2020.09.02

不便益とは何か | ブックレット作成日記「不便益」③

 まずお断りさせていただきますが、タイトルの「不便益とは何か」についての答えは出ていません。といいますか、本家本元の不便益概念の提唱者の先生も、この問いに対する答えは出せていないのではないかと感じています。あるいは、このような問いを研究の中心には置いていないのかもしれないです。

 ここで考えたいことは、多少なりとも「おもしろい」と思わせてくれたりとか、何かが開けたような感覚をもたらしてくれる「不便益」とは私たちにとって何なのかということです。少なくとも私はおもしろいと思ったのですが、何がおもしろいと思わせてくれているのかその正体が分かりません。単に意外性とか新概念だからとか、そういったものにおもしろいと感じているだけではないと自分では感じています。

 一つには、不便益という視点を持てるようになった時に、毎日の見え方がどのように変わるのだろうかという興味はあります。
 「これ便利〜↑」とはなりますが「これ不便〜↑」とはなりません。「これ不便〜↓」となります。
 この↓という見方が↑に変わった時、選択の仕方が変わるかもしれませんし、自分の感じていた違和感の解消につながるかもしれません。少し固めの言い方では、まだまだ良くできる世の中の課題の数々に出会えるかもしれません。「不便益」をより深く理解することで、世の中の見え方が変わるのではないかという期待を抱いています。

 もう一方で、不便益そのものよりも、不便益に関心を寄せてしまうその背景にも興味があります。「便利になりすぎた世の中は、うんぬんかんぬん」という考え方です。
 便利は最高です。Amazon、PayPay、なんでも安く売っているスーパーなどなど、もはやこれらなしに生活は成り立ちません。ちょっとした不便にも不満を募らせる毎日です。
 しかしながら、便利が比較的行き届いた今日では、不便の方にフロンティアがあるのかもしれない。便利を追求しすぎたがゆえに、便利が侵してはいけない領域にまで便利を浸透させてしまっているのかもしれない(例えば学びによる知的欲求を満たす機会を奪っているとか)。便利が一人歩きして、人間の幸福を喰い始めているのかもしれない。そんな視点や関心です。

 ただ、現状の研究や考察でどこまでのことが言えるのかは見極めなければいけません。あまりにも突飛な問いをもって先生のもとに押し掛けても困らせてしまうだけですし、深くお話を伺うこともできません。ですので、上に書いたような視点・関心を持ちながら、不便益に関する理解をもう少し深めていこうと思っています。

(吉田)

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