2020.07.18

〈あとがき〉『体・皮膚・神経 〜私たちは全身で生きている〜』

 さきほど、『体・皮膚・神経 〜私たちは全身で生きている〜』というブックレットをリベルに置いておきました。ここでは、そのブックレットの「あとがき」を書くことによって、内容の紹介に代えさせていただきます。

 外出自粛になってから何週間か経った頃、ランニングや散歩をしている人を外に見かけることが多くなりました。それを見て、何かを感じたくて外に出て走ったり歩いたりしているのではないかなと思いました。
 もちろん、体の健康のためにやっている側面もあるのだと思います。でも、私自身も内側に未充足感を感じていたことも相まって、何か別の、感覚器の充足みたいなものを求めているのではないかと思ったのです。

 このブックレットを作る少し前に、鳥肌は怖いと感じてから立つのではなく、鳥肌が立ってから怖いと感じるのだという考え方が、最近では通説であることを知りました。つまり、目で見たり耳で聞いたりして怖いことを頭で判断してから鳥肌が立つのではないということです。何らかの情報を肌で察知して鳥肌が立ち、それを脳が認識するということだと思います。

 この事実を知ったり、外出自粛で日々未充足を感じたりする中で、私たちは意識できていないだけで、いろいろなところを使って生きているのだろうなと思うようになりました。
 ただもう一方で、この生活の方がいい、便利で満足というような声も聞こえてきました。たしかに、移動しなくてもよくて時間も節約できるし、便利です。でも、気づかないところできっと失ってしまっているものもあるはずです。そこで、普段意識を向けることは少ないけど実は働いている器官や部位について学び、ブックレットにまとめてみようと思いました。

 体や心を介して学習しているということは、日々の生活の充実が大切であると思いました。もちろん学習するために生きているわけではありませんが、生活から学び、学びを生活に生かしてさらに充実していくという循環が起きればいいなということです。

 皮膚(体表)が耳では聞き取れない音域を聞いているのであれば、やはりそこを活かしたいと思いました。耳だけでも生活には困らないのかもしれませんが、その音域の音は、体・心・脳を震わせるのだと思います。使わないともったいないです。

 自律神経系の一つである、腹側迷走神経ふくそくめいそうしんけいは、反射的に相手と交流するか否かのスイッチを切り替えます。自律神経ですので、私たちの意思でコントロールすることはできません。コミュニケーションする際の環境を整えたり、接する時の表情や声色・口調を気にかけたりすることで、相手と親密な関係を築くことができます。いろいろと気に掛けることが多くて大変になりそうですが、「仲良くなりたい」という気持ちを持っていることが一番大事なのではないかと思います。その気持ちが表情や声に表れて、環境を整えることにもつながるはずです。

 今回は、理路整然と示すことは難しいけど普段何気なくは感じていることを、科学的な見地や理論をもとに紹介してみました。それにもとづいて、私たちはどのように生きているのかを考えてみました。私たちは昔から、そしてこれからも、全身で生きているのだと思います。このブックレットが、これからの生活様式を考える際の参考に少しでもなれればうれしく思います。

 ブックレットの作成にあたっては、桜美林大学リベラルアーツ学群教授の山口創先生にご協力いただきました。また、ブックレットの要所では、参考文献に挙げた著書や論文などからも学ばせていただきました。ありがとうございました。

『体・皮膚・神経 〜私たちは全身で生きている〜』

(吉田)

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