2021.11.04

読書会の読書感想(11/2-7)

 参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。11月2日(火)は7名、3日(水)は5名、6日(土)は9名、7日(日)は5名でした(主催者含む)。
 3日(水)、7日(日)の「質問「   」について考える時間。」の質問はそれぞれ、

人は何歳まで生きるのがよいと思いますか

まだ行ったことのない国から手紙をもらったことがありますか

でした(田中未知著『質問』(文藝春秋)より)。


11月2日:読みたい本を気ままに読む読書会

yuさん『だれも死なない日』
 ジョゼ・サラマーゴ:「翌日、誰も死ななかった」人が死なない世界で人々がとる行動が書いてある小説です。殺人や寿命なんかはどうなるかと質問を受けました。まず初めに葬儀社が騒然と。ポルトガル語圏のノーベル賞作家です。

 他の方の100分de名著 ブルデュー 「ディスタンクシオン」でネットの時代はブルデューはどう見るだろうというのがわたしも聞いてみたいなと思いました。

だいぽんさん『ニッポンの思想』
 「ニューアカ」の代表的な存在である、浅田彰さんと中沢新一さんについて書かれていたが、紹介されている内容が難しく、あまり理解できなかった。もうちょと、頑張って勉強したい。

11月3日:読みたい本を気ままに読む読書会

Yukikoさん『依存症ってなんですか?』
 文化の日に依存症の本を読むってどうかなと思いながら読みました。
漫画とエッセイで構成されている本です。

 依存症と言ってもアルコール、薬物、ギャンブル、買い物、ゲーム、家族、恋愛、宗教、スマホ依存など世の中は依存症になりそうなもので溢れています。
 その中で上手く、それらと付き合うヒントがあればいいなと思いながら読みました。

 この本は依存症に悩んている本人ではなく、アルコール依存症だった父との思い出を綴った子供の目線で書いたものになっています。
 依存症になった本人もさることながら、そのまわりで悩む家族、そしてそれを囲む社会の在り様や人間関係が見えてきて、依存症は本人のものだけでなく、社会や家族関係のものなのかもしれないと思いました。

 雑談の中でプラトンの理想の世界という話がありましたが、理想の社会というものプラトンがいた世界(数千年前)からイメージ出来ているのに、未だに実現出来ないというのはこれからもずっと続いていく命題なのかもしれないと思いました。

よしだ『ソフィーの世界』ヨースタイン・ゴルデル著/池田香代子訳
 この本は1995年に邦訳版が出され、その当時、結構な大ブームになったそうです。僕の持っているのは「2019年5月25日 第102刷」です。

 なんでブームになったのか、当時はバブルも崩壊した頃で、、、なんていう話になったりしました。

 本の内容自体は、哲学の歴史を振り返っていくもの。哲学者たちがなにに焦点をあてて、どんな考えを示してきたのかが順々に記されていきます。

 それ自体に、今を生きるわたしたちをパワーアップさせてくれるような新しい知はおそらくありません。もっと新しいものを学校で習っているからです。

 でも、オリンピックを見て人間の身体や心の可能性を見るように、過去の哲学者たちには、頭や考える力の可能性を見るような気がします。本などの知の蓄積や、教育システムや、科学的な実験機器などが無いなかで、現代の知の基礎となるような考えを示しているからです。徹底的に理性的に考えることでどこまでいけるのか、そんなことを感じられる気がします。

 混沌としているところから物事を整理していくとはどういうことなのか、過去の哲学から学べることは、そんなことでしょうか。仮に意味づけするならば、ですけど。単純に読んでいておもしろいです。

yuさん『だれも死なない日』
 読んだところは、死ねない国があって隣の国の国境を越えたら死ねることがわかって・・というところ。死ぬから生物なのかな。死は怖いけどいつまでも生きるのも怖いな。ちょうど、質問の時間での質問が何歳まで生きればいいかみたいなことで。好きなことをすればいいのか。たとえばビーチで1日中本を読むような生活。でも毎日だとどうかなど。何がしたいことでどうなればいいのかなど考えました。

 また、スヌーピーのストーリーが哲学的だと聞き読んでみたくなりました。

11月6日:読みたい本を気ままに読む読書会

なかとみさん『対話する社会へ』暉峻淑子
 住民が自発的に立ち上げた「対話的研究会」の例。従来通りの受け身でやりとりの乏しい講演会を機に発足した会。各自が関心のあるテーマについて報告をし、参加者が討論をする。7年続いていて、皆勤の人もいる。

「人間である以上は誰もが考えを持たないなんていうことはあり得ません。ただそれを言葉にする仕方にためらいがあるだけです。誰もが、本当は自分の考えを語ることができる社会人の一人として、主人公の一人でありたいのです。ですが、これまでそういう場がなかっただけなのです。」

 自分もそういう場に参加してみたいと思ったし、伝統的・構造的に対話の乏しい社会で、人は対話に飢えているのかもしれないと思った。考えてみると、この読書会も本をテーマにした対話の場所なのかもしれない。

yuさん『けものたちは故郷をめざす』
 1945年の敗戦後に満州から日本を目指す少年のお話。
 突然明日、南行きの列車が出ると乗りこんだものの。母の死があり脱線があり。その世界に引き込まれました。墓に塩を盛る場面が文化を感じました。運がいいとかいうけどあの時代は運が良くないと生きていられない気がしました。

