“動”物なのに「動かない」という戦略をとる者がいます[1,kindle392]。ナマケモノです。
ナマケモノは1日20時間睡眠です。ナマケモノの移動速度はわずか時速100mです。ナマケモノはあまりに動かないので体にコケが生えます。
でも、だからこそ天敵である肉食獣に見つかりません。なぜなら、肉食獣は動体視力には優れますが、動かないものを見つけるのは苦手だからです。コケも生えているため、さらに見つかりにくくなっています。生えてしまったコケが擬態の役割を果たしているのです。
動かないために、ナマケモノは徹底した準備や実行をしました。
エネルギー消費を抑えるために体温を維持せず、外気温に合わせて変化させることにしました。体温が下がると動きがノロくなりますが、そもそも動かないから問題ないのです。
食べ物も毒のある木の葉を食べることにしました。他の動物は食べたがらないから、我先にと競う必要もありません。そうして動かなくてもいいボディを築いていったのです。
ナマケモノが今怠けていられるのは、戦略を徹底的に練り、戦略に合わせたボディをつくるという実行を徹底したからなのかもしれません。
見かけによらずしたたかなナマケモノ。名前や見た目にだまされるところでした。
(学問的な考え方では、生物は意思をもって形態を変化させたとは考えません。数多の変異をくり返した結果、環境に適応したのが今の状態であったために生き残り、今の特徴を有する種が繁栄していると考えます。野暮な補足でした。)
〈参考〉
1.稲垣栄洋著『弱者の戦略』(新潮選書,2014)
2.画像元のフリー写真提供者:https://www.photo-ac.com/profile/1904425
(吉田)