外出の自粛をすればその分の時間が余る。通勤の必要がなくなればその分の時間が余る。また、いい話ではないが、自粛期間は経済活動も非活性になるから、働く時間も減る可能性があり、時間が余る。
しかし、これから先私たちの時間は本当に余る方向へ向かうのでしょうか。
これには、子どもがいるか否かでまず大きく変わってくると考えられます。子どもがいれば、保育園・幼稚園、学校が休校になるから、親の時間は減ります。日中の仕事も、子どもと一緒にいられる幸せもありながら、なかなかはかどらず夜や早朝に仕事をすることも増えるのかもしれません。
他方で、子どもがいない場合はどうでしょうか?ここで唐突ではありますが、万有引力の法則で有名なアイザック・ニュートンの話を持ち出したいと思います。ニュートンの大発見と、疫病による自粛の間にはこんな関係があるとする考えもあるようです。17世紀、ペストの流行がイギリスを襲った時の話です[1]。
この時期、ケンブリッジのトリニティ・カレッジを終えたばかりのひとりの青年がいた。ペストの流行によって、青年の通っていた大学も何度か休校を繰り返した。休校中大学を離れて故郷の街ウールスソープに帰った青年は、ぼんやりと日を過ごすうちに、「微積分法」や「万有引力の基礎的概念」を発見する。その一つ一つは、近代科学にその基礎的わく組みと考え方を提供するものとなり、その後の世界をかえていく。
ニュートンが主要な業績の多くを発見した期間はのちに「創造的休暇」とも「やむをえざる休暇」ともよばれることになった。
この休暇期間の有無に関係なくニュートンは、様々な功績を残せたかもしれません。しかし、もうそれしか考えることがなくなった、または溢れ出る思考に集中することができるようになったのは確かなのではないでしょうか。
現代は、ニュートンの時代と違って様々な誘惑があります。しかし、何に集中するかを選択することによって、また自分の中に何か大きな発見を見いだせるのかもしれません。
〈参考文献〉
1.『人類が直面する新たな感染症の脅威』(長崎大学 山本太郎教授著)
(吉田)