2021.10.01

読書会の読書感想(9/29-10/3)

 参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。9月29日(水)は5名、30日(木)は4名、10月2日(土)は7名、3日(日)は11名の参加でした(主催者含む)。
 日曜日の「質問「   」について考える時間。」の質問は、

幸福の手紙をもらったことがありますか

でした。(田中未知著『質問』(文藝春秋)より)

9月29日:読みたい本を気ままに読む読書会

まぐろ好きさん『未来は予測するものではなく創造するものである』
 フレームワークよりストーリというところ。他の方の話では、自由意志の話が面白かったです。アイデアに関する意識を高めていて、思考というところに興味があり本書のSF思考もヒントになるかなという感じで読んでいます。

よしだ『社会心理学講義』小坂井敏晶著
 何かの行為をするとき、人が意志をもち、それに応じた脳の信号が発生して、身体なりが動く、という流れであると考えるのが一般的であると思います。しかし最近の研究では、脳の信号が発生し、その後に意志が発生し、身体なりが動くのだというのです。脳も自分の一部だから、脳でも意志でもどちらでもいいではないかと思ったりもしますが、脳の信号は自分の内から純粋に起こるものではなく、外的な影響を多分に受けるとのこと。たとえば、自然災害を感じさせる重低音が響く環境に身をおけば、警戒感から攻撃的な行為に及んでしまうことがあったりするかも、とかそんなことではないかと解釈しています。
 意志なんてものはないと仮にされたときに、自分というものへの認識や、責任に対する考え方に混乱をきたしそうです。ただ、ここで言われていることは、あまりにも個人というものが周囲から分離したものとして捉えられてきた近代の補正なのではないかと思って、背筋を伸ばして読んでいます。

10月2日:テーマのある読書会「価値観の色々」

小澤さん『言語学バーリ・トゥード』

「AIは絶対に押すなよを理解できるか。」章の感想

概要:
 ダチョウ倶楽部の熱湯コマーシャルにて
 上島竜平さんが「押すなよ!絶対に押すなよ」といっている場面をAIは理解できるか。

なぜAIに理解が難しいのか:
  ①意味(文そのものが表す内容)と意図(話し手が聞き手に伝えたいこと)が正反対になっているから。

  ②意図を特定するための手がかりが言葉そのものの中に入っていないから。
   例:白いギターの箱。ギターが白い?箱が白い?これだけでも曖昧。
  
  また、上島竜平さんが熱湯風呂の前にいたら押す、という覚え方だと厳しい。
  クリームパイが目の前に置かれていたらどうするのか?パターンは無限にある。

思ったこと:
  AIには上記の通り難しそうだけど、人間は何でできるのか?
   →人間も膨大な前提知識と類推を基にパターンマッチングをしているだけでは?
    (ダチョウ倶楽部を知らない人間だったら文字通り受け取って押さないはず)。
    文字情報だけではなく、画像や音声なども前提知識として
    学べるようになればAIもいずれはできるのではと思います。

Takashiさん『死に至る病』キェルケゴール著
 キェルケゴールの言う絶望は、怪我や病気とは違うらしい。

 怪我や病気は、その原因をいつまでも気にしては駄目で、たとえば他人が病人に向かって「だからあんなに〇〇しちゃダメだって言ったじゃないの」と病気の原因を毎日責め続けることは、非人間的なことだという。
 しかし絶望は違う。毎日常に今この瞬間、原因に遡って自分自身を責め続けるのが絶望だ。

 井伏鱒二の黒い雨のエピソードに、火事で下敷きになった息子を助けきれずに逃げ出してしまった父親の話がある。逃げた後、この息子は奇跡的に助かって父親と対面するのだが、息子はいたたまれなくなって出て行ってしまう。小説にこの先は書いてないが、この父親は常に自分を責め続け絶望しながら生きていくのだろう。

 私の想像だが、絶望に気付いた父親がとる道は3つ。一つは自分から逃げること。例えば、お酒におぼれるなど。二つ目は物語を逆転する嘘を作ること。例えば、父はもっと沢山の命を救いに行ったから仕方が無い、みたいな嘘をでっち上げること。三つ目は信仰に入ること。自分の罪と弱さを認め、そんな自分が依って立つ大いなる力に自覚的になることだ。

