参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。22日(水/午前)は4名、24日(金/夜)は4名、25日(土/午前)は5名、26日(日/夜)は3名の参加でした(主催者含む)。
11月22日(水/午前):読みたい本を気ままに読む読書会
よしださん『労働の思想史 哲学者は働くことをどう考えてきたのか』中山元著
今日はマルクスのところを読みました。
全体として、労働は衣食住の手段ではなく本来は人間としての目的であるのだという前提で論が進められています。どういうことかと解釈をすると、何か食べたいと思ったときに、どこならば獲得できるかあるいはどうすればよりおいしいものがたくさん育てられるかと考えます。そして、自分のなかで学習し「こうなのではないか」という仮説をたてて試してみて、時には失敗しながらもうまくいくこともあり、どんどんいい食べ物の得方を身につけていきます。そして実際に得たものを食べ物として食べることができます。ときには道具も生み出し、それは自分の理性を表出させたものであるともいえ、自己表現であるとも言えるかもしれません。仲間とも協業し、それ自体が喜びです。このように労働とは本来、自分のなかの表現であり仲間との協調の創出のきっかけでもあり、当然のことながら労働によって得られたもので自分は生きていきます。
しかし産業革命以降は資本家の誕生や分業の進展により、限られた範囲の仕事をするにとどまり、生産したものは自分で活用するのではなく召し上げられてお金だけが渡されます。他者は仲間というよりも競い合う対象になり、協調も生まれないということです。
マルクスはこのような労働環境において労働者による革命が起きるだろうと考えたのだと思います。そして必要なものを自分たちで考え創出していくコミュニズムという考えに落ち着くだろうと。しかし今はそうなっているようにはあまり思えません。
なぜそうならないのか疑問が湧きました。一つには国家という大きな集団単位が必要で、それを維持するのに税金のような仕組みは必要だったのかもしれません。国家が必要なのは敵が強大になれば自分たちも集団として大きく強大にならなければならなかったからでしょうか。二つには、企業も大きくなければ出来ない仕事が出てきたからかもしれません。鉱山開発をするとか発電所を作るとかは、個人では出来ず、集団を形成する必要があります。そこに集まったリソースは誰かが管理する必要があり、それをうまく扱える人が権力を持つようになったのかもしれません。
では、誰かが権力をもち搾取が生じないようにすればいいだけなのか。そんな気もするしそんな単純な話ではない気もします。コモン・コミュニズムという考えに則って、それぞれが必要なものを考えて、ときには話し合いで協力関係を結びながら、生産者と消費者が同一ななかで生産の恩恵を自ら享受するというシンプルな図式が成り立つのか。それでは出来ないことがあるから今のかたちがあるのではないか、そんな疑問が湧いてきました。
11月25日(土/午前):ハンナ・アレント『人間の条件』のプロローグを一緒に読む会
yuさん
人間の条件 (ちくま学芸文庫 ) より数段分厚くなって新刊がでている。人間の条件は難しいよと言われていて、ちくまで挫折していました。
本日はプロローグの一部を12名くらいで共有しました。
読んでもなかなか頭に入ってきにくいアーレントに触れる時間を作るという意味において貴重だったと思いました。
よしださん
今回は一度じっくり読んだことがある方の補足説明を交えながらじっくりゆっくり『人間の条件』のプロローグを読む会でした。
僕もプロローグまでは一人で読んだことがあったのですが抽象的で、その意味するところまでは理解が至らずただ字面を追っただけな感じで積読になっていました。補足があることで意味が分かりおもしろいなと思うことができました。
人間というのは常にその枠組み自体を自らの手で更新し続けてきたのだなと思いました。
補足が入る・一冊の本を一緒に読む読書会はあまり実施されたことがなく、今後も試行錯誤が続きそうです。いつもとは違う体験ができる会だったので、今後も続いていければと思いましたし、より楽しいものにしていきたいと思いました。
11月25日(土/午前):読みたい本を気ままに読む読書会
yuさん『知と愛』ヘルマン・ヘッセ
原題が「ナルチスとゴルトムント」人の氏名がタイトルとなっている小説です。460pくらい。精神に生きた人と愛と欲望・芸術に生きた人。二人の子供時代から老年に至るまでが描かれています。読後感が美しい人生の物語を読んだなという気になりました。詩人の小説で栗の木やカエデなど自然豊かで文章表現も美しいなと感じました。今日は再読でゴルトムントが修道院に入り仲間と禁忌をおかすことに躊躇しながらも行動を共にする場面を読みました。
他の方は哲学に関する本を読んでありました。ヘッセの小説の中にも人生とはがふんだんに盛り込まれていた気がしました。
Takashiさん『パラレルな知性』(鷲田清一・著)
本書は、異なる専門性と専門性、あるいは専門性と一般常識を如何に擦り合わせるかというヒントについて書かれたエッセイだ。
科学技術の進歩と一般常識との乖離を埋めることは大事だが、一方で分かりやすくするために断言できない部分を断言してしまうのも良くない気がする。複雑なことは時間をかけて理解し合うしかないのかもしれない。
11月26日(日/夜):読みたい本を気ままに読む読書会
yuさん『ダブリナーズ』ジェイムズ・ジョイス
ダブリン市民を過去に読もうとして挫折していた。ユリシーズも挫折している。
今日は、恐る恐る「カーレースが終わって」を少し読んだ。「群衆は虐げられたるものたちの声をあげた。」ダブリンでの欧州の豪華なカーレースは何を?
対話の時間に、一番好きな小説は何かという話になりました。また資本主義の3つの要素など。思いもよらない3つでした。
過去の読書感想はこちらに載せています。
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