2021.11.07

テーマ「出合いたいもの」読書会の読書感想

 外に出られるようになってきたので、テーマを「出合いたいもの」として読書会を開いてみています。11月に2,3回開いてみようと思っています。
 ここでは参加者に任意でいただいた読書感想を載せていきます。

〈読書会について〉
 事前読書のいらない、その場で読んで感想をシェアするスタイルの読書会を開いています。事前申込をあまり求めない、出入り自由な雰囲気です。スタンスや日程などについてはこちらをご覧ください。


2021年11月20日

yuさん『燃えよ剣』
 鳥羽伏見の戦いあたりで、急に作者がその跡地を訪ねるところを読みました。信じているもの、信念のようなものを持っていたとして、それが永遠でないことを薄々感じることはどんな心地かなと思いながら読んでいました。出会いたいものは真実かもしれなかったもの?

 他の方は、深夜特急でインドからロンドンまでバスで行ってみようと思い立って旅行した話や原田マハさんの食べてみたいものなど。旅行や食べ物ってワクワクするなと思いました。

だいぽんさん『ほんのよもやま話 〜作家対談集〜』
 作家同士の対談、オススメ本など興味が尽きない内容がぎっしりと詰まった本でした。

Takashiさん『ブッダのことば』中村元(訳)
 自分とか自己についてブッダはどう言っているのか?

 解説書ではブッダは自分自身というものは有ると言ったり無いと言ったりしているらしい。原典に近いものではそれをどう説明しているのだろうか。私はそれを知りたい。

 しかし今日の読書時間ではそこまで辿り着けなかった。いやひょっとして何度熟読しても見つからないのかもしれない。

 速読の世の中だが私はそこに乗れないし、かといって遅読にも程があるという気もする。まあ自分が面白いならそれでいいか。でも自分って何だ?

つやまさん『心はどこへ消えた?』東畑 開人
 ここ20年のグローバル資本主義の台頭や、新型コロナのパンデミックという大きすぎる物語の前に、個人的でプライベートな小さすぎる物語はかき消されてしまい、それを拠り所とする心もどこかに失われてしまった。しかし心は何度でも再発見されなければならず、そのためには小さなエピソードが語られ続けなければならないーー
 エッセイでは日常の何気ない出来事に対する洞察の切り込み方が、さすが心理士という感じで面白いです。今回読んだのは、著者と心理士を目指す仲間が、揃って学生時代に野球部の補欠だったという発見から、補欠はいつも世界を外から見ている存在だったので、同じように恐れながらも世界と交わりたいと願う補欠的な魂を癒す心理士という仕事を選んだのであり、補欠と心理士には魂のつながりがあるという仮説を立てる話で、本当かどうかわかりませんが妙に納得してしまいました。補欠的な魂、良いじゃないかと思いました。

2021年11月7日

yuさん『獄中シェイクスピア劇団』
 テーマが「出会いたいもの」
 何かなと考え、「ちょっとした希望」だと思いました。

 獄中の囚人に演劇を教える話のようですが、読んだところは、2人のビジネスパートナーがいて客からの苦情処理や理事会への参加など雑用をひき受けてくれているように見せかけていたトニーに実は裏切られていて、職を失うところでした。読んだとこに希望はなく思い通りにはいかないものだと思いました。実と形式があり、雑用は形式だという意見になるほどと思いました。

 他の方の4大文明が出てくる舞台がイラクのフタコブラクダの話が、ワクワクするそうでよんでみたくなりました。

Takashiさん『罪と罰』『死に至る病』(2冊)
 ドストエフスキーは、どうしようもない人間がどういう風にどうしようもないかということや、100%どうしようもない人間はいないことを書いている。人間はとても複雑だ。

 キェルケゴールの「死に至る病」は、その人間を信仰という立場から解説している。どちらも非常に繊細な人間観察の書だ。

 「罪と罰」の登場人物が「死に至る病」でどの様に説明されているのかを探す作業は、宝探しに似ている。いつか一連の読書感想文として書き出してみたい。

 私が小説や哲学書を読みたいと思ってしまうのは、自分の中にどうしようもない部分があるからなんだろうな、多分。

mtさん『ヒトコブラクダ層ぜっと』万城目学著
 「出合いたいもの」とはなんだろうと考え、「ワクワクするもの」ではどうだろうと思い、『ヒトコブラクダ層ぜっと』を取り上げることにしました。上下巻あるうちの上巻を読み終えたところです。

 著者の作品には、誰もが知っていそうな固有名詞がたくさん出てきます。いわゆる「つかみはOK」です。それらの歴史的な背景などがよく調べられているなと感じる蘊蓄を披露しつつ、これがブリコラージュかと思うような見事な構成によって描かれる物語は、日常と非日常を織りなすファンタジーとして、随所に見え隠れする小ネタと確かな結末により、万城目ワールドと呼ばれています。そんな世界を描く著者を、内心、天才ではないかと思っています。

 舞台は日本からイラクへと移ります。メソポタミア文明は、今は砂漠となってしまったイラク辺りとのこと。そのイラクでのとある場面で、奇跡のような美しい風景が描写されながらも、「寿司桶」という喩えが出てきます。なんてことをと思い画像検索してみたところ、たしかに寿司桶のようだなと思いました。

 四大文明のメタファかなと思われる表現や、ギリシャやアンデスなどの文明も入れ込もうとしているのではと深読みしたくなる場面もあり、ワクワクは下巻につづきます。

よしだ『モード後の世界』栗野宏文著
 ファッションブランド・ユナイテッドアローズの創立メンバーである栗野宏文氏の本です。ファッションの世界の人は、時代の読み方と、そこにどういう表現物を合わせていくかという思考がおもしろいと思っています。

 2019年はグレー色のものが流行ると考え、実際によく売れたそうです。背景としたのは、たとえばトランプ大統領などの極端な言動に世は混乱させられており、まともな大人であれば、冷静に知的になろうという気持ちが湧くのではないかということだったそうです。グレーは黒でも白でもない中庸な色。まわりからすこし距離をとって、染まらずに考えてみようという気持ちを表す色のような気がしてきます。

 まだ前半しか読んでいませんが、これからの世界のことも書かれていそうです。それにどんな実利や実益があるのかはみえにくいのですが、意味づけというのは、なんだかとても大切なことのように思えてきました。

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