2020.07.03

時間はたっぷりあった方がいい? -前編-

 時間はたっぷりあった方がいいのでしょうか?
 直感的にはたっぷりあった方がいいと思います。しばらく乗れていなかったロードバイクに乗ろうとか、最近作業的になりつつある料理に少し手間をかけてみようとか、積読になっている本を読もうとか。やりたいけどやれていないことは多くあります。

 「でも時間は有限じゃないか。」と思われるかもしれません。
 でも、実はそうとも言い切れません。見方によっては、ものすごく増えているとも捉えられるのです。寿命が延びている、というのともまた少し違う話です。

 このようなことを考えるために、まずは変温動物から恒温動物への進化によって、恒温動物は時間を獲得したという話から入らせてください。

 変温動物と恒温動物の違いは、外面的には体温が一定であるかどうかにあります。
 変温動物は外気温に合わせて体温が変わってしまいますが、恒温動物は外気温に関わらず体温を一定に保てる動物です。私たち人間は、夏でも冬でも体温をほぼ一定の36度程度に維持しています。他方で、爬虫類や魚類、昆虫などは体温が外気温に応じて変化します。

 体温が一定であることの利点は、いつでも一定の速さで動けることです。
 私たちの体は様々な化学反応によって動いていますが、化学反応は温度が高いと活発になり、温度が低いと非活発になります。つまり、体温が一定であることで、冬になったからとか、朝や夜に気温が下がったからとかいう理由で動きが鈍くなることは起こりにくいのです。

 これは時間を獲得したことを意味するとも考えることができます。なぜなら、変温動物では非活発にならざるをえない冬や朝・夜の時間も、活発に活動できるからです。
 爬虫類や昆虫がのろのろと動いたり眠ったりしている時間に、いつもと変わらぬ最高のスピード感で動くことができます。変温動物から恒温動物に進化したことで、1時間・1日・1年の間にできることが増えたのです。同じ時間でもできることが増えたということは、進化によって時間を獲得したと捉えることができるのです。

 しかし、その代償として恒温動物は、やらなければいけないことが増えました。それは餌を大量に獲得しなければいけないということです。
 体温が一定であるということは、常に多量のエネルギーを消費し続けているということを意味します。寝ている間も体温が大きく下がることはないため、その間もエネルギーを消費しているのです。同じサイズでも恒温動物は、変温動物の約30倍のエネルギーを消費すると言います[1,P37]。これは恒温動物が変温動物に比べて総じて体温が高いことにも起因しますが、同じ体温で比較した場合でも、約5倍恒温動物の方がエネルギー消費量が多いのです。

 進化によって時間を獲得した恒温動物は、その分食料を獲得するために動き回らなければいけなくなりました。決して暇になったわけではないのです。つまり、時間を生み出す代償として仕事が増えたとも言えます。
 明日の後編では、この視点を持った上で、私たち人間の時間について考えてみたいと思います。


〈参考〉
1.本川達雄著『ゾウの時間 ネズミの時間』(中公新書,1992)
2.画像元のフリー写真提供者:https://www.photo-ac.com/profile/1715764

(吉田)

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