2021.12.26

読書会の読書感想(12/23-12/28)

 参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。12月23日(木)は5名、24日(金)は5名、25日(土)は7名、27日(月)は3名、28日(火)は9名の参加でした(主催者含む)。

 25日の読書会では今年読んだなかで印象に残っている本も紹介し合いました。紹介された本は、このようなものでした。
『社会心理学講義』
『BEFORE』
『ピダハン』
『ユング心理学と仏教』
『本屋、はじめました』
『ゲンロン戦記』
・(タイトル忘れたので概要:旅に行かなくても、瞑想するのがどこにでも行ける旅)
・おまけ:おもしろいと紹介されたYoutubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」

12月23日:読みたい本を気ままに読む読書会

ねこさん『ペストの記憶 100分de名著』
 作者デフォーの生い立ちだとか、今、コロナの時代に読むべき読みどころなどが書いてある2020年9月放送の解説本です。1722年にイギリスで出版された書物が「ペストの記憶」です。当時の人々の不安や行政の施策や金儲けを企む人々などフィクションとノンフィクションを織り交ぜて書いてあり小説というよりもルポに近いと思います。

 命の危機に見舞われると例えば対立していた宗派もだんだんそうではなくなり、また平時に戻ると対立も元に戻ると書かれていて宗派だけでなくいろんなことに当てはまるかもしれないなと思いました。

だいぽんさん『ダムヤーク』
 『時間は存在しない』。ペンの説明で、引力が存在しなくて、時間が存在しているのでは? と少し勘繰ってしまいました。機会があれば読んでみたいです。

よしだ『時間は存在しない』カルロ・ロヴェッリ著/富永星訳
 まえに本屋で見かけて気になっていた本がなんとkindle unlimitedに…!ということで早速ダウンロードして読み始めました。
 物理学にもとづいて、時間とは何かを考察していく本なのだと思います。なんと、物体は周囲の時間を減速させる、という驚愕の考えから始まりました。アインシュタインの物理学ではそう考えられているのだそう。だから低地では時間が遅く、山地では時間が速いのだそうです。
 私たち個人個人は、地球、月、太陽や、その他の惑星との距離がそれぞれに異なります。ということは、それらの物体との距離の総和に応じて、時間が速い人や速いタイミングがあったり、その逆もあるということです。つまり、それぞれの時間軸で生きているのです!
 なるほど、そうなんだ、とはならない…。読み終わったときに認識にどういう変化が起きるのか、楽しみにしながら読み進めていきたいと思います。

12月24日:読みたい本を気ままに読む読書会

早川麻子さん『産む、産まない、産めない』甘糟りり子
 会社で部長代理というポジションの40代彼氏なし未婚女性。昇進の話も出ていたし、仕事も楽しく取り組んでいたが、たまたま関係を持った人の子どもを妊娠してしまう。産むかどうかわからないが、無意識にカフェインを取らないように気を付けている自分もいる。会社に伝えると、昇進話は無かったことにされた…という話。短編8つのうちの1話目。

 仕事で一人前になるためには時間がかかる。だから、結婚や出産は後回しになりがち。出産となるとどうしても休まないといけなくなるので、責任ある仕事が任せられないのも一理ある。でも女性にはリミットがある。若ければ若いほうが体力があるし、卵子の質もいい。子どもを望む人が時期を逃さず、職場に申し訳ないと思わず産休育休がとれ、また会社で活躍できるようにするには、周囲の支えや理解も必要。soiさんが、これからの日本を支えてくれる子どもを産んでくれるんだから、周囲の人達が大きい規模で見てくれるといいとおっしゃっていたので、その通りだなと思った。

 今年最後の参加でした。皆さんの選書や意見、感想を聞いて、興味が広がるし、とても勉強になっています。ありがとうございます。来年もヨロシクお願いします。

Soi Tomsonさん『BEFORE』 by Jim B. Tucker, MD
【本の紹介】アメリカ、ヴァージニア大学での40年以上にわたって調査、研究されている”前世の記憶を持った子供たち”について書かれた本。
すでに出版されている “Life before Life”, “Return to Life”を合冊し、改めて出版(2021年)された。

