2021.10.17

読書会の読書感想(10/12-17)

 参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。10月12日(火)は6名、15日(金)は3名、16日(土)は7名、17日(日)は5名の参加でした(主催者含む)。
 日曜日の「質問「   」について考える時間。」の質問は、

自分に手紙を出したことがありますか

でした。(田中未知著『質問』(文藝春秋)より)


10月12日:読みたい本を気ままに読む読書会

yuさん『シブヤで目覚めて』
 チェコ文学。1991年生まれの作者。チェコで日本学を学ぶ女子大生の話。2年の時図書館バイトで川下清丸を見つけたところを読みました。日本に興味を持ったきっかけは村上春樹の「アフターダーク」

 ショーペンハウエルの「読書について」を4巡目している参加者がおられました。私も初めて読んだ時は衝撃を受けてそれを古典新薬文庫のイベントで編集長に質問したら「あなた真面目な人ですねえ」と言われたことを思い出しました。

よしだ『地球進化 46億年の物語』ロバート・ヘイゼン著
 博物館なんかにいくと、宇宙の誕生から始まる年表がある。人類の誕生にはほんのすこしだけ詳しくなったがためか、宇宙の誕生についてほとんど分からないのが悔しい。
 「ビッグバン以前は空間も時間もなかった」「誕生したとき原子核より小さかった初期宇宙は」、第1章ではそんな記述を目にした。どうしよう、全然わからない。けど、不思議と興味をそそられる。

10月15日:読みたい本を気ままに読む読書会

おおにしさん『人生を狂わす名著50』宮家香帆
 著者は京大大学院生兼書店員で、大学の志望も大学院進学も出会った本の影響で決めたという人。
 本が「私の人生そのもの」であり、その結果人生を踏み外してもOKという”覚悟の人”が選んだ本が50冊紹介されている。

 登場する名著の中で私がすでに読んだいる本が15冊あった。
 たとえば、米原万里「オリガ・モリソヴナの反語法」を読んだ後、ソ連時代の東欧の歴史に関心を持つようになったし、斎藤美奈子「妊娠小説」では文芸評論の面白さにはまって、評論本ばかり読んでいた時期があった。
(妊娠小説とはヒロインの望まぬ妊娠にヒーローがおろおろするパターンの小説のこと。森鴎外「舞姫」をはじめ日本文学でよく登場する)

 このようにこの2冊は私の興味やものの考え方に影響を与えたことは事実だ。
 どんな本でも読めば読者に何らかの影響を与えるものであり、著者のように人生を変えるほどではなくても、今まで読んできた数々の本が今の自分を形づくる要素になっていることは間違いない。
 だからこそ、読んでプラスになるような本を選択することが大切だ。
 ただし、本は読んでみないことには、自分にとって良い本かどうは分からないという側面がある。
 本選びは難しいものだとつくづく感じた。

よしだ『個人主義とは何か』西尾幹仁
 個人としての権利と自由をもって生きることには、社会的になのか個人的になのか、なにか素地が必要とされるのだと思わされました。明治維新で西洋の個人主義的な制度はもってこられたけど、そこを生きる人に必要とされる慣習や考え方は置き去りにされたのではないかという話でした。

10月16日:テーマのある読書会『価値観の色々』

Takashiさん『ボディマッピング』バーバラ・コナブル著
 アレクサンダーテクニークという体の使い方を教える協会があり、本書はそこの講師の著書だ。誤った知識によって作られた感覚は、正しい知識によって修正できるか?というチャレンジをひたすら繰り返す。

 例えば前屈するとき、「腰を曲げる」という言葉(誤った知識)によって骨盤の近くの脊椎を曲げると思い込んでいる人は、その行為を繰り返すことで少しずつ脊椎を痛めていく。脊椎はそのつなぎ目のわずかな伸縮が許されているだけで、直角に曲がったりはしない。
 前屈は股関節の動きによって為されるものだという正しい知識があれば、ひょっとすると腰痛は防げたり和らげたりすることが出来るのかもしれない。

 同じような誤解が「肩」「腕」「指」、あるいは「腹式呼吸」などの言葉によって作られている場合もある。骨や筋肉や内臓の正確なイラストは今や簡単に手に入るが、私たちは体のマップと感覚とを案外結び付けていないことに気付かされる。

 ただ、いつも思うのだが、何故アレクサンダーテクニークの解説本はどれも余計な神秘的な味付けがしてあるのだろう。徹頭徹尾、体の使い方だけが対象なのに。

よしだ『生物多様性』本川達雄著
 サンゴ礁にはいろいろな生きものがいて、自分の食用に藻類を育てているサカナもいるのだとか。そこだけ藻類がわさわさしているそうです。そういうの知ると、そっとしておいてあげたくなります。

 ほかにも、特権階級に関する話が出て、考えさせられました。たとえば、今の社会では男性の方が有利な環境になっているとされています。そう作られてきたとも言えるのかもしれません。その場合、先祖代々大富豪とかではなくても、男性は社会的に特権階級にあたり、いかにもう一方の人々を擁護する発言などをしようとも、それは特権階級目線になっている可能性があるということ。う〜ん、これはいろいろと考えさせられて、まったく未消化です。難しい問題。

10月17日:読みたい本を気ままに読む読書会

mtさん『透明な迷宮』平野啓一郎著
 本書は後期分人主義の最初の1冊で、6つの短編が収録されています。その中の「消えた蜂蜜」を読みました。

 主人公の「僕」は、長期滞在した山陰の小村でKという郵便配達員と知り合います。いつの頃からか、村人たちがKの能力に気づいていきます。その能力とは、他人と同じ筆跡で文字が書けるというものです。あることから事件性を疑われ、Kは次第に疲弊していくのでした。

 小さな共同体の中で異質な存在となってしまったK。他人と同じ筆跡から、Kの自己の危うさが垣間見られるのと同時に、書く人と書かれた文字との分かちがたい関係性が逆説的に浮かび上がってきたように思いました。本書のほうが出版は古いのですが、村上春樹さんの『一人称単数』とテイストが似ているように思いました。

よしだ『地球進化 46億年の物語』ロバート・ヘイゼン著
 宇宙や地球の誕生の話は初めて読むので、まだまだ理解が追いつかないのですが、本当の無から有が生まれた瞬間というのは不思議でしょうかない。全くの無になにかが起きて、素粒子が生まれ原子が生まれ分子が生まれ…。雲のようにいろいろなものが漂うところに何かのきっかけが起きて太陽が生まれ、その同心円上に地球をはじめとした惑星が生まれた。そしてそれは宇宙のなかのほんの一片での出来事。そんな宇宙誕生の歴史のなかに、生命の誕生が有る。



 過去の読書感想はこちらに載せています。

読書会参加者に投稿いただいた読書の感想です(2022年10月-)。

 

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(吉田)

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