「不便益」をキーワードとしたブックレットのテーマが見えてきました。テーマは「私たちはどんな不便を残したいと思うのか?」ではどうだろうかと考えています。
私自身が不便益のどんなところに惹かれたのか、引っ掛かりのようなものを感じたのかを考えてみたのですが、それは「不便益」自体がいつもとは違う視点やものの見方であるからであると感じました。いつもは便利なものに惹かれ、自分自身でも便利を求めて情報を得たり改善策を講じたりしています。しかし、不便益は全く別の視点です。不便だからこそいいことあるよね、という視点であり、それに惹かれたということはどこか納得できることもあったのだと思いました。
便利とは、楽であることであり、身体的にも認知(頭)的にもコストをかけないことであるとされています。したがって、不便とは、あえてコストをかけることということになります。少し拡大解釈かもしれませんが、コストをかけるとはエネルギーを注ぐことであり、エネルギーを注ぐとは生きることそのものだとも考えられます。
これからAIや自動運転などにより、さらに現在進行形ではテレビ電話の一般化によって、どんどん便利になっています。その中で、私たちがどこに不便を残したいと思うのかは、自分自身や人間自身のエネルギーを注ぎたいと思うこと、生きていると実感するための行為を分かることにつながるのではないかと考えました。あるいは、あらかじめ何は不便のままでいいのかに自覚的になることで、失うことを未然に防いだり、もっといい解決策を考えることにつながったりするかもしれません。
お話を伺いたいと思っている先生は、かつてはAIの研究者だったそうです。不便益の事例から「私たちはどんな不便を残したいと思うのか?」について考えていきたいと思っていますが、先生がなぜAIの研究から不便益の研究に移ったのか、不便益の研究をして変わったことなども伺いたいと思っています。
不便というレンズを通して、より良い生活を発見するきっかけになればいいなと思っています。なお、ブックレット作成の際には、何らかの不便益をコンテンツ内に差し込みたいと思っています。
(吉田)