人間は6つくらいまでが選択肢の限界のようです。それを越えると、比較して処理する能力が追いつかず、選択を放棄するようなのです。
ジャムを使ったこんな実験があります[1,P226]。
店頭に試食コーナーを用意し、Aでは24種類、Bでは6種類のジャムを用意しました。AとBは数時間おきに入れ替わります。AとBのどちらに、より多くのお客さんが試食に訪れ、ジャムを購入していったのでしょうか。
結果は、このようになりました。
■試食
A.60%が訪問
B.40%が訪問
■購入
A.3%が購入
B.30%が購入
■最終購入率
A.0.6×0.03=0.018=1.8%
B.0.4×0.3=0.12=12%
→B/A=0.12/0.018≒6.7倍
試食では、豊富な品揃えがあるAにより多くのお客さんが訪れました。
しかし、購入する段階では、Aはわずか3%しか購入に至らず、BではAの10倍の30%も購入に至ったのです。購入してもらうことを最終目標とするならば、品揃えが少ない方が7倍近くも目標達成率が高いということになります。
売り場に潜入していた調査員によると、Aで試食をしたお客さんは、あれでもないこれでもないとジャムを手に取り、最終的には買わずに出て行ったそうです。それに対してBで試食をしたお客さんは、スッとジャムを手にとってレジに向かったそうです。
ほかの実験でも、選択肢が6くらいまでなら正しく比較し判断することができますが、10を越えると正しい比較が困難になっていくことが示されていると言います[1,P224]。なかばパニック状態になるということでしょうか。
今、私たちは多すぎる選択肢に囲まれています。たとえば、〇〇Payなどは一気に選択肢が増えました。
選択肢が多すぎる時、選択すること自体を放棄するというのが人間の性ならば、業界の活性化や新しい手段の普及の時には、何らかの手段でサービスを絞り込んでいくというのも有効なのかもしれません。
〈参考〉
1.シーナ・アイエンガー著/櫻井祐子訳『選択の科学』(文藝春秋,2010)
2.画像元のフリー写真提供者:https://www.photo-ac.com/profile/1673381
(吉田)