 死に至る病は信仰について書かれている。キリスト教がベースの論述であるが、宗教というよりむしろ信仰について書かれている本だ。

yuさん『女のいない男たち』
 出版されたときに読んで再読しました。「シェエラザード」で、出てくる女性の高校生の時の思い出話が心に残りました。短編が本全体で微妙に絡まりあっているところがありました。

 価値観がテーマで、人との距離の取り方とか考え方とか色々あるなあと思いつつ「死に至る病」そういえば哲学の先生「キルケゴール」の話ばっかりしていたような。と昔を思い出したりしていました。怪我や病気と絶望は違う。

よしだ『生物多様性』本川達夫著
 ナマコ・ウニ・ヒトデなどの棘皮(きょくひ)動物の研究などをしていた本川達夫氏の本です。沖縄の大学にいたこともあるなど、生物と直に関わり合ってた方です。

 生物多様性がなぜ大事なのかという議論のひとつの方向としては、人間にとって有益だからというものがあると思います。たとえば、この本に載っていた内容ではありませんが、ジャングルに未知の植物がいたときに、その植物が薬につかえる新成分をもっている可能性があるということなどです。ほかにも、生態系が豊かであることは、食糧生産や防災の観点からも重要であると思います。

 でも、そんな風な価値観の先に何が言えるかと考えていったときに、ひとつの恐ろしいこと(?)に気づきます。あれ?人間の世界の多様性も人間にとって有益だから認められるべきなんだっけ?ということです。つまり、ひとりひとりの違いは有益さを内包しているから価値がある、そんな考え方でいいんだっけ、ということです。

 この本の副題は「「私」から考える進化・遺伝・生態系」です。前に一度読んだのですが、生物全体と人間とを分けずに、「私」の先にあるものとして生物多様性を考えようという内容だったような気がします。壮大だけと大切な話として、読み進めてみたいと思います。

10月3日:読みたい本を気ままに読む読書会

mtさん『ライオンのおやつ』小川糸著
 主人公の女性は33歳。がんのステージ4で医師に余命宣告をされ、瀬戸内海のホスピス「ライオンの家」に入所するところから物語は始まります。食べ物にまつわる場面が印象的で、主人公の心のあり方と密接です。

 食べることや食べ物によって表現される生きることは、やがて訪れる死とのコントラストなのかもしれません。まだ読み始めなのですが、皆さまのお話から、今後の展開に期待できそうで、楽しみです。

yuさん『陰陽師』
 平安時代の醍醐天皇の時、陰陽師安倍晴明の話。鬼や異界のものたちがいた時代の話。見えないものたちのことをどう考えるのかを考えました。

 名は一番小さな呪というのがそうかもしれないなと思いました。他の方は最後をどう迎えるかや、無理しない行き方など、人の生き死にに関する話題だったなと思いました。

ながいさん『マズロー心理学入門』
 マズローの5段階欲求は知っていましたが、よく見るピラミッドはマズローが唱えたものではないことが衝撃的でした。
 世の中の情報は偏っていると思っていて、一次情報を仕入れに行くことは
重要だと改めて感じました。
 今後もファクトベースで情報をみるようにしていきます。

おおにしさん『歌うように伝えたい』塩見三省
 7年前に脳出血で倒れて左半身不随となった俳優塩見三省の闘病記。
 リハビリの結果5年前に俳優を復帰された塩見さんは共演した星野源(彼も大病を患った過去あり)から病とのかかわりに一区切りつけるために闘病記を書くことを勧められ執筆を決意したそうです。

 本書のサブタイトルに「人生を中断した私の再生と希望」とあるように、
塩見さんにとって闘病記を書くことは自分自身を再生させるためのプロセスでもあったのでしょう。
 最初の章を読んで、塩見さんの内省的で落ち着いた文章から何か人生のヒントがもらえそうな気がしたので、最後まで読んでみたいと思います。



 過去の読書感想はこちらに載せています。

読書会参加者に投稿いただいた読書の感想です(2022年10月-)。

 

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(吉田)

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