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実力が認められて、とある組織の長に抜擢されたものの、周囲はお手並み拝見という感じです。また周囲の実力者も、それぞれに自分の派閥なりチームなりを持っており、必ずしも自分に対して献身的である必要性はありません。さらには、その組織をまとめげるルールやシステムもあまり整っていません。
組織の外では、取引先が別の組織と争っており、劣勢になれば自分たちにも影響します。外にも目を光らせ、ときには救済もしなければいけません。
また、内部が不安定な情況ですから、その一部の派閥やチームが、別の組織に合流する可能性も捨てきれません。彼らを組織の内に縛り付けておくような明確な線引や法律のようなものもないのです。
これが、五世紀の日本列島を生きた「倭の五王」が置かれていた情況でした。もっとも、治める対象は国であり、その地位は「王」でしたが。
「倭の五王」とは、中国の歴史書『宋書』倭国伝に記された、中国に遣使をしたヤマト政権の5人の王のことを言います。内外に混乱を抱える倭国の王は、中国外交という手段をとったのです。
中国外交で得たかったものは、モノでも情報でもなく、「権威」でした。現代よりも渡航リスクもコストも大きかった時代、物質的利得につながりにくい権威を求めていたということは、それが統治において重要であったということです。
今回は、日本列島における国家統治前夜の五世紀、日本の前身とも言える「倭国」の、5人の王の奔走を追っています。
「外交によって大国の権威を纏う」ということには、他力本願に感じられネガティブな印象を持つかもしれません。しかし、混乱の時、手段を選んでいる余裕などないものなのでしょう。
混乱のなかにいる方や、混乱に乗じて(?)何かを仕掛けようと思っている方の、それを突破する布石を考えるきっかけになれるかもしれないと思いながら、今回のブックレットを作りました。あるいは、外交や外との関係性作りということの意味を、改めて考える機会にもなればうれしく思います。よろしくお願いします。
(吉田)