2024.03.23

承認の裏にあるもの。

承認というのは強く求めるものであるからこそ、それにコントロールされるということもあるのかもしれません。欲求にはさまざまな側面があるのだと思いました。取り扱い・取り扱われ注意。

 すこし前に読んでいた『労働の思想史 哲学者は働くことをどう考えてきたのか』で、気になっていたキーワードがあるのでここで考えてみたいと思います。この本では最後の方で労働をさまざまな種類に分類しているのですが、そのなかに「承認労働」というのがありました(P293)。
 承認労働とは、承認されたいという欲求によって駆り立てられた労働のことです。本のなかではとりわけ負の側面が強調されていました。例えば、店長という肩書きを与えられることで長時間労働に従事させられるというようなことです。店長とはその店のトップですから、任命された人は認められたと感じてうれしいかもしれません。そしてその期待に応えるべくより頑張るかもしれません。しかしその結果長時間労働が余儀なくされるとき、もしかしたらそれは会社側が承認の欲求を利用して過度な労働をさせているのかもしれないということです。

 興味深いと思ったのは「承認」と「抑圧」がセットで語られていたことです。承認とはその人を認めることであり、表現として適切かどうか分かりませんが、認めれられたAさんの方が認めたBさんよりその点において優位な立場になります。A>Bという関係です。しかし承認と抑圧を結びつけて考えると、認められたAさんが認めたBさんに抑圧されていることを意味するので、Bさんの方が優位な立場ということになります。つまりA<Bということです。承認が、それとは逆のイメージがある抑圧と結びつくとはどういうことなのでしょうか。
 それはつまり、承認することでその人をコントロールしようという意図が働いている場合があるということです。「あなたがやっていることは素晴らしい」と言うことで、言われた人は頑張ろうとする。人間にとって承認の欲求は普遍的で強いものだと思われるので、人を統率するときに有効に働くものとして用いられてきたのかもしれません。本のなかでは、かつてナチスが「善き母・主婦」というイメージを喧伝していたとも書かれていました。そう言われれば悪い気はしないのかもしれませんが、一方でそれ以外の選択肢をとりにくくなります。
 その一方で、承認されることでモチベーションが上がるのであればいいのではないかという見方もできると思います。ここらへんは感じ方もあると思います。仮にコントロールされていても構わないという人もいるでしょうし、反対にそうやって糸を引かれている感じは嫌だという人もいるでしょう。そんななかでも、おそらく承認によるコントロールの弊害は、根本的な問題が解決されずに残り続けるところにあるように思いました。
 たとえば、長時間労働に違和感を抱いていても承認されることでそれを続けられたとします。しかし、長時間労働は改善されないのでいずれどこかで体やこころに不調が生じるはずです。そういう違和感を覆い隠してしまうのが「褒める」という行為の負の側面なのかもしれないと思いました。

 承認や褒めるとは何なのでしょうか。
 よく「褒めて人を伸ばす」と言われたりします。その一方で特に子供の場合、褒められることだけを求めるようにさせてはいけないなどとも言われます。これはたぶん、褒められるためという動機づけが強すぎると自分の好きなことや嫌なことが分からないまま成長することになってしまうからだと思っています。同時に、「親が褒めるのは自分が望むように子供を動かしたいからだ」とも言われたりします。そこまでそれを意識しているとも思えませんが、たしかに褒めるということは何かしらの価値基準にもとづくプラスな言動に対して褒めているはずです。だからそう言われればそうなんだけど、褒めることなしに接することも無味乾燥としているというか、なにか違う気もする。あるいは、ある程度の社会性がないと生きていく上で困るから褒める・叱るということをするというのもあるはずです。
 褒めるとか承認するというのは、きっと人間が生きていく上での必要性があるはずです。そうかもしれませんが一方で自己防衛という観点からいうと、知らないうちに抑圧やコントロールにさらされているかもしれないという意識は必要なようにも思います。たとえば、スマホの決済アプリでは「あと少しでゴールド会員」とか、Kindleでは「連続読書記録を更新しました!」などと出てきます。僕の場合はKindleでは漫画ばかり読んでいるので、そんなに(僕の中では勉強感がある)読書という感じでもないけどなぁという感じでいます。いや褒めすぎでしょという感覚はきっと大事で、そんな他者がいた場合には注意した方がいいのかもしれません。
 そして、褒める方に回るときは、変にコントロールすることにつながっていないかという確認も必要そうです。その人の自由を尊重したいのであれば、褒める・承認するということに多少慎重になった方がいいということなのだろうと思いました。

(よしだ)

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