霊長類学者のダンバーは、霊長類(サル・類人猿)の大脳新皮質のサイズと、それぞれの種の平均的な群れのサイズに相関関係があることを発見しました。大脳新皮質が大きな種ほど大きな群れを形成しますが、大脳新皮質のサイズを超えた群れは形成しないということです。
大脳新皮質は、私たち人間の認知や判断、言語、思考、計画といった活動を担っています。集団生活は、自分と他者だけではなく、他者と他者のやりとりや関係性にまで目を向けなければいけません。これは大量の情報処理を伴うことであるため、脳のサイズと集団のサイズには比例的な相関関係が生まれるのだと考えられるのです。
ダンバーは、人間の脳の大きさから導かれる本来の社会集団の人数は、150人程度であると推論しました。現代社会で関わり合う人数と比べてどうでしょうか。
会社で話す同僚や、家に帰って接する家族の人数は150人以内に収まっているかもしれません。しかし、通勤や町ですれ違う人や同じ電車に乗る人、SNSでつながっていたり目に入る情報の発信元となる人の数は、150人を超えている人も少なくないはずです。超えた人数と対峙することは困難であるため、認識や対応が疎かになります。都市部で特に見られる他者への無関心や、配慮の不足で度々起こる炎上などは、脳のサイズ的に仕方のないことであるとも言えるのです。
(吉田)