2023.12.04

読書会の読書感想(11/28-12/3)

 参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。28日(火/午前)は2名、3日(日/午前)は10名、3日(日/夜)は3名の参加でした(主催者含む)。

11月28日(火/午前):読みたい本を気ままに読む読書会

よしださん『労働の思想史 哲学者は働くことをどう考えてきたのか』中山元著
 フランス革命あたりの哲学者の労働に関する考えが紹介されていました。それを紹介しつつ、著者の批判的思考も展開されています。
 なんとなく、社会的な方向性とか革命による変革とか、そういう全体感も必要なのだと思いますが、もっと自分のこととか周辺をどうしていくかみたいな身近なところで生きていく思考みたいなことも大事な気がしました。産業革命以降は資本家に雇われて長時間労働を強いられていて、その仕事・職業しかできない世界観だったのだと思います。その頃に比べれば、まだ一般的ではないとは言え副業を推奨する企業が出てきたり、個人で何かを仕入れて作って売ったり、個人の考えを発信したりすることもできます。社会の改革みたいなことを志向したり待っていたりすると対象が大き過ぎたり時間がかかり過ぎたりするけど、ある種の自己中心的な感じで求める生活や世界を周辺につくっていくこともできるのではないかなんて。
 いずれにしても200年前からはずいぶんいい世界になったんだなと思いながら読んでいます。

12月3日(日/午前):ハンナ・アレント『人間の条件』のプロローグを一緒に読む会

yuさん
プロローグを。主催が画面に言葉を写してくださり皆で考えました。「科学は人間が夢の中で予見していたことを実現して、それが荒唐無稽でも無益でもないことを・・・」参加者から意見を伺ったりして進められました。地球から月へ。スケールの大きい話だと思います。実際には、地球生まれの物体の発射は、目撃していないから言われるがままですが。

12月3日(日/午前):読みたい本を気ままに読む読書会

yuさん『ウォーターランド』グレアム・スウィフト
2002年に訳本が出たイギリスの小説です。殺人ミステリーであり、一族の歴史であり、イングランドの水濠フェンズの土地の記録。今日は、語り手が10歳の頃の父との出来事を回想している場面でした。父はうなぎをとる罠を仕掛けている。父の管理する水門に、何かが流れ着いてくる。不吉な空気が漂っていて物語だとわかっているはずなのになぜこうもハラハラするのかと思いました。

感想のシェアでは学校教育と格差や、サイエンスとか科学技術の場でコミュニケーションって可能だろうかなどと書かれた本についてなど。

Takashiさん『パラレルな知性』鷲田清一
「コミュニケーションの最低限の条件は、相手の話を聞くということである。いや、聞くだけではない。(中略)相手の話を聞いて、自らの意見も変える覚悟がなければ、コミュニケーションとはいえない。しかし、科学技術の場合に、そんなコミュニケーションは可能だろうか」(『パラレルな知性』P71より引用)

 これは今読んでいるハンナ・アレントの『人間の条件』にも出てくる主要なテーマの一つだ。コミュニケーションに使われる共通語は言語であるが、科学技術の共通語は数学だ。また、コミュニケーションには複数の結論があり得るが、科学技術の結論は(限定された条件において)一つだ。科学技術が自らの意見を変えるのは再現性が得られない事象に対して蓋然性の高い異説が適合した場合に限られる。よって科学技術は言語によるコミュニケーションとは明らかにベクトルが違う。

 つまりコミュニケーションと科学技術は相容れない。擦り合わせは必要だが、それは相容れないことからスタートしなければならない。

12月3日(日/夜):読みたい本を気ままに読む読書会

eimiさん『喋る馬』に収録されている『夏の読書』バーナード・マラマッド作
この本を翻訳された柴田元幸さんのオンライン朗読会でこの短編小説を知りました。
僅かな読書量ですが、少なからず読書という文化的営みに支えられている者として、これからも本を読んでいきたいと思わされる一作です。
16歳で高校を中退して毎日部屋でラジオを聴いて夜中に近所を散歩するくらいしかしていない20歳のジョージが、あるひと夏の出来事で「よっしゃ!読書するぞ!」と心の中に内なる炎が燃えあがる、そんなお話です。
派手な出来事は起こりませんが、ジョージの未熟さに共感を覚え、分かる分かると思いながら読みました。
また近所のおじさんがジョージに放った一言は自分に向けられたもののように感じます。
だからこそ、ジョージがラストに図書館で本に囲まれた時の感情に強く励まされます。
小さな作品なのに、自分を見つめ直すために時折読み返そうかな、そう思わされる力がこの小説にはあるように感じました。
余談ですが、柴田先生の朗読は抑揚が効いていてお芝居を観ているかのようです。
本の朗読を聞くのも悪くないものですね。

yuさん『ウォーターランド』グレアム・スウィフト
沼地に住んでいる少年が子供の頃(9歳くらい)を回想している。父は水門番をしている。父は信深く、読み始めたばかりですが、イメージとしてはスタンドバイミーのような不穏な雰囲気。田舎の自然。今日は主人公が列車で学校に通っているところを読みました。兄弟で教育に差をつけるのはなぜなのか謎です。兄は読み書きもできないままで良いとされていました。沼地と聞くと他の参加者から「ザリガニの泣くところ」を連想したと言われました。川や星やウナギが出てきます。

今日の小説は水門番や両替屋など聞きなれない職業が出てきた読書会でした。


過去の読書感想はこちらに載せています。

読書会参加者に投稿いただいた読書の感想です(2024年10月-)。

 

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