2024.03.11

読書会の読書感想(3/5-10)

 参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。5日(火/午前)は3名、9日(土/午前)は6名、10日(日/午前)は7名の参加でした(主催者含む)。

3月5日(火/午前):読みたい本を気ままに読む読書会

irisさん『注文の多い注文書』小川洋子/クラフト・エヴィング商會
希少な商品を探し求めるお客様と、その注文を受ける商會とのやりとりが収められています。注文書と納品書に添えられた手紙という形式に惹かれました。注文に至るまでの経緯、やりとりの中で流れる時間の経過、納品までに変化するお客様の思考や状況など、「時間」というものを意識させられます。
架空のお客様が注文される商品には、それにまつわる別の小説(これは現実にある小説)が存在しており、また、架空のお店である「クラフト・エヴィング商會」は、現実に存在するデザイン制作ユニットでもあります。1つのエピソードの中に、架空と現実が入れ子上に存在し、物語を支えています。
ひとつの物語が生まれるまでに、長い長い時間を経ていること、多くの別の物語が複層的に存在していることを感じる、奥行きのある読書体験でした。

ほかの参加者さんのお話を受けて
「金持ち父さん貧乏父さん」(ロバート・キヨサキ)は、読もう読もうと思いながら、なかなか読めていない本のひとつです。これが20年前の本だったら、今の日本はもう少し進んでいるかな?お金に対する意識は少しは変わっているかな?と思います。なにしろ、成長しない30年を過ごしてきた日本人ですから、今、自分たちがいかに貧乏になっているかくらいは、気づいているに違いありません。その間にお金では測れない豊かさを手に入れていればよかったのですが、そうでもないようです。

「正欲」(朝井リョウ)は、多様性がテーマの本であることを初めて知りました。すべての人は内面にマイノリティを持っているというのが私の持論ですが、多様性はそんな甘いもんじゃないという言葉にどきりとしました。私たちは自分が嫌悪を感じるような欲望の存在を、認めることができるのでしょうか。たとえば小児性愛とか、動物や物体への性欲など。多様性という言葉のみ肯定し、その中身に何があるかは考えていないのではないか。飛躍しますが、欲と、支配やコントロールとの関係についても考えたいと思いました。

よしださん『正欲』朝井リョウ著
 つい1週間前くらいに読み始めたばかりなのに、あっという間に終盤です。それくらいどんどん読み進めてしまう。それは読むなかで深まる自分への疑念をどうにか解消してほしいとこの本の結末に求めるような動機づけであるようにも思います。

3月9日(土/午前):読みたい本を気ままに読む読書会

よしださん『正欲』朝井リョウ著
 今日は最後の解説のところを読みました。臨床心理士の東畑開人さんの解説でした。
 まず「正欲とは何なのか」という理解が難しいのですが、仮に正しくあろうとする欲・あるいは他者に正しくあれと強いる欲だとしておきます。その場合、正しいとするカテゴリーが生まれるわけですが、そうなるとその正しさから外れる人が出てきます。最近では多様性として正しさの枠を広げているのだと思いますが、この本ではその拡張された枠からも外れる人が描かれていました。さらには(ネタバレになりますが)、正しいど真ん中に当てはまる人が、正しくないと蔑んでいたカテゴリーの人たちの繋がりに狼狽する。その人はそのとき、正しさを貫いていたはずなのに繋がりが壊れていたからです。
 正しさを持ち出すとロクなことがない。正しいと主張している向こう側で「この人は全く理解できてない」と嘲笑されているかもしれない。だから、人それぞれだよねとしておいた方が無難なのだ。だけれども、それだと人は孤立していく。多様性というテーマを持ち出したら逆に分かっていないことがよくわかって目指すところと違うところに行き着くかもしれない。だからなのかは分かりませんが、東畑さんは「何かあったら話し合おう」と書いていました。
 多様性というのは社会の問題として扱われているけど、一人の人を理解するのだけでも難しいのだから、〈私〉の周辺に広がる問題であるように思いました。広く一般に言われる拡張された正しさを漠然と理解するのには無理があって、〈私〉なりに広げていくものであるように思いました。

3月10日(日/午前):読みたい本を気ままに読む読書会

Takashiさん『ギリシア・ローマ神話』 ブルフィンチ、岩波文庫
 今日は神話の中の大戦争、トロイア戦争のきっかけを読んだ。
 不和の女神アテナが結婚式に招待されなかったのを根に持って、「一番美しい方へ」と書かれた金のりんごを式に投げ込む。それを巡って3人の女神が喧嘩し、仲裁すべき神のゼウスはめんどくさくなってトロイア国の王子に仲裁を丸投げしてしまう。そこから大戦争に発展・・・。
 神々に思わず突っ込みたくなるような、何とも人間くさいお話でした。


過去の読書感想はこちらに載せています。

読書会参加者に投稿いただいた読書の感想です(2024年10月-)。

 

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