参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。1月8日(土)は5名、9日(日)は8名の参加でした(主催者含む)。
日曜日の「質問「 」について考える時間。」の質問は、
プラネタリウムで流れ星を見たことがありますか
でした(田中未知著『質問』(文藝春秋)より)。話はプラネタリウムや宇宙のことに及びました。国立天文台のプラネタリウムは、詳しい解説や描写が満載でおもしろい、けれどもマニアックすぎてデートには向かないそうです。
1月8日:読みたい本を気ままに読む読書会
Takashiさん『「豊かさ」の誕生(上)』ウィリアム・バーンンスタイン著 日経ビジネス文庫
今読んでいるのは上巻の前半部分まで。イギリスから見た世界経済史といった感じの本だ。
古代から現代に至るまで、小金持ちが沢山いる国は経済発展してきた。
では今の日本はどうだろう。株高でお金があまっている印象だが、同時に貧困層も拡大し続けている。日本から小金持ちがどんどんいなくなっているのかもしれない。かといって富裕層から沢山税金を取って再分配するのも、やりすぎると良くない。お金を集めて配る人達の権力が肥大して、行きつくところは自由のない全体主義と衰退だ。
数十年先は分からないが、今の日本はどうやっても西欧の枠組みの中で生きなければならない。ならば西欧が何と戦って何を勝ち取ってきたのか、本書の切り口から眺めてみたい。
Yukikoさん『世界を歩いて考えよう!』
今、一押しのちきりんさんの本が紹介したくて今回、読書会に参加しました!
ちきりんさんは社会派ブロガーという肩書で本やブログ、ツイッター、ボイシーなどで社会を俯瞰でみた意見を発信しています。
その考え方、視点が特異で面白いのです。でもとても理論的です。
この本は世界を旅行した旅行記ではなく、その訪れた名所や人々、美術館、通貨などの背景を独自の視点で解説したもので、平易な文章ですがものすごく考えさせられて読むのに結構な時間がかかります。
大学受験の試験問題としても使われているそうです。
リプトンの紅茶の話ですが、私も最初読んだときどうしてそのような状態で出てくるのかわかりませんでした。
でも、解説されると納得で東南アジアに行った際には確認してみたいエピソードでした。
よしだ『社会心理学講義』小坂井敏晶著
今年も引き続き読んでいます。今日は、人の心は、矛盾を解消するように考えを補正するという話でした。
たとえば、本当は大好きなマヨネーズを批判するようなレビューを書いてくれと言われたとします。もちろん報酬付きです。その報酬が一万円のときと千円のときとでレビューの内容がどう変わるのかという話です。
常識的に考えれば、一万円の報酬をもらえる方が、より強烈な批判を盛り込んだレビューを書きそうなものです。その報酬に見合った分だけ、本当は好きなんだけど頑張って嫌いになった気持ちでレビューを書こうとすると考えられるからです。
しかし結果は逆になるようなのです。報酬の低い千円の方が、より強烈に批判するようなレビュー内容になるようなのです。それはなぜか…?
一万円もの大金をもらえれば大好きなマヨネーズを批判することも正当化されます。みなそれぞれに生活があるため、ほんのすこしの間だけマヨネーズを裏切ることも許してくれるよね、と自分を納得させることができるからです。だからマヨネーズを好きなまま、批判レビューを書くことができ、結果的にやんわりめの批判になるのです。
その一方で、千円では正当化されません。たかが千円のために愛してやまないマヨネーズを裏切るのかという葛藤が自分のなかに生まれます。そうして導かれるのが、本当はマヨネーズは悪い食べ物なのではないか、それほどおいしくないのではないかと考えるという、心の補正です。千円でマヨネーズを批判する自分を正当化させるために、矛盾を解消させるために補正するのです。結果的に、魂のこもった(?)批判レビューになります。たぶん、レビューを書き終えた後、マヨネーズを少なからず嫌いになっているはずです。
本で紹介されていたのはマヨネーズレビューの例ではありませんが、類似の実験で同様の結果が示されているとのことです。人の心とは一体なんなのだろうと考えさせられます。でもすくなくとも、その人が示す考えや意志は、必ずしもその人個人だけに帰属するものではない、ということは言えるのだと思います。
1月9日:読みたい本を気ままに読む読書会
とらさん『ナビ・タリョン』
李良枝作の短編小説をよみました。
蔑視にさらされるのを避けるために国を隠して京都の所管の皿洗いと布団敷きをしていた家出少女の話。深く意味も考えずに発した一言がどれだけそれを恐れている人を傷つけるのかなどを考えました。
シンカイさん『アウターライズ』赤松利市
東日本大震災後、再び震災が起こったが被害者数はたったの六名。その後、東北は独立を宣言。著者の圧倒的な物語のスケールに驚かされる長篇小説です。
