2022.03.02

読書会の読書感想(3/1-6)

 参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。1日(火)は6名、4日(金)は6名、5日(土)は9名、6日(日)は6名の参加でした(主催者含む)。
 土曜日の「質問「   」について考える時間。」の質問は、

暗闇でしか見えないものは何ですか

田中未知著『質問』(文藝春秋)

でした。

3月1日:読みたい本を気ままに読む読書会

早川麻子さん『親の期待に応えなくていい』鴻上尚史
 「親の期待に応えない≠親を大切にしていない」この本では、コミュニケーション力があるというのは、誰とでもすぐ仲良くなれることではなくて、「お互いが納得するベターな落とし所をみつけること」。親から期待されることが自分が望むことではない場合は、ちゃんとコミュニケーションをとっていくことが大切。親が理解をしてくれるかは置いておいて…。また、親は育ててきてくれているので、自分の特性などをわかってくれてると思うが、全てを知っているわけではないし、必ずしもいいアドバイスができるわけではない。親子だけど、親も子どももそれぞれ別の人間なのだから、他の人に対するのと同じように、話し合ったりしてコミュニケーションをとることが大切だとわかった。

 大西さんのベイトソンの言うダブルバインドが、親子関係にもあるという話になった。別々の本を読んでいるのに、内容の共通する点が出てくるのはおもしろい。

 私は常々読書会の皆さんは色んなことを知っていて、お話も上手で、教養がある方たちだなと感じています。話を聞いて、知らなかったことや考え方を学ばせてもらっています。ありがとうございます。

Soi Tomsonさん『日本はなぜ地球の裏側まで援助するのか』 草野 厚 著
本について:国際協力とは何かを知る、考える本。著者は国際関係、外交、メディアに詳しい政治学者。
日本の世界における国際協力はODA(JICA, 旧JBIC) 、国連拠出金、世銀、草の根、NGO、自衛隊など多岐にわたる。またその国際協力の意義について著者は人道的観点、経済大国(?) としての責任、日本企業への援助、WWⅡの補償、戦後に日本が受けた援助の返報、安保理非常任理事国への選挙活動などがあるという。

本の感想:長年疑問に感じていたのでこの本を手に取った。しかし、援助の構造や種類が複雑で読み進めるのに大変時間がかかっている。日本の財政状況から援助額は年々縮小されているとはいえ、現在も国連拠出金はアメリカ、中国に続き第三位ということに驚きである。経済規模の違いがあるとはいえ、GDPがOECDの平均値よりも低い日本にとって、国際協力にこのような多額の予算を割り当てても大丈夫なのだろうか。身の丈に合ったバランスの良い国際協力という形を新たに模索できないのか(言うは易しではあるが)。一方で、世界の様々な国に行っても日本人は比較的好意的にみられる(例外はあるが)のは長年の献身的な国際協力のおかげだともいえる。

読書会の感想:ユーモアがありシュールで時に残酷な星新一作品。久しぶりに読み返したくなりました。ベイトソンのダブルバインドについて知り、深く自分を反省し、虚無が広がるという考えに恐怖し、親子の関係は友人関係のように対等であるという考えに”仰る通りです”と再び反省した。皆さんの本やご意見を共有させていただきながら教養を深めることを目指し、これからも読書会に参加させていただきます。ありがとうございました。

おおにしさん『デカルトからベイトソン』 モリス・パーマン
 著者は「グレゴリー・ベントソンこそ、デカルト的二元論を超えた科学の全体像を提示できた二十世紀最大の思想家である。」と述べており、本書はベイトソンによる科学認識論のパラダイム・チェンジを論じたものとなっています。(原著の刊行は1981年ですが、復刊リクエストにより最近再刊されました)

 デカルト以降、人々は神と人間、善と悪、聖と俗など2項対立により世界をとらえてきましたが、ベイトソンは自己も神も悪魔も同じネットワークの中に内在し、それぞれが相互作用しているという全体論的世界観を提唱しました。

