2021.09.24

読書会の読書感想(9/21-26)

 参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。9月21日(火)は4名、22日(水)は6名、25日(土)は6名、26日(日)は11名の参加でした(主催者含む)。
 26日の「質問「   」について考える時間。」の質問は、

空に手で触ることができますか

でした(田中未知著『質問』(文藝春秋)より)。

9月21日:読みたい本を気ままに読む読書会

marikoさん『ダイエット』大島弓子
 他の方が紹介されたよしもとばななのどんぐり姉妹の話しが好きでした。人の役に立つってそんなに大それたことでも、力が入ったことでもないんだなと思いました。いつも居心地のいい読書会の場を提供してくださってありがとうございます。

けいこさん『どんぐり姉妹』
 見知らぬひとからの、悩み相談などのメールへ返信するサイトを運営している姉妹の話。
 相談に対して具体的な回答を提示するのではなく、当たり障りのない(とはいえ優しい)言葉にとどめるところが良くて、そういうやりとりを求めているひとはきっと少なくないだろうと思う。もし本当にそういうサイトがあったら、わたしもメールを送ってしまうかもしれない。
 ばななさんは、読んだひとの悩みをちょっと軽くするような、人生に寄り添ってくれるような、知らないうちに救われているような小説を書くひとだと思う。
 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』のホールデンが、「僕にとって良い本というのは、読み終わったとき作者に電話をかけたくなるような本だ」みたいなことを言うけれど、わたしにとってはばななさんがそのひとりだ。

よしだ『社会心理学講義』小坂井敏晶
 読み始めたばかりで、まずは「社会心理学」について書かれていました。
 重視しなければいけない前提は、人の心理は社会環境の影響を受けるし、一方で社会も人の心理によって影響を受けるということ、だそうです。その相互作用あるいは循環関係を研究するのが社会心理学であるとのこと。
 人の心理は個人の中で確固たるものとして存在できうるものではない。社会環境によっては、差別や殺人を受け入れてしまうこともある。もう一方で、どこかの権力者が社会を誘導するにしても、人の心理から全く外れた方向に持っていこうとしても、そうはいかない。人の心理に反しない範囲でしか導くことはできない。そんな風に解釈しました。
 いろいろなことを考えてしまいますが、人は社会から独立した心を持てるわけではないけど、全く無抵抗に服従せざるをえないわけでもない。個人でもささやかながら自分なりの社会観をもち助力することはできるのかもしれないです。

 最近は漫画『タッチ』で、浅倉南が上杉達也に将来のことを話すシーンで「どんなことにでも自分の意見を言える大人になる」みたいなことを言っていたのをなぜかよく思い出します。メディア関係の仕事にでも就いたのかな〜。

9月22日:読みたい本を気ままに読む読書会

yuさん『理不尽な進化』
 数多の生物がどのようにしてこの世から退場していったかという本の序章を少し読んだ。
 他の人は「ソロモンの指輪」や「ドーパミン」の本、「華氏451」、「コンビニ人間」。
 なんとなく理科系の話になった。アクアリウムはなるべく自然に近い方がいいらしい。雑草を抜かない農法を連想した。

うさじさん『ソロモンの指環』

今日もありがとうございました!

最近メダカを飼いたいなと思っていたのですが、この本を読んで参考にできたらと思います?

アクアリウムは一つの世界である。
なぜならそこでは―動物と植物が一つの生物学的な平衡のもとで生活しているからである。
アクアリウムの魅力は、この小さな世界が自活しているところにあるのである。
(本の引用より)


超訳 アクアリウムの作り方→
① ガラス鉢の底に砂をしき、水草を2ー3本さしましょう。
② 水道水を入れて、窓際で数日置きましょう。水が澄んできたらOK
③ 水網をつくりましょう(針金で丸い輪っかを作り、靴下やカーテンなどのぼろきれで袋を作る)簡単なものでOK
④ 近所の池に行って、網ですくいましょう。
 (お店で買いならされた上品な生物よりも、自然な環境で育ったものの方が、完全な生命共同体だからです。)
⑤ 魚に餌をやったりときどきガラスをふく以外は、特に大きな世話は必要ありません。


YouTube動画で発見したのですが、こちらの動画はまさに、動物と植物の平衡が保たれた状態を言えるのではないでしょうか。↓


つやまさん『もっと! : 愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』

 ドーパミンは、他者との関わり方や、政治的なスタンス、新しい体験を求める好奇心、芸術におけるインスピレーションなど、人間のあらゆる精神活動に影響しているそうです。これまで人類の発展に貢献してきた一方で、今後は滅亡を招く要因にもなりかねないことが指摘されています。今回は「依存症」の部分を読みました。
・「欲しい」と「好き」は、使われる脳の領域と化学物質が異なっているため、必ずしも一致しない。(ex.空腹でないのに目の前にドーナツを置かれると食べたくなる)
・「欲しい」を司るドーパミン欲求回路は、進化の過程で生存や生殖に有利になるように強化されてきたため、意思の力で抗うのが難しい。
・アルコールや薬物など自然界にない物質が、ドーパミン欲求回路を乗っ取ってしまうのが依存症の原理である。
・依存症になると「好き」という快楽を得るためではなく、「欲しい」という欲求に抗えないがために摂取を繰り返すようになる。
・オンラインゲームは、アイテムの出現確率やランダム性が依存性を高めるようにデザインされており、依存者の増加が社会問題になっている。
・幸福には「欲しい」と「好き」の調和が大切で、自然に触れたり、絵を描くなどの創造的な活動が効果的である。