 アマゾンの民族の話で今しかないというのが印象的でした。

小澤さん『ピダハン 「言語本能」を超える文化と世界観』
 アマゾンにいるピダハンという部族の言語学的な調査(+宣教師の役割)に関するフィールドワークを纏めた本。アマゾンという地域なので、マラリアが家族が死にかけたり、タランチュラなどが普通に家にいるようなタフな環境のため、単なる研究結果のみではなく、そういった生々しい苦労もうかがえる本。

 この部族は言語的な面でいうと、我々からはかなり特殊に感じる。たとえば以下のような感じだ。
 ・SOVが原則の文法。ただし、Vが多様で複雑。
 ・おはよう、こんにちはといった言葉はない
 ・比較級や色に対応する言葉がない。赤だったら「あれは血みたいだ」といった表現になる

 この中で「イビピーオ」という単語の話が面白かった。
 最初、飛行機が現れたり消えたりしたときにイビピーオという言葉を使っていたので「たったいま」という言葉だと思ったが「マッチがイビピーオする」という表現をしていたため、どうやら違う。

 いろいろ考えてみるとどうやら直接的な体験をしたときにイビピーオを使う、と仮説をとったらうまくいったらしい。この部族は直接的な体験(今)を重視していて、未来のことばかり考えて不安になっている我々に思わせるものがあると感じた。

11月7日:テーマ「出合いたいもの」の読書会

yuさん『獄中シェイクスピア劇団』
 テーマが「出会いたいもの」
 何かなと考え、「ちょっとした希望」だと思いました。

 獄中の囚人に演劇を教える話のようですが、読んだところは、2人のビジネスパートナーがいて客からの苦情処理や理事会への参加など雑用をひき受けてくれているように見せかけていたトニーに実は裏切られていて、職を失うところでした。読んだとこに希望はなく思い通りにはいかないものだと思いました。実と形式があり、雑用は形式だという意見になるほどと思いました。

 他の方の4大文明が出てくる舞台がイラクのフタコブラクダの話が、ワクワクするそうでよんでみたくなりました。

Takashiさん『罪と罰』『死に至る病』(2冊)
 ドストエフスキーは、どうしようもない人間がどういう風にどうしようもないかということや、100%どうしようもない人間はいないことを書いている。人間はとても複雑だ。

 キェルケゴールの「死に至る病」は、その人間を信仰という立場から解説している。どちらも非常に繊細な人間観察の書だ。

 「罪と罰」の登場人物が「死に至る病」でどの様に説明されているのかを探す作業は、宝探しに似ている。いつか一連の読書感想文として書き出してみたい。

 私が小説や哲学書を読みたいと思ってしまうのは、自分の中にどうしようもない部分があるからなんだろうな、多分。

mtさん『ヒトコブラクダ層ぜっと』万城目学著
 「出合いたいもの」とはなんだろうと考え、「ワクワクするもの」ではどうだろうと思い、『ヒトコブラクダ層ぜっと』を取り上げることにしました。上下巻あるうちの上巻を読み終えたところです。

 著者の作品には、誰もが知っていそうな固有名詞がたくさん出てきます。いわゆる「つかみはOK」です。それらの歴史的な背景などがよく調べられているなと感じる蘊蓄を披露しつつ、これがブリコラージュかと思うような見事な構成によって描かれる物語は、日常と非日常を織りなすファンタジーとして、随所に見え隠れする小ネタと確かな結末により、万城目ワールドと呼ばれています。そんな世界を描く著者を、内心、天才ではないかと思っています。

 舞台は日本からイラクへと移ります。メソポタミア文明は、今は砂漠となってしまったイラク辺りとのこと。そのイラクでのとある場面で、奇跡のような美しい風景が描写されながらも、「寿司桶」という喩えが出てきます。なんてことをと思い画像検索してみたところ、たしかに寿司桶のようだなと思いました。

 四大文明のメタファかなと思われる表現や、ギリシャやアンデスなどの文明も入れ込もうとしているのではと深読みしたくなる場面もあり、ワクワクは下巻につづきます。

よしだ『モード後の世界』栗野宏文著
 ファッションブランド・ユナイテッドアローズの創立メンバーである栗野宏文氏の本です。ファッションの世界の人は、時代の読み方と、そこにどういう表現物を合わせていくかという思考がおもしろいと思っています。

 2019年はグレー色のものが流行ると考え、実際によく売れたそうです。背景としたのは、たとえばトランプ大統領などの極端な言動に世は混乱させられており、まともな大人であれば、冷静に知的になろうという気持ちが湧くのではないかということだったそうです。グレーは黒でも白でもない中庸な色。まわりからすこし距離をとって、染まらずに考えてみようという気持ちを表す色のような気がしてきます。

 まだ前半しか読んでいませんが、これからの世界のことも書かれていそうです。それにどんな実利や実益があるのかはみえにくいのですが、意味づけというのは、なんだかとても大切なことのように思えてきました。



 過去の読書感想はこちらに載せています。

読書会参加者に投稿いただいた読書の感想です(2022年10月-)。

 

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(吉田)

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