2023.04.03

読書会の読書感想(3/28-4/2)

 参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。28日(火/午前)は4名、29日(水/夜)は5名、1日(土/午前)は14名、2日(日/午前)は8名、2日(日/夜)は8名の参加でした(主催者含む)。
 土曜日の「質問「   」について考える時間。」の質問は、

闇に光る猫の眼の光で書物を読めますか

田中未知著『質問』(文藝春秋)

でした。

3月28日(火/午前):読みたい本を気ままに読む読書会

fumi2さん『100分de名著 カント 純粋理性批判』
カントの著書そのものが難しく、手始めに全体像を掴むためこの入門書を手にしました。
人の認識の仕方を吟味しつくすことで、その可能性と限界を見極めんとしたカント。
その思想は現代の国際連盟、国連へと結び付く(まだまだ不完全だが)。
決して性善説ではないだけに理性、道徳そして永遠平和という言葉に説得力がありました。

よしださん『銃・病原菌・鉄(上)』ジャレド・ダイアモンド著/倉骨彰訳
 今日はまだまだプロローグを読んでいましたが、印象的だったのはコロンブスがアメリカ大陸を発見した時、コロンブスの世界とアメリカ大陸の世界という、まったく異なる2つの世界が交わったというところです。しかし残念なことに先住民は奴隷とされ現地の生活は西洋の文明によって消されていきます。
 同じ星にいる同じ種の生物が、まったく異なる世界を築いている、その2つが出合う。これはロマンだろ、と思うほどにその後が残念に思います。でも、自分がコロンブス側にいたら、支配したいと思うかどうか以前に、(得体の知れない、しかしそれはお互いさま)現地人を怖いと思うだろうなとも。支配や搾取などというものは、利得を得たいなどという便益だけでは語れない行為なのだろうななんてことも思いました。

3月29日(水/夜):読みたい本を気ままに読む読書会

yuさん『続 横道世之介』 吉田修一
「横道世之介」を読んで、なんとなく世之介ロス?になっていたので続編を読みました。横道世之介の最後に起きた出来事は小説の中のフィクションでなくて起きたことなのでしょうか。受け入れるには時間がかかりそうです。
 続編は、世之介の周辺にいた人々のその後、コモロンのその後、あの時空港で世之介と3歳の男の子に見送りをしてもらってから27年後のところを読みました。
大学進学で東京に上京してからの人生を追いかけたので、その後がとても気になりました。
新学期の季節に。

皆でした話はchatgptの話。ラケットに過ぎないのではないか。規制が必要か。やはり人工知能の枠を出ないなど。話はつきませんでした。

Soiさん『文明崩壊・下』ジャレドダイアモンド
<本の感想>
作者が本文執筆中にはアンコールワットの文明崩壊について研究できなかったが、その後現地に赴き調査研究を行った。今回はその追記の部分を読んだ。
やはりここでも他の事例同様に、崩壊に向かう理由として、人的理由、環境的理由が主な原因らしい。アンコールワットのあるシェムリアップは一見恵まれた地、気候に思えても実際には多くの問題があったらしい。また統治方針によって市民の健康を損ねたり、不満を募らせたりと文明崩壊へのある程度パターンに当てはめられる。崩壊前の当事者たちはこの崩壊への要因を本当に予想できなかったのだろうか、もしくは見たくなかったのか。と毎章ごとに考える読書となった。

<読書会の感想>
ChatGPTについて皆さんの向き合い方を学んだり自分なりに考えるとても機会となった。
中でもこの技術は”構造力学”でいう”作用点”のような使い方をしていきたい(理解が間違っていたら申し訳ない)という意見があり、その通りだと思った。一方で支点となる自分のリテラシーは?! まずはその技術とある程度お友達になる努力をしたいと思った。
などなど思っていたところ、ニュースで”GPT-4以上の開発を6ヶ月停止要求の署名運動”とのこと。AIの世界に精通している方々もこの現象は社会にとってリスクを含むと感じているのでしょう。

