2022.09.02

読書会の読書感想(8/30-31)

 参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。30日(火)は4名、31日(水)は9名の参加でした(主催者含む)。

8月30日:読みたい本を気ままに読む読書会

よしだ『自由からの逃走』エーリッヒ・フロム著/日高六郎訳
 矛盾するようですが、社会が個人主義・自由主義的な方向に向かうのであれば、同時に個人にとっての居場所というか共同体が必要になってくるのだと読んでいて思いました。もっというと、個人主義と自己責任とは相性が悪く、自由はやさしさとセットでないと成り立たないというか、そんなことを感じました。ちなみにここでいう自己責任とは、周囲が個人に責任を負わせようとすることを指しており、個人が自分に対して責任をもつことを指してはいません。
 著者のフロムは、人は食欲などの生理的な要求と同じくらい、孤独を恐れ避けようとする要求が強いといいます。孤独を避けるには、ただ物理的に人が近くにいればいいということではなく、精神的なつながりを感じられる存在が必要であるといいます。競争や自己責任は孤独を招くように思います。競争や自己責任がすなわち個人主義なのではないとしても、個人で生きるということは社会と個人との関係や個人と個人との関係があいまいでゆらぎのあるものになっていくことを意味するとは思います。だからそうした不安定さを包含する何かが必要な気がします。
 この本のテーマは、なぜ人は自由を捨ててナチズムのような全体主義に傾倒してしまったのか、というものです。個人にいわゆる強さのようなものを求めるだけでは、どこかで暴走とも思えるようなことが起こるということなのかもしれません。今の社会はどこか片手落ちな感じがしてきました。

8月31日:読みたい本を気ままに読む読書会

つやまさん『夏の嘘』ベルンハルト・シュリンク
 今日の読書会では「対話」に関する話題が多かった気がする。「持つこと」を重視する人の会話は議論的になり、「あること」を重視する人の会話は対話的になる(『生きるということ』)。「男」対「女」の二項対立を前提として戦うのではなく、「男」「女」とカテゴライズすることが妥当なのかを吟味するところから解決策を探る(『ジェンダー・トラブル』)。それぞれの意見が異なっていても、継続的な場を持つことで、妥協せずとも新たな認識が生まれ、それは生きる力になる(『対話のことば』)
 私が読んだのは『夏の嘘』という短編集の中の『リューゲン島のヨハン・セバスティアン・バッハ』という、対話が成り立たない父と息子の物語。感情的な交流を拒む父に長年わだかまりを抱えている息子が、唯一の共通する趣味であるバッハのコンサートが開かれる島への旅行に父を誘う。またとない機会に父の個人的なことを知りたいと会話を試みるが、相変わらず父は多くを語ろうとせず、息子は不満を募らせていく。この短編集は「嘘」や「秘密」が共通のテーマになっているが、誰にでも簡単には人に明かせない秘密があり、対話も強要すると暴力性を持ってしまうのかもしれない、というようなことを考えさせられる。バッハはどんな演奏家の解釈によっても揺るがない、という父親の言葉には何か決意のような強さを感じた。

tetsuさん『対話のことば オープンダイアローグに学ぶ問題解消のための対話の心得』井庭 崇・長井 雅史 著
 
今日は、3つの枠組みの最後にあたる「≪新たな理解≫を一緒に生み出す」のところの理解が難しかったためもう一度読みなおしました。No.22「発生時の立ち上げ」(問題が起きているさなかで)、No.23「連続的な実施」(何度も頻繁に)、No.24「一貫した関わり」(同じメンバーでかかわる)には治療的文脈が色濃いように感じたのですが、参加者の方から「移ろいやすい現代だからこそ変わらないメンバーで話し合うことの意味は大きいように思う」とのご意見をいただいたことで少し見方が変わりました。患者や家族を想定しなくても、誰もが大なり小なり生きづらさを抱えて日々を過ごしているのだと思います。聞いてもらいたいことができたときに、同じ顔触れで時間をかけて互いにこの今について話し尽すことができたなら、たしかにその場のみんなにとって未来を生き抜くための特別な体験になるように思います。日常的にちょっと話がしたいと思ったときに立ち寄れる場所があるといいなと思いました。
 もう1つ、対話とは別に本書で関心を持ったのが「パターン・ランゲージ」という手法です。「経験則」「実践知」「センス」などと表現されるよりよい実践は他者に共有することが難しいのですが、パターン・ランゲージはその本質を抽象化して「言葉」として表現することで他者と共有可能にするもので、本書ではその手法に基づいてオープンダイアローグの本質を30の言葉にしています。それは、「いうならば、理念とマニュアル(行動指示、操作手順)の『中空』を結ぶ『言葉たち』」(P.94)であるとされています。
 実践領域においては理念に立ち返りながら日々自らの行動を起こすことを求められますが、熟達者には「経験則」でできても経験の浅い人にとってはどのように行動で表現すればいいのかがわかりづらく、かといってマニュアルでは理念が忘れ去れて行動自体が目的化してしまいがちです。実践領域に身を置く立場として、望ましい考え方や在り方をチェックリスト形式でまとめようとしたことがあったのですがなかなか難しく、まさにこの壁にぶち当たっていたのだと認識することができました。パターン・ランゲージはそれを乗り越えるためのコツを示してくれるのではないかと期待しています。この機会にパターン・ランゲージの書籍にも手を伸ばしてみたいと思います。


 過去の読書感想はこちらに載せています。

読書会参加者に投稿いただいた読書の感想です(2022年10月-)。

 

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