参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。26日(水/午前)は2名、29日(土/午前)は4名、30日(日/午前)は3名でした(主催者含む)。
土曜日の「質問「 」について考える時間。」の質問はこちらでした。
死ぬまでにあと何回土曜日があるでしょうか
田中未知著『質問』(文藝春秋)
6月26日(水/午前):読みたい本を気ままに読む読書会
yuさん『黄色い雨』フリオ・リャマサーレス
スペインの作家。山奥の村で人がいなくなってしまう。犬と奥さんと暮らす男。
生きているのか死んでいるのかだんだんわからなくなってくる。作者は詩人のようで文体は美しい。男が最後に犬にした行動はどういうことだったのだろう。滅びていくものと人の営み、ハリエニシダとイラクサ。
本が読めなくなるを分析した本では、現代の感覚と本を読むという行為のスピード感が違うのではなどと話しました。わかりやすいものはすぐ忘れてしまうかもしれないなと考えました。
よしださん『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』三宅香帆著
前にどこかのweb記事でこの著者が登場していて、「本を読めなくなるなんてこの社会はおかしい」みたいなことを言っていて、ユニークだなと思って買いました。普通は不公平とか理不尽さとかに「おかしい」と異を唱えるのに、「本を読めなくなること」に異を唱えるとは。まだ序盤なので真意とかそこにいたるまでの文脈まで読めていませんが、先が楽しみです。
今日読んだところでは、読書の歴史みたいなことに触れられていて、主に明治時代の自己啓発書について書かれていました。一般大衆が本を手に取れるようになったのは活版印刷機が普及した頃で、それが明治頃なのだとか。そしてベストセラーになったのは自己啓発書。身分の違いがまずは建前としてでもなくなった時なので、努力次第で成功できるという本・主張は大切なものだったのだと思います。
僕のなかではなんとなく、メディアは既に持っている情報の確認や一部修正で、自己啓発書は既に一歩を踏み出しかけていることの最後の後押しで、今の自分の方向性と大きく違わない。それに対して本を読むというのは、「なんじゃこりゃ?」みたいなところから始まる、未知だったり常識の書き換えが伴うもののような気がしています。だから、本を読むには「どこへ行くか分からないですけど、それでもいいですか?」ということへの了承が必要というか、それでもいい・むしろそれがいいみたいなマインドでないとなかなかできないことのような気がしています。
6月29日(土/午前):読みたい本を気ままに読む読書会
yuさん『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈
「成瀬は天下を取りにいく」の続編。中2だった成瀬が高校生→大学受験。成瀬の精神のつよさはどこからくるのだろう。こうと思ったらやり遂げる。「やめたいクレーマー」の呉間氏は成瀬に救われている。滋賀県の大津が舞台。気か付けば声を出して笑っていた。
そのほか、古田徹也:「謝罪論」で、人の心象というものを考えた。事象ではなくて人は心情に左右されてそれがなにかと行動に影響を与えてしまいがちなのが何なのか考えています。
よしださん『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』三宅香帆著
明治頃からの読書というものの歴史を振り返るようなフェーズを読んでいます。
読書の意味合いは勉強から娯楽までさまざまであったのでしょうが、近代化のなかでサラリーマンという新しい階層はどちらかというとエリート層になり、教養としての読書を求めたのだとか。読んでいる感じでは、社会や人間について勉強しようというよりは、それを読んでいることで労働者層との差別化を図る・周囲にも認めてもらうという意味合いが強いのかなと思いました。大正時代には「円本」という1冊1円だけど、60巻とかシリーズでまとめ売りする戦略を出版社がとり大成功したのだとか。それは、お得だし読むものがこれで事足りるという利便性だけではなく、60冊もずらりと書棚に並んでいると壮観である、みたいな部屋の装飾の一部としてもウケたのだとか。
まだ本書の趣旨にまでたどりつけていませんが、とりあえず本や読書というものにはいろんな意味合いが絡められてきたのだなと思いました。そこまで無理して本を読ませなくて(買わせなくて)もいいのではないかと思いつつ、そうやって部数を稼げるからこそ1冊1000円程度でこれだけの内容のものが読めるのだろうとも思ったり。いつも思いますが、1000円2000円でこれだけのものを読めるなんて、お得です。
6月30日(日/午前):読みたい本を気ままに読む読書会
Takashiさん「いただき少女りりちゃん」(本ではなくWeb)
これは現在パパ活詐欺で罪に問われている女性が販売していたテキストです。一時期(今も?)Web公開されていたので読んでみたところ、私の心にぐっときました。
りりちゃんが探すカモおじさんの特徴は「他責より自責、奪うより与える、質素な生活」などです。これって良い人の素質だと思うんですが、りりちゃんにかかると良い事とは関係ない方向に行ってしまいます。
私は、気付かないうちに孤立してリアリティを喪失しているおじさんが、孤立を演出する架空(リアリティのない)の女の子にシンクロする話だと思いました。切なくて怖い話です。
過去の読書感想はこちらに載せています。
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