2023.12.11

読書会の読書感想(12/6-10)

 参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。6日(水/午前)は3名、8(金/夜)は6名、9日(土/午前)は6名、10日(日/午前)は4名、10日(日/夜)は3名の参加でした(主催者含む)。
 日曜日の「質問「   」について考える時間。」の質問はこちらでした。

今聞こえる音を一つずつあげていってください

田中未知著『質問』(文藝春秋)

12月6日(水/午前):読みたい本を気ままに読む読書会

よしださん『労働の思想史 哲学者は働くことをどう考えてきたのか』中山元著
 最近はずっとこの本を読んでいます。今日はロバート・オーウェンという人が出てきました。
 この人は哲学者というよりも実業家なのですが、産業革命期の労働環境や労働者の待遇や扱いに問題意識をもってそれを変えていくような動きをとった人のようです。その時代は、人間は機械に劣る労働力とみなされてロクな扱いをされていなかったようです。人間だから機械に劣ろうがどうだろうが人間として接するというのではなく、労働力=価値みたいな価値観を全面に出して人を見ていたように本からは感じられました。
 オーウェンは、自分の会社が大きくなった頃に、閉鎖的な共同体を作ります。閉鎖的というのは悪い意味ではなく、住居や衣服や食料を共同体内で分配するような仕組みが整えられた共同体です。外の市場とは分けられた、おそらく従業員とその家族くらい(?)の共同体を作りました。分配は労働時間に応じてなされ、きちんと働いていれば衣食住に困らない・日々の生活への不安がないという状態を作ったのだと思います。
 しかしうまくいかなかったのだと言います。正確には読み取れませんでしたが、食料や衣服などは共同体の外から調達するのですが、その調達物はおそらく共同体内の生産物と交換される形で為されていたのだと思います。そしておそらくですが、外の世界は市場原理に基づいて価格などが変動しますが、共同体の中の世界は労働時間に対して一定の衣食住が提供されていた、つまり市場原理が働いていなかったのではないかと思います。そうなると、労働者が頑張って働くほどに外部からの調達物を提供しなければならないのですが、労働によって生産されたものがいつも同じ価値で外部で買い取られるわけではありません。需要が落ちれば生産調整をする、つまり本来であれば労働時間を減らすようなことも行わなければならない。そのような市場原理にもとづいた調整が内部で行われなかったために齟齬が起きて仕組みとして破綻してしまったのではないかと思います。
 区切られた理想的な世界を作るとき、外との齟齬を調整する仕組みを整えるか、中で完全に循環させるようにするかなどの選択が求められるのだと思いました。なのですが、一つの社会のあり方としてはオーウェンの実践に興味が湧きました。

12月8日(金/夜):読みたい本を気ままに読む読書会

yuさん『ミライの源氏物語』山﨑ナオコーラ
1000年前の話は差別表現などもあり現代の私たちは読みにくいけど読みにくさをどうやって超えるかということが書いてあるエッセイのような本です。ナオコーラさんの抜粋の訳文もあります。十三の項目があり、今日よんだところは「受け身のヒロイン」です。桐壺の更衣と浮き舟が挙げられていました。浮舟は受け身かな?と思いました。平安の時代は見目麗しく身分の高いことがとても重要だったようです。

6人で感想を共有しました。マッカラーズ短編を読んでいる方がありよくわからないとおっしゃっていたところが気になりました。

eimiさん『天才少女』著者カーソン・マッカラーズ 『マッカラーズ短編集』掲載作品 筑摩書房
今回は1時間弱で読める短編小説を選びましたが、正直ストーリーがよく把握できないままに読了してしまいした。
感想を共有する時間に「さて、なんと話そうか…」と困ってしまいましたが、そのまま「よくわかりませんでした」とお伝えさせて頂きました。
誠にお恥ずかしい限りです、すみません・・・。
でも、この短編集に収録されている『悲しき酒場の唄』はすごく好きなので後でじっくりと味わいながら読んでみます。
『悲しき酒場の唄』は昔白水社から文庫本が出版されていましたが、今は入手困難な本です。
村上春樹さんがマッカラーズの小説を2作翻訳されたことで、再度注目が集まりこの筑摩書房からの短編集発刊となったのでしょうね。
マッカラーズは寡作の人なので、一作一作を味わって読みたいところです。

今日は他の参加者の方が読まれた本で自分が知っている作品、読んでみたいと思っていた作品、それから胸に響く台詞などがあって中身の濃い1時間でした。
ありがとうございました。

12月9日(土/午前):読みたい本を気ままに読む読書会

よしださん『労働の思想史 哲学者は働くことをどう考えてきたのか』中山元著
 今日はこの一節が気になってずっと考えを巡らせていました(P200)。

「人間労働の節約のために機械を取り入れることが、現在のように労働者から搾取する労働量を増大させ、その代償として与える生活資料を減少させる不幸な結果」

これは18世紀前後を生きたロバート・オーウェンを取り上げたところで出てきた文節です(他の本の引用の紹介なので引用の引用になっています)。
 引っかかったのは、機械を取り入れることが労働者から搾取する労働量を増大させると書かれている部分です。僕は機械を入れることで人間の労働が減るので少ない労働量で生産量が上がるから労働者にとってもいいだろうという前提で読んでいたので引っかかりました。おそらく言っていることは、労働力として人間は機械よりも劣っている、なので機械を入れることで人間の評価は相対的に下がり働いても大した給料をもらえなくなったということなのではないかと推測しました。
 僕は楽観的にも機械を入れることで生産性が上がり、過酷な労働から解放されると考えていたわけですが、少なくとも当時はそうはならなかったということなのだと思います。そして現代でもAIが出てくることで労働が奪われると恐れています。
 なのですが、現代は少なくとも産業革命期よりも良い環境だよねという話にもなりました。たしかに当時は法律で15時間/日まで労働が認められていたようで、とんでもないブラックな環境だったようです。機械による生産性の向上は必ずしも搾取や労働者の地位低下の方向へだけではなく、幸福的な方向にも向かっているのだと思いました。
 なんとなく、機械を導入することで自分だけ富んでやろうという野望と、人間全体の幸福度を上げようという善意が並存しているのではないかと思いました。後者だけの方がいいようにも思いますが、前者がないと技術革新などは起きにくいのかもしれないとも。その並存をある程度は受け入れつつ、でも全体的に良くなるにはどうすればいいのかということを地道に行っていくのかななどと思いました。


 過去の読書感想はこちらに載せています。

読書会参加者に投稿いただいた読書の感想です(2022年10月-)。

 

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