参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。13日(水)は2名、15日(金)は3名、16日(土)は4名、17日(日)は7名の参加でした(主催者含む)。
土曜日の「質問「 」について考える時間。」の質問は、
世の中で最も公平に分配されているものは何ですか
田中未知著『質問』(文藝春秋)
でした。
4月13日:読みたい本を気ままに読む読書会
あじこさん『モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語』
イタリアのベネツィアにある古書店の店主から、「自分の祖先が住んでいた村は皆、本の行商で生活をしていたんだ」ということを聞いて、現地に行って話を聞いているうちに、著者はその村が大好きになっていきます。
その村では、出稼ぎの行き帰りに頼まれて本を探してきて売ったり… そうこうしているうちに本の行商が本業になったようです。
行商人たちは文字が読めなかったにもかかわらず、要望に合った本を探しあて、お客さんに届けたそうです。
雑談の中で、大学のはじまりについて聞きましたが、あたりまえに享受しているものも、誰かの「これをどうしても…」という情熱や、「こうなったらいいんじゃないか」という工夫で今の形になっているということを確認できました。ふだんはすっかり忘れていますが。
よしだ『はてしない物語(下)』ミヒャエル・エンデ著/上田真而子・佐藤真理子訳
読書会後もすこし読み進めて、、主人公はファンタジーの世界から現実の世界へ戻ろうとするのだけどなかなか戻れないというシーンでした。僕たちの世界でいうと足がどうしてもそちらに向かわない、学校に行かなければいけないのはわかっているけどどうしても朝起きれないという感じでしょうか。
主人公は、一直線に現実世界に戻る道を見つけることを諦めて、ある人のところへ向かうことを決めます。その人はきっとなにかを教えてくれるはずだと信じて。
物事を厳しく捉えるならば、人に頼らずに自分で考えて、意志を強くもって、ただ一直線にそこに向かうのみ、と言われちゃうかもしれません。しかしその人が目的地に着けばいいということだけ考えれば道のりはどうであってもいいはず。真っ直ぐに向かうことはそのときの主人公には合っていなかった、できない方法だったということなのだと思います。だいぶ脚色していると思いますが、そんなこともあるねと思いながら読んでいます。
4月15日:読みたい本を気ままに読む読書会
よしだ『はてしない物語(下)』ミヒャエル・エンデ著/上田真而子・佐藤真理子訳
主人公は魔術師の手下・甲冑軍団(のようなもの)と戦い勝利します。魔術師は抵抗するでもなくあなた様のもとに仕えますとあっさり降伏しました。
魔術師は主人公のもとに実際に仕え、よいしょするような態度や言動でいます。その魔術師に主人公は聞きました。手下の甲冑軍団はなぜ中身が空なのに動いているのか、と。魔術師曰く、私の意志の力で動いている、中身が空だから私の意のままになる。
すこし話は戻って、この物語では主人公の望みが叶う度に記憶がひとつ消えるという設定になっています。たとえば、容姿がかっこよくなりたいという望みが叶えば、かっこよくなかった自分に対する記憶が消えました。
魔術師は甲冑軍団を中身が空だから意のままに操ることができました。これは別の見方をすると相手の中身を空にしてしまうことが自分の意のままに操るための第一歩とも言えます。そして魔術師は主人公をよいしょしています。
時代劇などを思い出せば、若い殿様が老獪な側近に懐柔されて操られていくことがあるので、主人公と魔術師はそんな関係になっていくのではないかと想像できます。加えて、望みが叶うことで記憶が消えることも中身を無くしてことを意味しているように推測できますが、望みが叶って過去の記憶が消えることがすなわち中身が無くなり誰かに操られていくことを意味するのかというと、まだそれは合点がいっていません。ただの過ぎた推測なのかもしれませんが、先を読んで確かめていきたいと思います。
4月17日:読みたい本を気ままに読む読書会
よしだ『奇跡のリンゴ』石川拓治著
無農薬・無肥料のリンゴをつくることに成功した人の物語です。著者はご本人ではなくライターの方です。
無農薬・無肥料をリンゴで達成することは驚くほど難しく、無農薬にした途端に虫や病気にやられて葉は変色して落ちていき、花も実も全くならなくなったそうです。しかし取り憑かれたように試行錯誤し、なんとか続けていくなかで、8年目の春にようやく2つの実がなりました。つまりそれまでの間は全く収穫なし、収入なしだったのです。
あらゆる試行錯誤が全くだめだったなかで実をつけられるようになったきっかけは、「もうこれまでだ」と夜中に森を徘徊するなかで見つけた自然に自生するどんぐりの木でした。どんぐりの木は農薬も肥料もないのに葉は虫や病気にやられることなく、実をならせている。そのどんぐりの木だけではなく他の自然の木々や葉や実も同じく無農薬で無肥料。なぜそんなことに気づかなかったのかと思うかもしれませんが、没頭するとはそういうことなのかもしれません。
それから自分のリンゴ畑に生態系を再現していったのだと私は解釈しました。でも生態系はとても複雑で、自分でコントロールできるようなものでもありません。菌や虫や雑草に、この畑ではこういう風に活動しなさいと命令することなどできないからです。よく観察しよく知り、どうにか成ることができたリンゴを分けてもらい自分の生計をたてる。自分も生きていく。人間も生態系の一部となることではじめて無農薬・無肥料のリンゴができたのだと思いました。
こういった不可能を可能にしたような人に対してどう思うのかと考えていました。すごいとも尊敬とも違う。ありがたい、なのではないかというのが今日思ったところです。
過去の読書感想はこちらに載せています。
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(吉田)