【感想】本日はReturn to LifeのChapter4,5の途中までを読んだ。
おそらく、これまで著者が直接関わった調査研究の中でのハイライトと思われる事例を紹介している。
・アメリカ、ルイジアナ州に住むJamesは2歳ごろから ”自分はこのJamesとして生まれてくる前は戦闘機のパイロットとして第二次世界大戦に参加し、硫黄島作戦で日本からの攻撃を受けて戦死した” ことを当時搭乗していた飛行機や戦友などの詳細を加えながら語り始める。その後両親はインターネットやアメリカ政府の記録などを通じてJames の語る話と実在していた飛行機の機能や人物(名前や所属)がほぼ一致していることを確認する。

・著者はJames, 両親の発言にどれだけ信憑性があるかをくまなく調べている。その過程はまるで数学の解答を証明するかのようで大変細かく、非常に忍耐とエネルギーを要すると感じた。
もしもこれが子供や家族が仕込んだ壮大な嘘であるならば、多くの研究者、親戚、隣人を巻き込んでいるので相当な悪ふざけだと思う。しかし2,3歳の男の子にそのようなことが果たしてできるのだろうか、と感じた。チャプター4の最後に彼は思春期を迎えて前世の記憶のほとんどを失っていると知り安心した。この人生では多くのことを経験し幸せな人生を送ってほしいと思った。

【ほかの方の本から】「社会心理学講義」の紹介の中で私の記憶が正しければ、社会規範、道徳的な考えは(価値体系が内在化されたもの?)実は信用ならない(違っていたらすみません)ということを知り、それはアメリカにおけるトランプ政権時代をおもい起させた。
人間は過去に学ばず同じような過ちを無意識に起こしてしまうのだろうか。もしくはそもそも社会規範と深層心理にある価値は全く違うものなのか。
「15歳の短歌・川柳・俳句」このように凝縮された強い言葉を思春期真っ只中の人々はどのように受け止めるのでしょうか。ご紹介いただいたユーモアを交えた作品は壮年期の自分にも大変刺さりました。

Haruoさん『東京タクシードライバー』山田清機
 タクシードライバーを10何人取材してまとめたノンフィクションです。今日読んだ第5話は、女性ドライバー2人の話でした。小さい子どもがいるのに、夫から「会社勤めに向いていないと分かったから、ごめん」と言われて、夫に主夫をやってもらって働きに出ることにした、という女性ドライバーの話はいいなと思いました。
 もう一人の女性ドライバーは、初っ端に「あなたはこの仕事に向いていないから辞めた方がいい」と3人の人から言われたそうです。タクシードライバーというのは、お客さんからの文句(時に暴言)に耐えなくてはならない仕事のようです。安易に「仕事がなくなったら、最悪タクシードライバーにでもなればいい」なんて言えないなあ、と思いました。「この世にたやすい仕事はない」というわけです。

よしだ『社会心理学講義』小坂井敏晶著
 僕のなかで、今年のベスト本です。認識や常識がことごとく覆されます。
 意志とは責任を個人に持たせるために社会的に創られた虚構的な概念であるとか、本人の思想に反した行為を人間は簡単に行なってしまうとか。
 思想や考えが行動に反映されない(されにくい?)のであれば、なんのために学んだり自分なりに考えたりするのか。パニックになります。
 しかしこの本のなかで再三言われていることは、人間の期待にもとづいて人間理解が進められる側面があること、期待に合うようなかたちに歪曲されてしか社会には受け入れられないことでした。
 そう思い込んで生きることは必ずしも悪いことだとは僕は思いません。でも、思い込みが窮屈さとか不自由さとかを生じさせているのであれば、その認識は変えていきたいとも思ったりもします。僕のなかではベスト本、でも決してオススメはしない危険な本。

12月25日:読みたい本を気ままに読む読書会

原有輝さん『超訳モンテーニュ』
 今朝は読めませんでしたが、モンテーニュは、フランス・ルネサンスの戦乱の時代に生きたようです。モンテーニュは、かなり争いの調停をしたらしい。おそらく、モンテーニュにとって「エセー」は、戦乱の時代の癒しだったのでしょう。話題は、誠実や幸福や判断力等、多岐にわたるようです。村の領主をしていただけあって、いろいろ考えることがあったのでしょう。

小澤さん『データ視覚化の人類史』
 本書はデータ視覚化(Data Visualization)をキーワードに歴史としてまとめた本です。

 視覚化という意味では古くはラスコー洞窟までさかのぼることができますが、データ視覚化(≒図表)という意味では17世紀あたりから盛んになっていることが分かり、ここらへんからデータ可視化というものが発生して、近年は黄金期を迎えたといえます。