9月25日:読みたい本を気ままに読む読書会

yuさん『波』
 45年ぶりにでた森山恵さん訳で読みました。私にとっては超難解な本でした。一度は読んでいて再読です。小説と小説の間に挟まれる自然描写が繊細で細かいです。

 他の方は「紫のスカートの女」「村上さんのところ」「群集心理」などを読んでました。村上さんの普通の回答がいいという話で、わかりやすく回答できるってのはやはりすごいことだなと思いました。難しい事象を簡単な言葉にすること。

よしだ『社会心理学講義』小坂井敏晶著
 序盤の、社会心理学を批判的にみるところを読みました。
 今回は科学のあり方について。社会心理学が実験に依りすぎて、理論構築を疎かにしているのではないかという批判でした。
 おもしろかったのは、実験とは理論の正しさを確かめるためにあらず、というところでした。理論と異なる実験結果が出るからこそ、新たな視点の発見や理論の構築につながるということです。実験によって簡単に確かめられる理論や仮説など矮小なものである、みたいなことも書かれていて、過激だけど刺激的でした。
 確かめる実験=正解がある実験よりも、発見や視点を見つけるための実験の方が、なんだか楽しそうだなと思いました。

9月26日:テーマのある読書会「価値観の色々」

yuさん『理不尽な進化』
 進化論というとダーウインを思い浮かべるが、私たちが普段使用している進化論は実はスペンサー論だというところを読みました。お守りとしての進化論と学術的な進化論の繋がりが複雑だなあと思いました。
 皆で子供の頃の読書体験について話したりしました。小学生の頃を思い出したり。

Rieさん『インサイト』
 自己認識の重要性を再認識できた事良かったです。自己認識の旅は生涯終わる事がなく(自己は変容するので当然だとは思いますが)インサイトは自己認識を行う洞察力、己を知ろうという意思、自分に対する好奇心であり、自分への正しい愛情であると、皆さんのお話しを聞いていて感じました。また、幼少時の読書体験の問いが自己認識を深めてくださいました。ヒーローになって世界を救う。そんな物語にワクワクした自分を思い出し、心が熱くなっていました。原点回帰ができた時間、そんな素敵な時間をありがとうございました。

ながいさん『ムダなありがたい保険』
 僕自身生命保険に加盟してますが民間の保険不要だと感じているので早くやめたいなと感じました。親がもともと生命保険会社で働いていてその紹介で入っているのでやめにくいので、そろそろ判断材料を揃えてやめようと思ってます。家庭を持ち父になった場合には検討の余地があるかなと思いますが、そもそも貯金があればいらないと思っているので、もう少し保険の勉強をしていきます。

Takashiさん『哲学入門』ラッセル著、ちくま学芸文庫
 今日は14章のヘーゲル哲学の解説を読んだ。本章ではこの後ラッセルによるヘーゲル哲学の批判が展開されるのだが、私はヘーゲルなんて一行も読んでいない。だからこのラッセル批判が妥当かどうかは判断しようが無いのだ。

 だから気を付けなければならない。「ヘーゲルって〇〇の部分が駄目だよね~」と他人に語りたくなる誘惑に打ち勝たねばならない。本書の論理構築が、いかに緻密で的を射たものであったとしてもだ。私はラッセルの論旨を読み取るべきであって、ラッセルの結論を借りて「駄目だよね~」と言う資格は無い。そういうのは痛々しくて恥ずかしいことだ。

 昨今の哲学解説書ブームでも同じことが言える。解説書だけ読んで用語の知識を仕入れて分かった雰囲気を出すとやばいのだ。でも時間も無いし、見栄もあるし、私もやっちゃうんだよな~~これを!

よしだ『コンビニ人間』村田沙耶香
 今日で最後まで読み終わりました。

 コンビニがもつ合理性に主人公はフィットしていた。ある時、おかしな流れのなかで彼女はコンビニをやめることになる。すると、彼女の生活は崩れていく。元気に働くために寝る時間を決めていたが、バイトをやめたらその時間に寝る合理的な理由はない。清潔感を保つ必要性も薄れ、風呂に入る理由も同時に薄れていく。
 人それぞれに合う環境や生き方というのはある。絶対的・普遍的な基準があるわけではない。

 テーマだけでなく表現や描写など、全体がおもしろい本でした。

mtさん『高瀬舟』
 短い物語の中に、今日でも通用する普遍的な問題提起を内包した秀逸な一編です。読んでみて、「足りるを知ること」「嘱託殺人の是非」「その時代の法と運用のあり方」が気になりました。合わせて『高瀬舟縁起』も読むと、著者の思うところを知ることができます。

 皆さまからいろいろなお話をうかがうことができ、うれしく思いました。ありがとうございました。

 本書は著作権が切れているので、青空文庫のアプリをインストールすれば、スマホで無料で読むことができます。

yukikoさん『めくらやなぎと眠る女』
 村上春樹の短編集は初めて読みました。

 短編でもそこかしこに村上春樹らしさが溢れた作品でした。
 感想では上手く話すことが出来ませんでしたが、主人公の高校時代の描写そして大人になった今の自分とそこに映る景色は何気ない風景が詩情に溢れてとても爽やかでそして文学的でした。
 短編でも村上春樹を堪能出来ました。

 この短編集は英語版が先に出版されて、その後日本語版が出たそうですがこの詩情溢れる文体を世界中で読まれていると思うと嬉しい気持ちになりました。


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 過去の読書感想はこちらに載せています。

読書会参加者に投稿いただいた読書の感想です(2022年10月-)。

 

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