私たちは脳の報酬回路に操られていて、さらには脳の報酬回路を操る人に操られているとしたら、いい気持ちはしないのではないでしょうか。今日は、そんなことを想起させる、ちょっと怖い脳の報酬回路について触れてみたいと思います。
図にサルの協力のもと行った実験結果を示します[1,kindle2203]。
実験の内容は、以下の3つのパターンで脳のドーパミンニューロンの活性度合いを計るというものです。ドーパミンニューロンが活性であるとは、脳がそしてサルが快楽を感じていることを意味します。
①緑の光が点灯すると2秒後に報酬であるシロップが出てくる。サルはそのことを既に学習して知っている。
②赤の光が点灯してもシロップは出てこない。サルはそのことを既に学習して知っている。
③青の光が点灯しても、シロップが出てくるか出てこないかは分からない。(図はシロップが出た時の反応)
結果は、このようになりました。
①では、光が点灯した時だけ、快楽を感じます。本当の報酬であるシロップが出てきた時には快楽は感じないのです。
②では、何も起こりません。赤の光は自分に何もくれないことを既に知っているからです。
注目すべきは③の結果です。まず青の光が点灯した時に快楽を感じますが、これは①と同じ反応です。そして、点灯直後は一度快楽は落ち着きますが、待ち時間に徐々に快楽度合いは上がっていき、シロップをもらえた時にピークに達するのです。
これらの結果から次のようなことが言えます。
脳は、不確実は結果を待つ間にとてもドキドキする。でも、快楽がピークに達するのは報酬(シロップ)が出てきた時だから、そこまではぐっとこらえて待つ可能性が高いということです。
このようなドキドキ感の演出は、ギャンブルや釣りタイトルの記事などに見られるのではないでしょうか。
人間は、サルなどと比べて理性で欲求を抑止することができると言われています。何かに過度にはまりそうになった時、このメカニズムを浮かべてみると少しだけ抑止の役に立つのかもしれません。
〈参考〉
1.デイヴィッド・J・リンデン著/岩坂彰訳『快感回路 ーなぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか』(河出書房新社,2015)
(吉田)