文明が崩壊する過程でもこのように異議や脅威を唱える人々はきっといただろう。やはり大切なのはそのことを自分の事のように汲み取ろうとする個人個人のリテラシーの高さなのではないかなあなんてことも感じました。

tetsuさん『「気づく」とはどういうことか』 山鳥重
こころは知性・感情・意志の三要素からなるという「知情意論」の考えが、かの有名な漱石の『草枕』の冒頭に使われているという箇所が印象に残りました。

「山路を登りながら、こう考えた。
(知)智に働けば角が立つ。
(情)情に棹させば流される。
(意)意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい。」

世間を生きる上では、知性・感情・意志のどれに偏っても生きづらい、あるいはバランスが大事という「こころのありよう」を表現した名文だったのだなと解釈しました。
ちなみにこの知情意論は今の心理学的にはお蔵入りだそうです。

また、他の参加者の方の本の話題では、ゴッホの登場によって絵を描くことは職業ではなく生き方になった、絵は結果に過ぎないというお話が心に残りました。今日もありがとうございました。

4月1日(土/午前):読みたい本を気ままに読む読書会

恵子さん『沈まぬ太陽 御巣鷹山編』
3ルーム 難しい本を読んでいらっしゃるんだなと!

原有輝さん『共同幻想論』
本の内容とは関係ないですが、読書会後の雑談で、司会進行役を募集しているらしいので、いろいろとその話で持ち上がり、興味を持ちました。僕はどちらかというと読書会では問題児なので、難しいと思いますが(笑)
やりたい人は当番制らしいので、主催者に相談してもらえばいいようです。

tetsuさん『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』 ブレイディみかこ/著
今日は、「6 再び、母ちゃんの国にて」と「7 グッド・ラックの季節」を読み進めました。「日本は移民国家ではないが、これから英国の後を追うようになる」という一文にもあるように、英国で暮らすブレイディさん一家をめぐる出来事はほんの少し先のこの国の姿でもあると思います。また、観光客も従業員も外国の方が多くなっている湯布院の温泉街の話を読んで、軽い驚きをもって捉えている自分自身に気づき、それだけ同質性の高い社会に身を置いてきたのだなと振り返るなどしました。
ほかの参加者の方が読まれていた中では、『ハムレット』にいくつかのバージョンがあり、現在知られている作品に変遷していったと思われるという話があって興味深かったです。今日もありがとうございました。

yukiko ohabaさん『麒麟の翼』東野圭吾
最近、ハマっている東野圭吾の推理小説を読んでみました。

推理小説の楽しさは個々に起こっているパズルのピースのような出来事が
クライマックスに向けて一つの物語となって繋がっていく楽しさと
最初の章では分からない、
次の章は?次の章でも?その先は?どう繋がる?
と推理していく楽しさで。

先の分からない現代も推理小説を読むように
何が繋がって、どういう物語になる?と
ワクワクドキドキしながら待っていれば、
案外、素晴らしいストーリーが現れたりするかもよ?
と思えたりするのでした。

4月2日(日/午前):読みたい本を気ままに読む読書会

Takashiさん『ハリウッド映画で読む世界覇権国アメリカ』副島隆彦
 私はあまり映画を見ないので、どの映画が面白いのかを教えてもらうために買った本だったが、予想していた以上に本そのものが面白かった。映画の解説に沿ってアメリカ社会の近・現代史が端的に分析されている。映画そっちのけで読んでしまいそうだ。

tetsuさん『ティク・ナット・ハンの 般若心経』 馬籠久美子 訳
今日読んだ第十一章では、眼で見ることは「目」という感覚器官だけでは成立せず、感覚器官の対象(コップなど)があってはじめて「視覚」という意識が成立するという十八界の概念が説明されていました。ここまで繰り返し述べられてきた 「一つの領域は他の領域とかかわりあう中でしか存在し得ない」というインタービーイング(相互存在)の思想にもだいぶなじんできたように感じています。

