昨日・今日ともに読みたい本を気ままに読む読書会でした。最近の読書会の様子は、参加者に投稿いただいた感想を見ていただくと少し分かるかもしれません。読む本や読書会のテーマにあまり脈絡を感じられないかもしれませんが、そういう「自由さ」のようなものは大事にしたいと考えています。ただ、共通していることは、当日その場で読む時間があるので、事前に読んでこなくていいということです。時間がある時や気が向いた時に来てもらえればと思っています。
・参加者に投稿いただいた読書の感想
私は引き続きマズローさんの本『人間性の心理学』を読んでいました。人の欲求は、生理的欲求>安全の欲求>所属・愛の欲求>尊厳の欲求>自己実現の欲求の5段階のピラミッド構造になっており、下の階層が満たされると上の階層の欲求を求め始めるということを唱えた人です。比較的有名な欲求理論で、私もいつかきちんと理解してみたいなと思っていました。読書会はいい機会なので、今読み進めています。
今日は、おもしろかったところを3つ紹介したいと思います。
1つ目は、下の階層が100%満たされた後に上の階層の欲求が湧き出すわけではなく、例えば70%くらい下が満たされると、上の欲求が湧き出し5%,10%と満たすように動き出すという点です。つまり、100%やり切る前に次の欲求が湧き出すということであり、欲望は継ぎ目が滑らかであるとも言えます。この考えが正しいとすると、なんだか人って忙しいなと思いつつも、それが生きることを支えているのかななんてことも思いました。マズローさんは、常に上の欲求が湧き続ける状態は健全ではないというスタンスをとる(だから自己実現を目指そうと言う)のですが、私は今のところ何でも、欲求が湧くことは生きるのに必要なことで決して悪くはないと考えています。ここらへんの考えは、これから読み進めて理解を深めていきたいと思っています。
2つ目は、一見満たそうとしているように見えている欲求と、実際に満たしている欲求は異なる場合があるということです。例えば、尊厳の欲求を満たそうと自分の考えを持ち、周りにしっかりと伝えているように見えている人がいるとします。しかし実際には、自分の考えを持っている方が自分の居場所を感じられたり、信頼を置かれたりすることがあるため、本当は所属や愛の欲求を満たしたいけど、尊厳の欲求を満たすように振舞う場合があるということです。これは「なるほど」と思っただけですが、あえて教訓を見出そうとするならば、満たしたい欲求を正しく見極めることで、より正しい満たし方をあてがうことができると言えるのかもしれません。所属・愛の欲求を満たしたいのであれば、(先入観ですが)軋轢を生みやすそうな自分を認めてもらうような行為をとる以外の方法があるのではないかということです。
3つ目は、下の階層の欲求が満たされていなかった経験がない人(記憶にない人?)が、後から下の階層が崩れても、一定の間は下の階層が崩れていることに耐えられるということです。例えば、過去に食べることに困ったことがない人は、第一階層の欲求が欠乏した経験がない人ということになります。その人が、今仮に所属・愛の欲求を求めているとした時、何らかの事情で食べることに困り飢えを感じたとしても、所属・愛の欲求を求め続けることができるということです。これが過去に飢えの経験がある人の場合は、少しでも飢えの危機に直面すると、今求めている欲求階層から下がって、飢えの欲求を見たそうと奔走するのだと言います。
現代の人は尊厳(承認)や自己実現の欲求を満たすことを目指す傾向にあるという考えや言説を、たまに見かけることがありますが、この考えはある程度正しいと言えるのかもしれません。現時点で衣食住や安全が脅かされる可能性が低いだけではなく、過去に脅かされた経験がある人も少なくなってきているため、衣食住や安全に対する欲求回帰(不安感情)が湧きにくいのだと言うことができます。それに対して上の世代の先輩方は、衣食住がまず整っていることの大切さをしっかりと認識しているように感じることがあります。
ただし、一定の間、下の階層の欲求が欠乏すると、下の階層を求め出すと言います。例えば、尊厳の欲求を満たそうとしているところで、なんらかの事情で所属や愛の欲求の欠乏を感じると、「やっぱり愛って大事だよね」と気づいてそちらを満たそうと動き出すということです。これも分かる気がします。何かを一生懸命目指すがあまり何かを失っていくような感覚を覚えた時、自分にとって大切なもの、優先度が高いものが見えてくるような気がします。でもそこが再び満たされたのであれば、また別の何かを求めて動き出す時も来るということなのでしょう。
『人間性の心理学』は読み進めるのに時間がかかる本ですが、マズローさんの精緻な説明は、日々を振り返る機会をくれるようです。リベルの読書会は、テーマが様々だったり、持ってくる本が参加者の自由だったりしますが、自分なりの振り返りのような時間として使ってもらえればと思っています。
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(吉田)