 ベイドソンを有名にしたのは、ダブルバインドというコミュニケーション障害の研究であり、統合失調症の原因の一つがダブルバインドにあることを提唱しました。現在の精神治療ではベイトソンのコミュニケーション理論が応用されています。

 私とベイトソンとの出会いは、大学生だったころにさかのぼります。当時、精神世界のジャンルでニューエイジ・サイエンスが注目されていて、そこでベイトソンを知り「精神と自然」を読んで感動したことを覚えています。ベイトソンのことは長い間忘れていましたが、ずっと版元品切れだった「精神と自然」が今年になって岩波文庫として刊行されたのを機会にもう一度ベイトソンを学んでみたいと思っています。

よしだ『はてしない物語(上)』ミヒャエル・エンデ著/上田真而子・佐藤真理子訳
 なんとなく、虚無がテーマなのかなと思って読んでいます。同著者の本である『モモ』では近代のシステム化されすぎた社会への批判がなされていました。この本では、虚無感を生み出す社会への批判や警鐘なのでしょうか。
 読書会では他の方が、想像力がなくなったり現実に呑み込まれすぎたりすると虚無が生まれるということをおっしゃっていて共感できました。想像で生み出すのは虚実の世界。現実と虚実、人間にはどちらも大事ということなのでしょう。その2つの世界をうまく行き来して生きることがバランスがいい状態なような気がします。でも、虚実がないと生きていけないなんて、人間ってなんだか変だなぁ。不思議です。

3月4日:読みたい本を気ままに読む読書会

yuさん『問いからはじまる哲学入門』
 本書は、人間の言語活動である問いを視座として哲学の基本問題を概説している。
 問いには答えがあるでしょうか?とはじめにくる。
 考えても仕方のないようなことをなぜ考えるのかを考えることができるような気もしました。

3月5日:読みたい本を気ままに読む読書会

小澤さん『線の冒険』
 本書は線をテーマとして歴史的なものを取り扱っている本です。
 著者が歴史家ではなく、デザイナーということもあり、線に関する図表が散りばめられていました。図表には書いた人の思考が出てくるのでそれを見るだけでも楽しいです。

 今回読んだ章は「垂直の快感と恐怖」。
 垂直に上がる方向にはゴシック建築、落ちる方向はギロチンや空爆の歴史の話の話などがありました。読んでいる途中は気づかなったですが、上がってい方向は快感で落ちていく方向は恐怖という構成になっていると感想をいうときに気づきました。

サイハさん『はじめまして現代川柳』
 私が詩歌や文学に触れる理由として、他の方からの受け売りですが「自分の中に窓を作るため」というのがあります。
 その窓は他者を知るためのものでもあり自分自身の内面や思考を改めて掬い出すものでもありますが、「今立っている世界から外れた異界」に繋がる接続点でもあると解釈しています。

『はじめまして現代川柳』
 この本には現代川柳の作者三十五人の作品をそれぞれ七十六句ずつ収録しています。
 どの句も日常から足を踏み外してしまったような、十七字で世界の見え方が少しずれてしまうような魅力にあふれています。
 読み終えた後は自分の中に合計二千六百六十個の大切な窓が出来るような句集です。

 他の方に紹介して頂いた本では、まず乱歩の圧倒的な物語構築力、あらすじを聞いているだけで小説の光景が目に浮かぶようでわくわくしました。
 仏教・禅の本からは現実世界と浄土とに同時に生きていた人のお話がとても興味深く、これまで深く関心を抱いていなかった仏教の部門に入る糸口を見つけたような気持ちになりました。
 河合隼雄・吉本ばななの対談本からは「対話は必ずしも結果や解決を出さなければならないものではない」「コミュニケーションの目的は論破ではない」「アウトプットの重要性」などの話題が弾み、自分自身を省みるに限らず、保護者や教育者として子供たちの発育環境を考える機会になりました。