また、 見る行為は眼と対象によって引き起こされる働きであると考えるとき、見る行為は「私の内側」で起こっている過程であるとも言えるのではないか、つまり、今話題の「中動態」にも通低するところがあると感じているという感想をシェアさせていただきました。みなさんからは、どんな状況であっても主体でいることができるという坂本龍一さんのエピソードや、認知科学的知見としてオートポイエーシスの概念の紹介、「叱る・叱られる」は中動態として捉えることができるのかといった興味深い問いかけをいただき、今もよい意味でのもやもやが続いています。

私たちの物事の捉え方は、言語体系によって規定されるところがあります。今の能動態・ 受動態の二項対立の文法においては、「私が意思をもってその行為に及んだ」という責任の所在を明らかにする働きがあり、弱い立場や苦しい状況に置かれている人ほど追い詰められる窮屈な感じがしています。「叱る・叱られる」とは別に、「叱るりら(仮称)」という中動態があれば世界はもう少し生きやすくなるのではないか、などととりとめのないことを考えるなどしました。

他の参加者の方が読まれた本はどれも興味深かったですが、特に『燃えつきた地図』(安部公房著)は本も映画も気になりました!今日もありがとうございました。

4月2日(日/夜):読みたい本を気ままに読む読書会

Soiさん『Kim Jiyoung born 1982』 Cho Nam-Joo
<本について>
1982年に韓国にて生まれたある女性の物語。今回は幼少期から思春期にかけて読んだ。
1970年代、80年代当時男児を授かることがその家に繁栄をもたらすと考えられていたそうだ。結果妊娠時に選別が行われ、ある時期男児と女児の人口の比率の差が不自然に大きくなったという。
最近生物進化や遺伝子に関する本を読んでいた影響か、種を残すことが目的である遺伝子の振る舞いに反する行動をなぜ人間は行うのだろうか。もしくは男性が多い方が遺伝子にとって都合が良い戦略だったのか。
<読書会について>
ゴールデンカムイの本について他の参加者さんより教えていただいた。以前より興味があったので、是非読んでみたいと思った。

yuさん『説き伏せられて』ジェーン・オースティン
1770年代のイギリスの女性作家。「高慢と偏見」の映画を見たことがあり小説を読むのは初めてです。高慢と偏見、作者は22歳の時に書いたと後書きにあり驚きました。今日読んだ作品は作者の最後の作品です。身分違いの恋愛かと思いきや8年で立場が逆転しました。人は未来はどうなるかわからないものだなと思いながら読みました。身分や家計や容姿って気にしすぎるとね。

渡り鳥のエッセイが話題に出て、ヒマラヤを超えてるって、ヒマラヤが隆起する以前から渡り鳥は飛んでいたって壮大な話が印象に残りました。

さとりさん『燃えよ剣』(司馬遼太郎)
「1982年生まれ、キムジヨン」自分自身が著書とまさに同じ世代の「団塊ジュニア」です。社会的な動きで韓国と日本の共通点と相違点があったことをご紹介いただきました。持っていた印象と違う内容ということで、読んでみたいと思いました。
「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」特に日本は美の部分が弱いこと、松田の会長が従業員の協調に大切な理念「魂動」を見つけるのに1年掛かったという話がありました。カーオブザイヤーを取得できるまでに意識改革をできたのは人ベースなのかなと思いました。
「燃えよ剣」序盤の他流派との果たし合いの部分で躍動感のある文章を楽しみました。ゴールデンカムイから土方歳三に関心を持ち、彼のかっこいい生き方のルーツを見てみたいという気持ちで読んでいます。
「連帯論」5種類の連帯の形態があり、ローティ(哲学者,US)の考え方を紹介してもらいました。屈辱の感情を基盤にして大きなコミュニティでの連帯を作っているという考え方にはびっくりしました。少し深く考えてみたい主題だと刺激を受けました。


 過去の読書感想はこちらに載せています。

読書会参加者に投稿いただいた読書の感想です(2022年10月-)。

 

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