参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。1日(火)は4名、2日(水)は10名、5日(土)は7名、6日(日)は9名の参加でした(主催者含む)。
日曜日の「質問「 」について考える時間。」の質問は、
自分の価値はお金にしてどのくらいだと思いますか
田中未知著『質問』(文藝春秋)
でした。
11月1日:読みたい本を気ままに読む読書会
よしださん『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン著/久山葉子訳
夜道を歩いているときにガサガサと音でもしようものなら、止まって警戒しながら何がいるのか確認します。冷静にというよりもちょっとした興奮状態で。あるいは噂話なんてくだらないよね〜と言いながら聞き耳を立ててしまいます。それは集団にとっての重要な情報であると本能に刻み込まれているからです。
人間にはサバンナを生きている頃に備わったさまざまな習性があり、それは高度に文明化した今でもほぼそのままに残っているとされています。もちろん学習によって多少は変えることができますが、瞬間的に立ち上がる感情や反射に抗うことは難しいです。
スマホやSNSなどを開発する開発者はそのような人間の習性を使って私たちの時間を奪おうと攻めてきます(あえて悪く言うと)。しかし開発者は私たちを支配しようとして開発したわけでは必ずしもないようです。Facebookの「いいね」ボタンや、iPhoneの開発に携わった人たちは「とんでもないものを開発してしまった」と後悔しているといいます(P80あたり)。
本のテーマ(スマホの悪影響)から離れて工学倫理みたいな話になりそうですが、そこからも離れて「洗脳」みたいな話にもなります。読書会でもそのワードが出ました。使う方はスマホに洗脳されているのかもしれませんが、開発者も目の前の目標に洗脳されているのかもしれません。でも洗脳されているかどうかなんて渦中にいるときはわかりません。「ひとまず『スマホ脳』でも読んで洗脳を解除するか」と思っても『スマホ脳』の広告に洗脳されているだけなのかもしれません。でもひとまず「洗脳されているかもしれない」と思っておけば、何だかマズイ状態になったときに抜け出すという選択肢も浮かびそうなので、洗脳されているかもしれないと思いながら洗脳されておこうと思いました。
11月2日:読みたい本を気ままに読む読書会
yuさん『エレホン』
19世紀イギリスの作家サミュエル・バトラーによる小説です。
架空のエレホン人が私たちの文化とは違って例えば病気は罪で牢屋に閉じ込められたり。時計は所持してはいけないものだったり。
違和感があるのは、知らず知らずのうちに、刷り込まれた文化や習慣、思い込みが私にあるからだろうなあと思いながら読んでいました。随分前に読んだ芥川龍之介の「河童」を思い出しました。
11月5日:読みたい本を気ままに読む読書会
yuさん『兎の眼』
26の連作短編の中の16-18を読みました。小学生と新任教師を取り巻く話なのですが、登場人物の特徴もわかってきて応援したくなるような内容です。第2次世界大戦後の時代の話です。何に惹かれているのか、なぜ泣けてくるのかを考えてみたいと思います。
また意識や記憶についての話もありました。実家の隣から聞こえてきたピアノの音を思い出しました。「クオーレ」デ・アミーチス を少しずつ読んでいるという他の参加者さんもいらっしゃりどんな本かなと思ったら「母を訪ねて3千里」の原作だと分かり興味を持ちました。
Takashiさん『人形の家』イプセン 新潮文庫
「薄い」「字が大きい」「古典」の三条件が揃う本は、本屋で何となく買ってしまうことが多い。本書もそうだ。
舞台は1800年代、妻はお金持ちの夫から離れる決意をする。女性解放思想として語られる作品だが難しいことはさておき、かなり面白かった。登場人物も少なく、短い作品ながら振りが効いていて、ラスト15頁の盛り上がりは素晴らしい。まるで人形のように愛されてきた妻のセリフが心に響く。「わたしは幸福ではありませんでした。ただ面白かっただけです。」
プライベートが面白いことと人間の幸福はベクトルが違うのだ。実生活を振り返ると足元から価値観が崩れかねないくらいの怖い話かもしれない。
11月6日:読みたい本を気ままに読む読書会
Takashiさん『器楽的幻想』(ちくま日本文学028 梶井基次郎より)
ピアノ演奏会に行って帰ってきたという6ページの短編だ。そこに描かれるのは梶井基次郎の主観的経験であり、張りつめた雰囲気と孤独感と世界観が大きな振れ幅で行き来する。
一文一文目まぐるしく変わる展開にもかかわらず文章に淀みが無い。「幻想」というタイトルにふさわしい内容なのだが構成が分かりやすい。
文章の玄人に、この凄さの解説をしてもらいたいものだ。
過去の読書感想はこちらに載せています。
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