mtさん『オードリー・タンの思考』近藤弥生子著
本書は全4章で構成され、1章でオードリー・タン氏という人となり、2章で生い立ち、3章で活動と仕事、4章で考え方が書かれています。今回は3章の途中まで読みました。
前代未聞のコロナ禍対策としてマスクの必要性が叫ばれていたころ、台湾では国民に平等にマスクが行き渡る仕組み(マスクマップ)を構築・実施していました。そのときにクローズアップされたのが35歳でデジタル大臣になったオードリー氏でした。そのころ日本では、転売屋によるマスクの値段の高騰、対策としてのアベノマスク配布、中には自分でマスクを作るという方も多かったと思います。
台湾の情勢を補助線としてみると、今までブラックボックスだと思っていた日本の情勢が見えるようになるのではないかという気がしました。台湾には政府が議論をする前段階として、国民が直接意見を述べ、政策に参加できるvTaiwanという仕組みがあるそうです。そのような仕組みは羨ましく感じますし、政治に対して特定の思想を持つ必要はなく、私たちが私たちの生活を向上させるために意見を述べることが身近なこととして捉えやすくなりそうに思われました。そのvTaiwanを作るうえで困難だったのはメンツとのこと。国の違い、文化や規模の違い云々という見方もあるとは思いますが、どのような枠組ならば人間はどう動くのかには共通することもあると思います。
リーダーというとイデオロギーや大きな物語を連想してしまうのですが、オードリー氏の立ち位置はリーダーではなく、実現したい政策にとって必要な枠組を協働で構築したりアイデアをフォローするといった役目を担っているということでした。
Soi Tomsonさん『生物と無生物のあいだ』福岡伸一著
2007年に出版され、当時新書系の間でベストセラーだった。再読。
”生命とは何か”が本書のテーマ
本日読んだ部分:第一章、第二章(途中)
NYにあるロックフェラー大学の様子からこの本ははじまる。(著者はこの大学で研究員として在籍していた) ロックフェラーでは過去に野口英世も在籍しており、野口の業績(梅毒、ポリオ、狂犬病そして黄熱病の解明)について、当時ははもてはやされた。しかしその後の研究で間違いだったことが判明する。このような事実を野口の生い立ちと彼自身の抱えていた心の葛藤をうまく描きながら話は進んでゆく。
第二章ではある病原体がその病気の原因だと立証する過程を細かに描くことからはじまる。
感想:過去に読んだ時の記憶として、面白かったこと文章が上手だという印象しか残っていなかったが、初めの部分を再読し全くその通りだと思いました。科学書なのにまるで文学作品を読んでいるような気分になります。
第二章ではウイルスについてふれており、それによると:
・ウイルスは限りなく物質に近い存在(一切の代謝をしない)
・物質のようであるが細胞に寄生することで自己複製する
という生物なのか物質なのかわからない性質があるということに驚きました。
この新型コロナウイルス感染が世界中に広がり久しいのにウイルスについてあんまり理解していなかったことを自覚しました(再読だけど)。出版から15年たっているので本書で書かれている事実についてupdateはあるのかもしれないが現在でも十分楽しめる本だと思います。
読書会全体の感想:皆さんがそれぞれ読まれた本が大変興味深い。(毎回感じますが)
特にFP2の試験のための本については色々考えされたし、ご自身の将来のことをしっかり考えていらっしゃる姿に敬服します。
よしだ『実力も運のうち』マイケル・サンデル著/鬼澤忍訳
海外有名大学への不正入試の話から始まりました。富裕層は自分の子どもをいい大学へ入れるために、受験詐欺のプロに大金を払います。ある受験詐欺師は8年間で25億円を超えるほどのお金を懐に入れていたのだとか。
しかし問題の焦点は、受験不正にあるのではないといいます。そんなお金を払ってまで有名大学に入れたいという能力主義にあるというのです。
たしかに詐欺師に大金を払えるほどの富裕層であれば、一生生きるのに困らないだけの資産を余裕で子どもに残すことができます。しかし子どもがただ生きるだけでは不十分であると感じ、能力があるという(偽の)証明書を子どもに与えようとするのです。ちなみに、受験に受かった子どもは不正の結果だということは知らされません。
この、一つの価値基準に偏りすぎた世界からどう抜け出せばいいのか。昨日の読書会で話された、人を手段としてではなく目的としてみる価値観の話を思い出しました。存在していることそのものに価値をみるような感覚をもてなければ、周りも自分も落ち着きのある幸せを手に入れられないのではないか、というような話でした。活動の源泉としての競争は大事だと思いますが、それに取り憑かれすぎてしまうのは避けたいと思いました。
過去の読書感想はこちらに載せています。
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(吉田)