2020.08.23

読書会の話。閉じた連帯感ある社会のリーダー像

 昨日は各々が読みたい本を持ち寄る読書会、今日はリベルのブックレット『人々が仰いだ古墳』を使った読書会でした(現在は配信を停止しています)。今日の読書会の様子を、内容を交えて少しだけ紹介します。

 ブックレット自体は、古墳時代における地方のローカル社会を題材にしていますが、考えたいと思ったテーマは人々から認められるリーダー像についてでした。ですので、副題は「認められるリーダーになるために」としています。
 古墳は奴隷的な労働によって造られたイメージがありますが、公共事業のような形で、農閑期の農民たちの協力によって築造しされたと考えられています。また、地域の首長は世襲的にではなく、実力本位で決められた側面があると考えられています。したがって巨大な建造物から想起するトップダウンな権力性とは少し異なって、地域に発展をもたらすリーダーの活躍を期待して築造された側面があるのです。

 そのような社会背景における地域首長としてのリーダー像や、古墳の社会的な意味、当時のローカル社会についてまとめたブックレットでした。読み終わった後の感想や生じた関心事は様々出ましたが、関心が高めだったのは以下のことだったかと思います。

・世襲や選挙のような選抜システムがない中で、リーダーはどのように認められたのか、決められたのか

 終わってから、私も改めて考えてみました。前提として、古墳時代のローカル社会は、現代ほど人口が多くなかったため、比較的お互いを観察しやすく、噂もリアリティのあるかたちで飛び交いやすい社会だったのではないかと思います。そのような社会では、あの人が誰を助けたとか、こんな風にして場を治めたとか、なにやら立派な人だとか、そんな評判が自然と形成されたのではないかと想像します。
 また、この時代は土木工事でダムや水路を建設したり、圧倒的な存在である自然に対峙したりと、頭脳だけではなく腕っぷしも求められたと考えられます。実際に、群馬県あたりの地域を治めていたと考えられる、現代の知事並の領域を治めていた首長は、火山の噴火に武装して立ち向かって息絶えたと考えられる人骨などの資料が見つかりました。自然災害に、弓と鏃を手に向かって行ったのです。もちろん無知とかそういうことではなく、そのような姿勢が人々に求められ、日々の生活における安心をもたらしていたのだと考えられます。

 この当時の地域の人々の関心事は、自分たちの地域をいかに発展させてくれるか、安心・安全をもたらしてくれるのかということでした。人間として信頼できることを前提に、大規模土木工事を統率できることや、自然を敬いながらも災害時には立ち向かう勇気もあることや、渡来文物をいち早く取り入れるような新規性があることなど、様々な資質が評価されたのだと考えられます。地域の発展のためというシンプルな目的に対して、地域の中で自然と評判形成されて、リーダーとして擁立されていったのだと考えられます。

 時代を遡るほど、手に入る資料が少ないため、憶測や想像の占める割合が大きくなります。しかし、時代を遡るほど、高度で複雑なシステムが介在しないため、人間や社会の根源的な姿や欲求を垣間見ることができると考えています。
 古墳時代のローカル社会は、現代に比べると閉じた社会であり、地域の発展のための連帯感も強かったと考えられます。そのような中で擁立されたリーダーは、経済発展をもたらすと共に、宗教的な祭祀も行い自然災害にも立ち向かう精神的な安心感ももたらしてくれる人でした。

 ちなみに、今回ブックレットに登場した首長・リーダーと重ねて私が頭に浮かべたのは、なんとなく北野武でした。


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(吉田)

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