2022.01.26

読書会の読書感想(1/25-30)

 参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。1月25日(火)は5名、27日(木)は7名、29日(土)は9名、30日(日)は9名の参加でした(主催者含む)。
 土曜日の「質問「   」について考える時間。」の質問は、

あなたが今まで書いた句読点は全部でいくつあったでしょうか

でした(田中未知著『質問』(文藝春秋)より)。

1月25日:読みたい本を気ままに読む読書会

おおにしさん『活動の奇跡 アーレント政治理論と哲学カフェ』 三浦隆宏   
 本書はハンナ・アーレント政治理論の中核に位置する「活動」という営みを著者自ら推進している哲学カフェと関連させながら解説したもの。

 アーレントは哲学者の内省的な思索を批判して、思索により得た内的自由では世界から孤立することになり全体主義支配を受け入れる格好の下地になると考えた。そして、他者との交わりによりえられる「政治的自由」が内的自由より重要であり、人と人とが平等に自分の意見を開示しあう営みが、全体主義へ陥らない「政治的自由」を得ることができるとして、この営みを「活動」と名付けた。

 一方、哲学カフェは街中で市民が集まり、普段あまり考えないようなテーマを皆でじっくり話し合い考える場であり、議論して争ったりせず、それぞれの意見を一つ一つ吟味して物事を考えていく場のことをいう。
 著者の解説を読んで、哲学カフェがアーレントの「活動」が目指す「政治的自由」を得るための第一歩になりうるのではないかと感じた。

 ハンナ・アーレント政治理論を理解することは難しいが、哲学カフェは気軽に参加することができる。
 今後も哲学カフェに参加して、その意義について考えていきたいと思う。

Soi Tomsonさん『生物と無生物のあいだ』 福岡伸一著
本著の前半は20世紀最大の発見ともいわれるDNA二重らせん構造について、後半はこの本のもう一つの命題である動的平衡についてふれられている。本日は前半と後半の境目を読んだ。

第7章:DNAの二重らせん構造の発見をめぐり研究者の人間くさい(らしい)謎解競争が描かれている。この競争をからチャンスをつかみ取ったのは「準備された心」を持っていたワトソンとクリック(特にクリック)だった。
第8章:この章では前章の終わりにある物理学者シュレディンガーの二つの問いに対する答えからはじまる:
① 遺伝子の本体はおそらく非周期性結晶ではないか
② 原子はなぜそんなに小さいのか
これらがもうひとつの命題”動的平衡”のカギとなる。

感想:著者の言葉選びがよく、素人でも大変理解しやすい。またときにアイロニックな表現なども使われ読んでいてワクワクし、表舞台に立てなかった研究者たち(unsung heroes)の切ないくらいの真摯な姿勢に涙し・・と論理的でありながら読者の感情にうったえてくる。

会全体の感想:本日も学びの多い時間でした。ありがとうございました。

としさん『マザー・テレサ 愛の言葉 「それでもなお、人を愛しなさい。」』 マザー・テレサ研究家 もりたまみ
 マザー・テレサは「ごく普通のおばさん」。マザー・テレサ研究家のもりたまみさんの言葉です。テレサが凄いのは、その思想でなく、当たり前のことを極めた人だった。だから、テレサのような生き方は、特別のものではなく私たちにも出来ると語っています。本の中では、マザーテレサの言葉と生き方を作者の観点からそれぞれの章に分けて解説してくれています。

 とても読みやすい本でした。テレサの言葉と解釈が私にはいまいちピンとこないものもありましたが、書いてある内容はどれも今の自分の生き方を考えさせられるものでした。

 その中で一番心に残っているものを紹介します。

 「生きる」の章にある全盲のアメリカ人エリック・ワイヘンメイヤーがエベレストに登頂出来た話です。目が見えないのに彼はどうやって登頂できたのか。彼の答えは「ただ、一歩ずつ足を進めただけです」まず始める、そして、一歩づつの努力を続ける。これがあれば、エベレストのような高い目標もいつか到達できることをエリックは教えてくれると紹介してくれています。
 ここでのテレサの言葉はこうでした。
「最高の仕事。それは、愛をもって ごくありきたりな仕事を 心を込めて最高に楽しんで行うことです。」

よしだ『時間は存在しない』カルロ・ロヴェッリ著/富永星訳
 今日はアリストテレスとニュートンの時間観の違いのところを読みました。
 アリストテレスは時間を変化を計る尺度のように捉えていたようです。だから、1週間も太陽が7回昇ったという変化の回数で捉えるし、同じ24時間を過ごしても刺激的な経験をした24時間の方が長い時間として捉える、のだと思います。
 それに対してニュートンの時間観は、アリストテレスの考えを否定はしていないようですが、なにがあろうと一様に流れるものと捉えました。現代の私たちの時間観はニュートンのものを多く取り入れているのだと思います。
 1日は24時間だし、1年は365日です。でも、今日はなんだか長く感じたなとか、今年はあっという間だったなとか、感覚的な違いを私たちはたしかに感じていると思います。ニュートンの時間観だけに囚われる必要もないように思えてきました。この後、アインシュタインの時間観が登場します。

