人は言葉を覚えたり適切に使ったりする中で、物事の認識を深めていくようです。
目にしたものをそのまま記憶するわけでも、見た瞬間にそれが何であるのか分かるわけでもありません。
それまで触れてきたものとの違いを、ここは同じだけどここは違う、などと自分なりに探りながら、カテゴライズし、「分かった」という瞬間を迎えます。
そして、分かったものは言葉として、自分の中に溜まっていくようです。
言葉として分類されていくものは、犬や猫などの見た目に依存するものから、軽い・重いなどの目には見えない性質に依存するもの、はたまた「“カフェ”とは、ただ飲食をするにあらず、友人とコミュニケーションしたり自分一人で思索にふけったりする、もう一つの家である」(仮)などという概念に至るまで、様々にあります。
一見同じものに見えても、よくみると違うのではないかと深めていくことで言葉が生まれ、その言葉の本当の意味が分かりだし、そうやって獲得した言葉によってそのものに対する認識を深めていく。
物事の認識と言葉とは、相互に行き交うものであると言えるのだと感じました。
大人になるとコミュニケーションに困ることはあまりないかもしれませんが、日常的な言葉の使い方に気を遣うことで、物事に対する認識や理解を深められるのではないかと思います。
そして深まった認識は、また新たな発見や世界の見え方につながっていくのだと思います。
日頃の言葉の使い方はすごく大事なのだと思わせてくれる本でした。
〈今回の本〉
子ども(赤ちゃん)が言語を習得していく過程を、さまざまな実験結果とともに説明している本です。そしてそれを通して、人間が言語を得たことの意味や、言葉が生活に及ぼしている影響を知ることができます。
・今井むつみ著『ことばの発達の謎を解く』(ちくまプリマー新書)
(吉田)