2020.09.01

そもそもなぜ不便益なのか | ブックレット作成日記「不便益」②

 不便益に関する本を1冊読みました。不便益とは、言葉の通りですが、不便だけど「益」があるもの。どのような不便益があるか考える時には、不便益の反対の「便利害」を考えてみるとイメージがつきやすそうでした。
 たとえば、富士山の頂上まで通じるエスカレーターがあったらどうだろうか。便利ではあるけど、登った達成感も得られず、登る途中に目に留まるはずだった花や虫もロクに見ないまま頂上に着いてしまいます。最近では、本を借りるのも買うのもネットになって便利だけど、そのせいでフロアの回遊による偶発的な出会いのようなものがなくなりました。このようなことを便利害というそうです。

 では肝心の不便益はというと、例えば、保育園が家の目の前だったのに引っ越したことによって遠くなって不便になった。でもそのおかげで歩いている間の景色を子どもは楽しんでいるようだとか。ほかにも、本棚が整理されていないせいで、目的の本を探す過程で懐かしい本を見つけてついつい読みふけってしまうとか。このようなことが不便益です。

 不便益を新たに生み出すには、まず便利なものを見つけて「害はなんだろうか」と考え、不便を付け加えることでその害を解消するということも書いてありました。これはおもしろい。

 ほかにもいろいろな事例などが書いてあって頷くことばかり。…でも、ただ事例を知って「不便益すごい」となりたいわけではありません。不便益に対する理解を深めることで何を得たいのかを考えてテーマとしなければいけません。

 最初は、一つの行為でも複数の価値基準が存在するのだとか、不便と便利がそれぞれもたらす益の性質は違うとか、そのようなことについて考えを深めてはどうかとも思いました。しかし、不便益というユニークな着眼点からは、もっとおもしろいテーマが見つかるはずです。不便益がくれる新たなものの見方とはどのようなものなのでしょうか。もう少し考えたいと思います。

 ただ、そのようなことを考えずとも、「この不便を便利にすることで失われる益は何か、生じる害は何か」とは、すぐに実践できそうな生活を良くするための考え方だと思いました。

(吉田)

関連するタグ

#価値 #生活

このページをシェアする

読書会

 本を読んだり、なにか考えごとをしたり、ゆっくりと使える時間になればと思っています。事前読書のいらない、その場で読んで感想をシェアするスタイルの読書会です。事前申込はあまり求めていませんので、気が向いたときに来てください。

詳しく見る >>