2020.09.13

読書会の話。自己実現と、暇と退屈

 昨日今日と各々が読みたい本を持ち寄る読書会でした。昨日の話を少しだけ。

 私は昨日からマズローの『人間性の心理学』を読み始めました。比較的有名と思われるマズローの5段階の欲求の提唱者とされるマズロー氏の本です。
 5段階の欲求とは、人の欲求はピラミッドのように構成されており、下から順番に満たすように欲求が働くというような理論です。下から、生理的欲求(食欲・睡眠欲など)>安全の欲求>所属の欲求>尊厳・評価の欲求>自己実現の欲求、というように構成されるとされています。

 比較的有名なこの理論ですが、いわくつきの理論であるとも感じていました。
 例えば、芸術家などは下の4段階を飛び越えて自己実現の欲求を満たしにいこうとしているのではないかとか、自己実現に足を踏み入れるとその下のいくつかは同時に失ってしまうのではないかとか、そんなことを感じていたからです。ネット上でも、同様の矛盾のようなことを指摘する記事を見かけたことがあります。
 また、本当かどうかは分かりませんが、マズローさんは晩年「ピラミッドは逆だったかも」というようなことを言っていたとかいないとか。つまり、自己実現が最も下層に位置し、人間が最初に求める欲求なのではないかということです。

 自己実現は、私もしたいことはしたいので、いつかはきちんと理解してみたいなと思っていました。『人間性の心理学』は結構前に買っており、案の定積読になっていたのですが、読書会の時に読むことにしました。そして、本を改めて手にとってみると、なぜ5段階の欲求理論がいわくつきであるのかが分かった気がしました。
 『人間性の心理学』は500ページもあるのです…。
 このような長い本の中身がたった1枚のピラミッドの図で表せるはずはなく、やはり読んで適切に解釈するしかないのだなと思い知らされました。おそらく5段階の欲求には、もう少し深い意味が詰まっているのではないかと思っています。
 読み始めてみると、今のところ心理学というよりも哲学書的な部分もあり、読みながらいろいろなことを考えさせてくれます。マズローさんは、人間心理を科学的に解き明かす以前に、良い人生とは何かということに関心が高い人だったようです。

 さて、前置きが長くなってしまいましたが、読書会ではマズローの本と、一見関連性が低そうな『暇と退屈の倫理学』という本に共通の内容が書かれていることが分かり少しだけ盛り上がりました。
 その共通の内容とは、欠乏を埋めることを求めるような動機付けでは満たされた瞬間に空虚感に襲われたり次の欠乏を求めることになるから健康的であるとは言えない、というようなことです。
 『暇と退屈の倫理学』という関連性の少なそうな本と共通性があることは驚きでしたが、どんな共通性があったのかは、忘れてしまいました…。忘れてしまったでは少し寂しいので、著者の國分功一郎さんの記事を見つけて、読んで少しだけ考えてみました。

 記事の中で國分氏は、次のようなことを言っています。

「暇」と「退屈」は同一視されがちですが、暇は何もすることのない、する必要のない時間であるのに対して、退屈は何かをしたいのにできないという感情や気分を指します。

どちらかいうと暇を肯定的に、退屈を否定的に捉えているように感じられます。また退屈とは、社会的に決められた何かを自分の目標や目的であると信じ込み、それを追い求めすぎてしまうが故に生じるものである、とも私には読み取れました。これはマズローの4段階目の欲求である「尊厳・評価の欲求」に該当するのかもしれません。

 その欲求を越えた自己実現とは、一体何なのでしょうか。
 まだ『人間性の心理学』の序説ですが、これから自己実現とは何なのかを自分なりに理解していきたいと思います。序説から読み取れた自己実現像は、ある意味では素朴な、解脱したような、仙人のような人という印象も受けなくもありません。自己実現を正しく理解した時に、果たして自分はそれを求めたいと思うのかどうかも興味深いです。「いや、そこまでは目指したくないかも」と思う可能性もなくはないかもと少しだけ思っています。

 読書会は来週はお休みしますが、再来週は行います。偶然の出会いや広がりをまた共有していければと思っています。


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(吉田)

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