ベストセラー『ゾウの時間 ネズミの時間』の著者である生物学者・本川達雄氏は、「生物はずっと続くようにできている」と言います[1]。
なぜなら、38億年の歴史の中で、地球全体が凍りつく全球凍結が複数回起こっており、生物にとって不可欠な水が固体になってしまう死活問題が起きたり。巨大隕石がぶつかって粉塵によって日光がさえぎられ、光合成ができなくなってしまう事態が起きたりしたからです。それでもなお生き続けてきたということは、「生物はずっと続くようにできている」と考えるのが妥当ではないかということです。
別の言い方をすると、超絶に厳しい環境を生き続けるために、生物は様々な方法を進化によって備えてきたと言えるとも考えられます。生物に意思があるか否かは別にして、生物は「生きることが目的」であるのだと、私は思えるようになりました。生きることに必死だったのが生物の歴史であるということです。
人類は、自身を進化させるだけではなく、周囲の環境を変えることで生き続けられる可能性を上げてきました。そして現代では、寿命は大幅に延び、生き死にの問題をあまり考えなくてもよくなりました。
そうなってくると、生きることを目的に据える必要がなく、ある意味では目的を失っている状態なのではないかと思う時もあります。
次の目的は何か。
マーク・ザッカーバーグは、ミレニアル世代には、ただ自分の目的を見つけることだけではなく、目的を見つけるための方法を考え出すことを期待したいと、どこかの演説で言っていたように記憶しています。
目的不足は現代の課題、しかし、「生きる」という壮大な目的の喪失を埋め合わせるなんて、難しいのは当たり前だと開き直ってみたくもなります。目的がないのが標準で、日々の生活や仕事の中から少しずつ見出していく、それが現代の私たちの生き方なのかなぁなんて思いました。
〈参考図書〉
1.本川達雄著『生きものとは何か』(ちくまプリマー新書,2019)
(吉田)