 データ視覚化といっても、最初は手探り感のある図表を作成したりと当時の人が苦労したことがうかがえるのが個人的に興味がわきました。コレラ菌流行に対する様々な調査をした事例でいえば、コレラ死亡者数と標高の関係を表した図を自分がみたときに最初読み解くのに時間がかかりました。しかし、そういったデータ視覚化という観点も様々な歴史があって、現代にやってきていると考えると当時の人には敬意を覚えました。

12月27日:読みたい本を気ままに読む読書会

持田育美さん『ライフシフト』
 本日は参加させて頂きありがとうございました。ゆったりと本が読め良い会でした。
 私もコロナになってからオンラインで朝活を開催しているのですが、吉田さんのお人柄なんでしょうねゆったりとした、落ちついた会で参加しやすかったです。みなさんタイプが違う本を読まれていて、毒島さんの話は年末読んでみたいなと思いました。また参加します☺️

よしだ『哲学な日々』野矢茂樹著
 年末なので読みやすいエッセイを、と思って読み始めたら、思いがけず難解な方向へ…。
 「犬」に対する認識の仕方から。ジョン・ロックは、犬という一般概念が自分のなかでできて、その概念と言葉が結びつけられて犬という言葉に意味をもたせている、というような説明をしたらしい。それに対して著者・野矢先生の師匠の大森先生は、目にしたものを犬か犬でないか見分けられることそのものが認識であると反論したらしい。この反論は、犬とはどういうものかを説明できないのに、一般概念があるとどうして言えるのか、ということ。
 ジョン・ロックの説明を聞いて納得していては、哲学者とは言えないとのこと。哲学とはその態度をとることがまず難しい。年末に変なものを読んでしまった。おもしろい。

12月28日:読みたい本を気ままに読む読書会

つやまさん『生きることとしてのダイアローグ: バフチン対話思想のエッセンス』桑野隆
 近年教育や精神医療の分野で再評価されている、ロシアの思想家ミハイル・バフチンの対話思想がわかりやすく解説されている本です。バフチンがいう『対話』は、二人のひとが向かい合ってことばを用いて話し合うという意味だけにとどまらず、ひとが相手に呼びかけて相手が応えるという関係一般を指している。今回読んだ『「わたしはひとりで生きている」という幻想』という節では、ひとは生きている限り、眼、唇、手、魂、精神、身体全体、行為でもって、全身全霊で対話に参加しているということである。現代社会に生きる私たちは、自分ひとりでいる状態を起点としてものごとを考えがちであるが、人間の本来の姿とは対話的関係の中にある状態なのだ。というようなことが書かれていました。充実した生き方というのは、自分が参加している『対話』にいつも鋭敏でいることなのかなと感じました。
 今年もたくさん参加させていただき、ありがとうございました。読書会での読書や対話を通して、学んだり深めたり楽しい時間でした。また来年もよろしくお願いいたします!

だいぽんさん『群像 「オン・ザ・プラネット」』島口大樹
 「オン・ザ・プラネット」が、ジム・ジャームッシュ監督の映画「ナイト・オン・ザ・プラネット」から来ていたり、ロバート・デ・ニーロ主演の映画「タクシードライバー」への言及など、なかなか純文学というよりは、エンタメかな? と思ったりしました。芥川賞候補作です。

ねこさん『ラ・カテドラルでの対話』
 1940年代から1950年代にかけて8年ほど続いたペルーの独裁政権下での人々の様子が描かれた小説です。作品に直接言葉が出てくる訳ではないですが思想犯ってどういうものかなと考えていたところだったので意に沿わない思想を持つことが犯罪になるってこういう政権下では顕著なのかな?と思いながら読んでいます。アプラ党員が取り締まられています。ペルーは国民の80%以上が先住民速との混血で、そういう社会は日本にいると想像が難しいなと思いました。

 読んだ本を紹介するところで、言葉を気になった蜜柑に例えている本の紹介があり面白いなと思いました。

よしだ『時間は存在しない』カルロ・ロヴェッリ著/富永星訳
 今見ている太陽は、およそ8分前の姿となる。なぜなら光は、地球と太陽のあいだを光の速度をもって伝わってくるからだ。この事実を、対人関係にもっていくと、遠くに見えるあの人もほんのわずかだけど、過去のあの人を見ていることになる。そして隣にいるその人も。
 私たちは、「同時」を共有していない。みんなそれぞれに時間の小空間のようなものをもって生きている。


 過去の読書感想はこちらに載せています。

読書会参加者に投稿いただいた読書の感想です(2022年10月-)。

 

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(吉田)

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