先日、「いいライフスタイルについて考える」読書会の四回目を行いました。ライフスタイルという広めのテーマなので、切り口はいろいろ持ち寄られますが、時間の使い方は一つの関心事なのではないかと感じています。時間の使い方と言えば読書会でも何度か登場した『モモ』が参考図書として挙げられるのですが、この一冊だけを読んでも「では、どうすればいいの」ということに対して答えを見出しにくいのではないかと感じています。問題提起としては素晴らしい本なのですが、捉え方によっては、今の時間の使い方を後悔して、終わるということにもなりかねません。
『モモ』は、大枠としては資本主義社会への批判であると解釈しています。時間の使い方が経済合理的・効率的になっていき、時間に追われてみんなイライラしたり、人と人との交友関係も希薄でギスギスしたものになっていったりする様が描かれています。他にも子どものおもちゃに関しても、子どもが独創的に遊び方を発想していくのではなく、着せ替える洋服が用意されていたり話す言葉があらかじめインプットされていたりする人形が作られるようになるなど、遊び方があらかじめ定められていく様も描かれています。これは、売る側からすると機能などを次々とアップデートすることで売れやすくなりますが、一方で子どもの独創性やおもしろがる力が損なわれるというような批判が暗に込められています。さらには大人が忙しくなったことで、あるいは大人を働かせるために、子どもを預ける保育園や幼稚園のような施設もできたことが描かれています。まさに現代社会を連想させるようなことが描かれており、その前の時代との対比の中で、見直すべきポイントのようなものが示されていると言えるのでしょう。
しかし、おもちゃのあり方や消費スタイルはまだしも、時間の使い方については個人のレベルで前時代に戻すことはなかなか難しいように感じます。今や世界中がつながって大規模な分業が行われている状態であると言えるので、時間を決めて仕事を行うことは必要不可欠です。また、競争にもさらされているので、経済合理性を追求しなければ基本的には自分が食いっぱぐれることになりかねません。そして、そもそも仮に世界が資本主義社会以前の、ゆったりとした時間の社会に戻ることが、本当にいいことなのかは疑問です。資本主義的な合理的な社会に移行したことで起きた良い変化も少なくないはずです。つまり、『モモ』は資本主義社会化によって失ったものは見せてくれても、その反対の得たものは見せてくれていないのです。このままでは、ただ前の時代に戻った方がいいのではないか、という方向性に向かってしまいそうになります。
最近は、ポスト・資本主義というテーマで語られる書籍を比較的多く見かけます(あるいは個人的にも、そのようなテーマの本に目がいきがちなのかもしれませんが)。そのような本では、資本主義がもたらした害悪を前提に語られることが多いように思います。ただ、資本主義によって形成された仕組みや慣習、文化などの中には、変えなくてもいいもの、変えてはいけないものもあるはずです。何を残し、何を変えるべきなのかを見出すためにも、「資本主義がもたらしてくれたもの」というような内容の本やその他コンテンツに、一度目を向けてみたいと思い始めました。時間の使い方からは少し逸れてしまいますが、資本主義に対する理解へ寄り道をしながら、時間の使い方についても考えを巡らせてみてはどうかと思っています。
実は関連するような本やコンテンツをまだ見つけられていません。もし何かご存知の方がおりましたら、以下のフォームより教えていただけないでしょうか。よろしくお願いします。
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「資本主義がもたらしてくれたもの」というようなテーマの本やその他コンテンツをご存知でしたら教えていただけますでしょうか。
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(吉田)