党に属しているかだけではなく、個人として魅力的か、カリスマ性があるかで選ばれるようになってきているということのようです。
 ちなみに、政党で選ばれなくなった要因の一つは、階級という概念が薄れてきていることだそうです。イギリスでは現在、保守党と労働党が二大政党ですが、主に富裕層は保守党を、労働者階級は労働党を支持していました。しかし、時代を経て、中間層が増大したことによって、富裕層や労働者といった明確な階級意識が薄れていきました。それが、政党を支持するという感覚を薄れさせ、必然的に政治家個人で選ぶという傾向を高めているのだそうです。

 政治家の個性やカリスマ性で選ばれた典型としては、アメリカのトランプ大統領がその一例です。トランプ大統領は何かと批判を受けますが、民主主義社会における選挙で選ばれた、ということには間違いありません。
 しかし、ポピュリズムと揶揄されるのはなぜなのか、個で惹きつける政治家の何がいけないのか、疑問に思っていました。その悪い側面は、私たちが近年、生活や仕事でも対面している個の時代にも共通して言えることなのか、疑問が尽きません。

 まだ咀嚼しきれていませんが、二つ言えることがありそうです。
 一つは、前提として個の時代というのは、インターネットという技術革新や、個人の自由を尊重する民主化の一層の進展によって、個人の価値観が選択の自由、選択の権利をさらに求め始めていることに起因していると考えられます。その価値観の変化が、情報の取得や発信、仕事の選び方や消費の仕方だけではなく、政治の世界にも浸透し、変化を強いているということのようです。
 もう一つ言えること、というか考えるべきテーマは、政治の世界に個の時代を持ち込んでもいいのか、ということです。ビジネスでは差別化が価値の一つの源泉ですが、民主主義社会の政治はみんなにとってベターなものが価値であると思います。また、ビジネスは市場原理で価値が分配されますが、政治は民意のよって委ねられた権威によって分配がなされます。
 ですので、個性ある政治家がビジネス的なマーケティング手法で票を獲得するというあり方や、またそれによって変化はあるが極端ともとれる政策を打ち出す結果になってしまうことが、政治の世界でも良いことなのか考える余地があると思いました。ビジネス的手法や価値観が、政治の世界に適用されて本当に良いのだろうか、という違和感を感じているということです。

 変化の早い時代において、社会の仕組みも価値観もどんどん変わっていきますが、どの世界にどの価値観を適用すべきか、その世界はどういうルールで回っているのか、私たち自身が理解しないと、世界が混乱してしまう結果になるのかもしれません。これからもう少し学んだことを整理して、リベルでシェアしていきたいと思います。よろしくお願いします。

(吉田)

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