1月27日:読みたい本を気ままに読む読書会

yuさん『獄中シェイクスピア劇団』
 本書はマーガレット アドウッドによるHag-Seedの全訳で、ホガースプレスから刊行されているシェイクスピアシリーズの日本語版第一弾として2020年に訳されたものです。これを読むとシェイクスピアを読む気になるかと聞かれました。語り直しなのでなんとなくの感覚をつかむことはできるかもしれないと思いました。シリーズが訳されたらまた読んでみたいと思います。

 「饗宴」、「清少納言を求めてフィンランドから京都へ」、「「愛」という名のやさしい暴力」どれもお話をお聞きして読んでみたいと思いました。

よしだ『水中の哲学者たち』永井玲衣著
 今日はエッセイのようなところから。心理テストや〇〇占いなんかは、生きることへの意味を付けるものなのではないか、みたいなことが書かれていました。言われてみれば、今日はどんな日とか、あなたは動物でいうと黒豹だからとか、それは今日という日や自分という存在に意味というか道筋みたいなものを付けられていることのように思えます。
 他の方が脳の本を読んでいたのですが、たとえば私たちがものを見るとき、脳が予測をしてそれをみてから細部を認識していく、というようなことをおっしゃっていました。脳は予測をする。占いに予測される。人間と予測というのは、結構な強い結びつきをもつものなのかもしれません。

1月29日:読みたい本を気ままに読む読書会

Soi Tomson『The reason I jump』 by Naoki Higashida (Translated by David Mitchell & Ka Yoshida)
東田直樹著:邦題『自閉症の僕が跳びはねる理由』を英国出身の作家David Mitchellと妻Ka Yoshidaによる英訳版。今回は冒頭のIntroduction (Mitchell)とPreface (Higashida)を読んだ。
Introductionでは自閉症とはある人の心(頭?)の中で逃げ道のない部屋に20チャンネルもの異なったラジオ局が一斉に流れている状態。唯一安らげる瞬間は起きていることに疲弊しきったときのみと表現する。Mitchellには自閉症と診断された息子がおり、親として息子を理解するために足掻いてきたこと、本書に出会うまで、そのあとの気持ちの変化が描かれている。
Prefaceでは13歳の東田直樹自身の自己紹介、自閉症として生きること、学校の先生、母親への感謝、読者へのメッセージが書かれている。

感想:本の冒頭部分、特別なケアを必要とする子供を持つ親としての訳者の言葉に深く共感した。本の内容がどのように展開していくのか楽しみである。しかし、本文をチラ見したところ健常者とおもわれる立場からの質問に答える形で話は進められており、その質問の内容だけ読むとなかなかストレートな問いで少々戸惑っている。13歳の東田はこれらの質問をどのように咀嚼し答えを導びきだしているのだろうか。
冒頭の英文について自分の知らない形容詞や言い回しが使われており勉強になった。

読書会全体の感想:視点を変えることで物事の良い側面、そうでないと思われる側面が逆転すること、または良いも悪いもないということを改めて気づかせてもらいました。

としさん『月と人の歴史と物語』著者:デイヴィッド・ウォームフラッシュ、訳:露久保由美子

 45億年前の月の形成に始まり、歴史に刻まれた数々の「時」に焦点を当てながら、月の来歴を辿っていく物語。著者は、宇宙生物学、宇宙医学研究者。
 天文学に興味を持ち、莫大な本のどれから読めばいいのか分からなかったため、タイトルに興味を持ったこの本を読むことに決めた。

 今回は、紀元前18世紀から紀元前8世紀。
 紀元前18世紀のバビロンのハンムラビ王の時代、「朔望月」と「恒星月」の長さの違いにより、古代シュメール人は29日と30日の太陰暦(朔望月)を交互に使っていた。数十年経つと農業で使われている太陽暦(1年365日)とずれが生じ、様々な都市が13か月目を加えるようになり、帝国に混乱を起こした。紀元前8世紀のバビロニアでは、月の満ち欠けの周期235回が19太陽年とほぼ一致することを発見した。これにより、太陰暦と太陽暦を融合した太陰太陽暦が出来た。(1年を12か月とする12年に、13か月とする7年を特定のタイミングで加え、19年周期で繰り返される)

 この時代に、明治まで使われていた太陰太陽暦が出来たことに驚きました。簡単な歴史が書かれているため言葉以外は読みやすいですが、古代の地域や人物を調べながら読み進めています。中々思うようには進めませんが、やっと5分の1読めました。

