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感情が先行してしまい、正しく考えられていないと感じることがあります。自分自身に対しても、周りに対してもそのように感じることは少なくないはずです。
感情的になることは、場面によっては好ましくないと受け取られることがあります。確かに複雑な問題に対峙する時などは、冷静であることの方が重要である場面もあります。でも、そんな場面でも感情が働いてしまうのが人間というものです。
そして、そのような人間一人一人によって構成されているのが社会です。社会とはそれ自体が一つの個体として語られる傾向にあるように思いますが、社会という集合体になったからといって何か別のものになるわけではないと考えられます。そこには人間の本性が働いていると考える方が妥当です。
私たちは様々な社会に生きています。地域や会社、学校、趣味の友達、そして最近ではネット上にもいくつもの社会が生まれています。社会に生き、そして社会から生まれる問題に悩まされているのも実情です。
私たちにとって社会とは何で、そもそもなぜ社会は存在しているのでしょうか。社会を構成する人間とは、どのような社会性を有しているのでしょうか。人間社会を理解することは、私たちの抱える問題の解決につながり、よりよい生き方への示唆をくれるはずです。
今回のブックレットは、功利主義がなぜ人間社会に馴染まないと考えられるのかを切り口として、人間社会を理解する足がかりとなればと思い作成しました。
功利主義とは、社会全体の幸福や富の総量を最大化することに原則を置く道徳規範です。一見すると私たちにとって望ましい考え方に思えるのですが、人間の本性を考慮すると、人間社会に馴染まないのではないかと考えられているのです。
第一章では、人間と同じく社会的な生き物であるとされる昆虫のハチと比較することで、人間の社会性について理解を深めています。
第二章では、社会はそもそもなぜ存在するのか、社会を動かしているシステムは何なのかに迫っています。
第三章では、功利主義がなぜ人間社会に馴染まないと考えられるのか、その理由について掘り下げています。
第四章では、まとめとして、功利主義との向き合い方などについて考えてみています。
今回のブックレットは、東京大学大学院人文社会系研究科教授の亀田達也先生にご協力をいただき作成しています。一章ごとに何らかの示唆を得られるよう意識して作成していますので、お時間あるときにどうぞ開いてみてください。
『感情と功利の不調和 〜人間社会を理解する足がかりとして〜』
第一章 スーパー個体のハチ社会、個の集合の人間社会
第二章 社会を成り立たせている「感情」
第三章 功利主義の有効性と問題性
第四章 調和を目指して
コラム 日本型雇用慣行は感情的か?
(吉田)