「学ぶ」とは、人にとって得手不得手や好き嫌いがあるようにも思われます。
しかし、教育心理学などを専門とする安藤寿康氏は、動物の「生きるための三欲」の三つ目は「学習欲」なのではないかという考えを示しています[1]。一つ目と二つ目は、「食欲」と「性欲」です。
たとえば、人間と同じく動物であるゾウリムシの、学習に関するこんな例が示されています[1,kinlde324]。
ゾウリムシを一匹つかまえて3~4.5mm程度の正方形、正三角形、円形の容器でしばらく泳がせてから、別の形の容器に移しかえると、彼らは元の形にあわせて泳ぎだすのだそうです。
学習とは、心理学では「経験による行動の持続的変化」を指すと言います。ゾウリムシは、容器の形を学習し、その形状に合わせて泳ぐという行動の持続的変化を示しました。
動物は、動き回る生物であるため、周りの環境は変化しやすいと言えます。そのため、生まれながらに備わった特性だけではなく、学習によって新たな知識を得て行動を変化させることが求められるのだと考えられます。
学習が欲だとするならば、学習“自体”に得手不得手や好き嫌いがあるとは考えにくくなります。正確に言うならば、座学は苦手だけど実際に手に触れながら学ぶのは得意、など学び方や科目に対する得手不得手・好き嫌いがあるということでしょうか。食べ物に好き嫌い、食べ方に得手不得手があるように。実際に、ビュッフェ形式が苦手という人を私は知っており、食欲が減退するようです。
学習欲が本来備わっている欲ならば、私たちの誰もが「学習」を日常的に求めているということになります。自分や周りの人が、どんな学習スタイルが合っているのか探ってみると、学習欲が高く保てるのかもしれません。
〈参考図書〉
1.安藤寿康著『なぜヒトは学ぶのか ー教育を生物学的に考える』(講談社,2018)
(吉田)