 本の内容を話し合いながら聞くことは、新たな発見にも繋がるため、面白いと思いました。皆さん様々な本を読んでいて、知らないこと沢山で興味深かったです。いつも有難うございます。

高橋さん『なぜ、DXは失敗するのか?』
 本を読んで印象に残ったのは、過去の産業革命の例として、100年ほど前のニューヨークでは馬車のメーカーがたくさんあったということ、そして数十年でほとんどなくなってしまったということです。第四次産業革命と位置付けられているDX(デジタルトランスフォーメーション)の内容には至りませんでしたが、これから世界で、日本でどのような技術革新が起きるのか読み取れたらと思います。

 他の方の本も興味深くお聞きしてました。「人は必ず異常な部分を持っている」という一節は、他の方の本の内容にもつながりがあるように思い、個人的な気づきがありました。

よしだ『社会心理学講義』
 今日は、日本は他のアジア諸国などに比べてなぜ一気に欧米化が進んだのか、というテーマのところを読みました。江戸時代にたしかに黒船が襲来したけど植民地にされたわけでもない、他の国々も欧米の先進性は知っていたはずだけど日本の衣替えとも言えるほどの欧米化にはいたっていない、などといった疑問から導き出されたテーマです。
 まだ結論までは読んではいませんが、推察するに、日本は「日本」というものをそれほど強くもっていないことに要因があるのではないかと思っています。宗教も含めて自分たちの文化を固辞するわけでもない、他国と比べて何が優れているなどと意識することもすくない、だから何やらすごそうなものが来たときにすんなり受け入れられてしまう(あくまで推察です)。すこし短絡的かもしれませんが、読み進めて理解を深めていきたいと思います。僕はそういう節操のなさみたいなの、嫌いじゃないです。

1月30日:テーマのある読書会「あいまいさ」

Takashiさん『人間的、あまりに人間的(Ⅰ)』ニーチェ著 ちくま文芸文庫
 本書はニーチェの短文集だ。なかなかパンチが効いている。例えば、
「愛されたいという要求は、自惚れの最たるものである」(P435 )

 今度恋愛ドラマで相手に愛情を要求する場面があれば、自惚れを自覚しているかどうかを見てみたい。自覚のある方が心の機微は細やかだし、ドラマも面白くなりそうだ。

としさん『共に生きるスピリチュアルケア 医療・看護から宗教まで』編著:大村哲夫、瀧口俊子、和田信

 「あいまいさ」がテーマだったので、これを選びました。
 スピリチュアルケアとスピリチュアリティは、決まった定義がなく曖昧です。
 それを、この業界の先生たちがそれぞれの観点からスピリチュアルケアに関して教えてくれます。

 今回ぱっと開いた場所を読みました。3章1の「宗教性とスピリチュアルケア」でした。
 スピリチュアルケアは、身体的、精神的、社会的なペインを総称してトータルペインと言いますが、そのケアになります。ホスピスや緩和ケア、介護、福祉などで使われている言葉です。
 この3章1では、宗教学研究者である上智大の島薗進先生が、それを宗教と掛け合わせて書いてありました。日本のように特定宗教に所属していない人がケアする場合のアプローチは、自助グループやグリーフケア、アートセラピーと考えるといいそうです。

 「あいまいさ」の会で気が付いたのは、私自身が曖昧に物事を理解していることでした。だから、色々説明できないんだと(笑)
 皆さんとお話しすることで色々な気付きがありました。とても有意義な時間が過ごせました。感想を書くことは、自分の考えをまとめるのにも役に立っています。いつも有難うございます。

yuさん『空色勾玉』
 あいまいがテーマ。

 古事記と日本書紀をテーマにしたファンタジー小説を読みました。
 出自が明らかでない主人公のみる夢。

 あいまいであることと、はっきり明らかにすること、あることの良し悪しはないのではないかと考えました。どちからといえば日本はあいまいでそれを良くないとするのは外国からの目線であり、同じでなくてもいいのかなと思いました。

よしだ『時間は存在しない』カルロ・ロヴェッリ著/富永星訳
 今日おもしろかったのは、世界を場の重なりの総和としてみるということ。たとえば万有引力はその名の通り、質量をもつ全ての物体は距離に応じた引力を発生させるという法則であり、その力は周囲の全ての物体に働きます。だから物体がひとつ置かれると、そこだけ空間が凹むようなイメージでその凹みに他の物体が転がっていくように引き寄せられます。でも目の前のたとえば大きな岩に引き寄せられないのは、引力を感じるほどには質量が大きくないから。なんだけれども確実に引力は働いており、目の前の岩だけではなく、横を通過した車も隣にいる人も空間を凹ませるような場を作り出してます。そのような、それぞれの重力場の総和のなかで生きているということです。なんか酔いそう。


 過去の読書感想はこちらに載せています。

読書会参加者に投稿いただいた読書の感想です(2022年10月-)。

 

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(吉田)

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