2020.11.22

読書会の話。自己実現と、執着しないこと。

 昨日は読みたい本を気ままに読む読書会でした。なんだか一見相反するような本が登場しておもしろかったので共有したいと思います。

 私は引き続きマズロー氏の『人間性の心理学』を読みました。すごくざっくり言ってしまえば人の欲求について書かれた本です。欲求とは、人を動かす源の一つであると言えます(マズロー氏は行動の全てが欲求によって引き起こされているわけではないと言う)。
 それに対して、別の参加者の方は、欲やこだわりを捨てようという本を読んでいました。なんだか一見対立しような本です。しかも欲やこだわりの捨て方の程度がすごくて、自分・他者・過去や未来・死など、こだわりを持つ対象として思いつくもの大体に対して、こだわりを持つ必要はないということを説く本のようでした。仏教に関連する本のようでした。

 ただ、よくよく振り返ってみると、同じようなことを言っているのかもしれないと思いました。マズロー氏の本は、確かに欲求について書かれているのですが、決して欲求を抱くことを当たり前であるとか肯定的に捉えているようではないようです。ただし、欲求が湧き上がらない状態は健康に支障をきたしている表れでもあると書いてあり、ここらへんの齟齬はまだ私の理解が及ばないところです。
 5段階の欲求理論は、生理的欲求(食欲など)が満たされれば安全を求め、それが満たされれば所属や愛を求め、それが満たされれば承認や尊厳を求め、それが満たされれば自己実現を求めるという理論です。自己実現が5段階のピラミッドの頂点にあり、その状態にあることが良い状態としています。しかし、マズロー氏の主張は、「自己実現を目指そう」というよりも、それ以前の状態をどうすれば抜けられるかということに主眼が置かれているように思います。何かを満たしても次の欲求がすぐさま生じる状態は大変でもあるから、その状態をどうにかして抜け出すことが心身の健康や幸福につながるということです。

 そのようなマズロー氏のメッセージを読み取ると、自己実現とは、欲やこだわりを持たない・執着しない状態なのではないかということが見えてきます。心理学でも宗教(学)でも、理想とする状態が同じかもしれないということは興味深いことでした。もちろん、本来であれば理想は一つに収束するものなのかもしれませんが、異なるアプローチの探求で同じような答えにたどりつくというのは、なんだかすごいことだと思います。

 ただ、その参加者の方と私とで同じ意見だったのは、欲求ってなくても生きていけるんだっけとうことでした。あれが欲しいから、こうなりたいから、認められたいから頑張るというのは、大きなエネルギーになると感じています。でも自己実現のような理想状態はどうやら違うようです。イメージが持てないのはその境地に達していないからということなのでしょうが、人の生きる力の源泉とは何なのかという意味でも、自己実現とは興味深く、理解を深めていきたいと思いました。

 ちなみに、私が読んだ中でもう一つ興味深かったのは、性格は欲求の満たされ具合で変わるということです。食欲や安全の欲求が満たされていなければ、警戒心が強く、攻撃的な性格になってしまうかもしれません。所属や愛、承認や尊厳の欲求が満たされない場合も、それに応じた性格特性が表れるのではないかということです。性格というのは変わらないものだという印象がありますが、自分の置かれている状態が変われば変わるということです。性格が変わるってなんだか良くないイメージもありますが、そうでもないようです。生きていれば変わることもあるようなのです。
 欲求段階が性格に影響を与えるとするならば、性格は置かれている環境によっても変わるのだと考えられます。衣食住や安全が確保されれば警戒心や攻撃性は薄れると考えられますし、所属や愛、承認や尊厳に応じた性格特性も同様なのだと考えられます。したがって、なにかギスギスするななどと感じたら、人に原因を求めるのではなく、環境に原因を求め改善していくということも有効なのだと考えられます。もちろん、本人の努力によって欲求段階が上がっていくという考え方もあるかもしれませんが、私は努力ができる程度にも環境が影響していると考えています。環境によって人はより健康で幸福になっていく、マズロー氏はそんなことも言っているのかなと思ったりしました。実際に本の中には、破壊性や攻撃性がどの程度存在するかは(社会の物質的豊かさではなく)文化によりほぼ決定される、ということも書いてありました。引き続き読み進めながら、自分自身を振り返るようにあれこれ考えていきたいと思います。


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(吉田)

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