よしだ『はてしない物語(上)』ミヒャエル・エンデ著/上田真而子・佐藤真理子訳
 主人公はファンタジーを読んでいる。つまり本の中で本を読んでいる。ファンタジーに出てくる少年の勇敢さに時には劣等感を覚え時には勇気をもらう。主人公は想像力が豊か(という設定)だからきっとファンタジーの不思議な世界を、自分のことのように体験している。本の中で本を読んでいる主人公の話を読みながら僕は、本を読むことは実体験と遜色のないものに思えてきた。つまり本を読むことは何かの手段というわけでもない。僕にとっての「時間」そのものなのだと思う。
 読書会の前の雑談の時間にVRやメタバースの話になった。たぶん今の価値観だと仮想現実は現実に劣るもの、現実には勝てないものと考える人がほとんどではないだろうか。しかし仮想現実で自由に空を飛べたらどうだろうか、昔憧れたヒーローの必殺技をくり出せたらどうだろうか。しかも自分の意思と連動してだ。それは自分にとってのもう一つの現実になっていくのだろうと、なんだか素直に思えてしまった。

3月6日:読みたい本を気ままに読む読書会

としさん『日帰り宇宙旅行 プラネタリウム散歩』
日帰り宇宙旅行 プラネタリウム散歩
マーブルブックス:編

 プラネタリウムは旧東ドイツで(約100年前)生まれ、日本初のプラネタリウム施設は大阪で(約60年前)誕生した。今やプラネタリウム大国になった日本、10年前の本で古いですが、当時のおすすめ情報とともに気になるプラネタリウムをピックアップしました。
 プラネタリウムの基本構造は、光学式投影機、コンソール、デジタル映像システム、音響システム、ドームに座席となっています。座席の配列は、同心円と一方向の2種類。ドームの形も、傾斜型と水平型の2種類。ドームが半円状なのは、私たちの目から見るのと同じように本物の空を再現するためだそうです。光学式投影機は、惑星投影機と恒星球で構成されていて、装置を分離することで、地球以外の惑星から見た太陽系惑星の動きを表現することが可能になるそうです。
 世界最大級のプラネタリウムは愛知県の名古屋市科学館。水平型ドームで、座席は円形状350席あります。座席数だけでも大きいのが分かります。
 ちょっと変わったプラネタリウム紹介では、東京ではお寺でプラネタリウム、京都では豪華客船の中、また、コンサートホールや公民館が一緒になった複合施設、空港、バー、高速のSA。あると思わないところにあるというのは、本当に不思議ですね。
 プラネタリウムは、公営もあれば、民営のものもあり、規模もいろいろ。大きいドームのほうが映し出される星は遠くに見えるため実際の星空に近く感じられるそうです。ピックアップした施設へ機会があれば行ってみたいと思いました。

 今回の読書会では、聴覚の話が印象的でした。普段の生活では、視覚よりも聴覚を特に意識していることに気が付きました。聞こえないのが私には一番辛いかもしれない。

mtさん『クオリアはどこからくるのか?』土屋尚嗣著
 
従来、哲学で扱ってきたクオリアを、科学によってアプローチするという内容に興味を持ち、読んでみることにしました。

 本書は、統合情報理論を紹介するためのものといえると思います。新しい研究領域は2005年に提起され、現状、なにがわかっているのか、わかっていないのか、今後、どのような研究を行うのかが、整理され述べられています。

 ロゴス的なものについて明らかにできる可能性はあると思うのですが、クオリアはどうかなと思いました。

よしだ『はてしない物語(上)』ミヒャエル・エンデ著/上田真而子・佐藤真理子訳
 自分の読書の感想ではありませんが、他の方の本で音楽セラピーの話は興味深かったです。
 読書会の前の「質問「   」について考える時間。」の質問は、「暗闇でしか見えないものは何ですか」でした。そこで話されてことを思い返しなながら聴くことができました。
 音に興味が出てきました。またその一方で、感覚器のなかでも強大な権力を有する視覚にも興味が出てきました。目が大きな地位にあるからこそ、それが断たれた暗闇では普段見えていないものが見えてくるのではないかと思いました。


 過去の読書感想はこちらに載せています。

読書会参加者に投稿いただいた読書の感想です(2022年10月-)。

 

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(吉田)

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