2021.03.31

スポットライトが当たるタイミング。 ー読書会の話

 久々に会うと、「え、そんなことやってるの」と思うことをやっている人がいたりします。でもよくよく昔を思い出していると、確かにそういうことが好きだったし、そういうことをしそうな性格だったななどと納得するものです。その時にいた環境では、その気質に応えられる評価軸や活かすフィールドがなかったから目立たなかっただけなのかもしれません。

 先日の読書会では、読んだ後の感想のシェアの時間に、人が活躍するタイミングのようなものを考えさせられました。少しだけ紹介したいと思います。

 『チーズはどこへ消えた』を読んでいる方がいました。小人二人とネズミ二匹がそれぞれ、迷路の中でチーズを探して、それを食べながら生活していく物語です。かなり間を飛ばしますが、あるとき小人二人が見つけたチーズがなくなってしまいます。大きなチーズで、これがあるからと安心していたのですが、なくなってしまったのです。二人の小人は、性格が違いました。一人は変化を好まず、なかなか動こうとしないタイプのヘムです。もう一人は、積極的に違う道を探すようなタイプのホーです。物語では、ホーがヘムを説得しながら、次なるチーズ探しへ踏み出していくという内容のようでした。
 ここで気になったことは、変化を好まずなかなか動こうとしないタイプのヘムは、物語の中でどういう活躍をしていたのかということでした。ホーの活躍は描かれていそうですが、ヘムの方はどうなのだろうかということです。
 最近ではよく多様性という言葉を耳にしますが、多様性とは、多様であることを受容することによって生きやすさが醸成されるだけではなく、多様であることによって多様に変化する環境でも生き抜くことができるという意味合いもあると解釈しています。変化が起きたその瞬間にはホーが活躍しそうですが、その前の安定的な環境や、変化を乗り越えていく過程でヘムがどのような活躍や振る舞いを見せてくれるのか、気になりました。

 そのような変化の時を描いた物語の流れで、次は『デジタル・チャンピオン』という本を読んでいた方がいて、感想をシェアしてくれました。デジタル・トランスフォーメーション(DX)について書かれている本のようで、それによって生み出される価値について言及されていたようです。価値の一つとしては、言わずもがなかもしれませんが、「効率化」が挙げられていたようです。
 しかしながら、効率化は必ずしも幸せを生み出しているわけではないよね、という話にもなりました。例え話で出たのは、出張で飛行機に乗って現地に着くと、メールが何件も来ていて「うわ〜」ってなる、これがFAXの時代であったなら…ということなどです。効率的ではあるのかもしれませんが、追い立てられることは健康の面でも、なにか発想を生み出すという面でもマイナスだったりするのかもしれません。ただ一方で、この読書会はZoomでやっているのですが、場所に囚われず、いろいろな人とこうして話せるのはいいことです。デジタル化が生み出す価値の良し悪しは一概には言えず、自分で一つ一つ見定めていくことは大切であると改めて思えました。

 そして、もしかしたらヘムは、こういう変化の後にこそ、ひそかに活躍するのではと思ったりしました。一気呵成に世の中がデジタル化された果てに、何かが足りないと思い始める人たちが出てくる。そんな中、ヘムだけは変わることを選ばずにそれまでの生活を続けていたとしたら、その生活を体験させてくれと訪れる人が出始めるかもしれません。最近の田舎暮らしや一次産業への関心の回帰を思い起こしました。
 人の価値観も、社会の文化も、多様であることを歓迎し決して押し付けない方が、めぐりめぐって、それぞれの人にとってのいい結果をもたらすのかもしれません。なぜなら、個人があるいは社会全体が今の状況に違和感を感じ始めた時に、参考にする先は今とは違う選択をした人や社会であるはずだからです。もしかしたらある時期には、「なにか変なことをやっているな」とか「時代遅れだな」と思われていたかもしれないものが、環境や自分自身の変化などによって、一気にモダンに思えてくるかもしれません。

 今回の読書会では、参加者の方たちの話を聞きながら、人の持っている何かが表に出てくるタイミングのようなものについて考えることができました。環境がどんどん変わっていく中においては、多様性を尊重するということはもちろんのこと、変わらないものを尊重するということも大切なのではないかと思ったりしました。そうしていろいろな人や社会に対して広く構えていた方が、変化にも強く、彩色豊かでいられるのではないかなんて思います。


〈読書会について〉
 読書会の情報については、FacebookページやPeatixをご覧ください。申込みをせずに直接訪れていただいても結構です。ただ、たまに休むこともありますので、日程だけはご確認いただければと思います。
Facebookページ
Peatix

 読書会の形式や最近の様子については、こちらに少し詳しく書いています。

(吉田)

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