新しいブックレット『弱い一歩 〜自由な地平へ歩きだす〜』をリベルに置いておきました。ここでは、「あとがき」と内容の紹介を兼ねて書いていきます。
自分で考えて行動できること、目的から逆算して計画を立てられること、強くあることは、一つの望まれる姿かもしれません。しかし、これらの姿を目指しすぎると、一歩を踏み出しにくくなってしまうと感じることがあります。考えがまとまらなければ動けない、目的が定まらなければ計画も立てられなくて結果的に動けないというような状態です。
今回のブックレットは、〈弱いロボット〉という研究コンセプトからテーマを着想しました。〈弱いロボット〉の周りの力を借りながらタスクを達成していく姿は、まずは、気を楽にしてくれました。自分一人だけで動く必要はなく、周囲環境の力を借りることでこんなにもスムーズに動けるのだということです。
ただ、〈弱いロボット〉の研究は、もう少し深く人というものを理解させてくれました。それは、そもそも人は不完結な存在であるということです。自分だけで考えているわけでも、自分が起点となって行為を繰り出しているわけではないという、根本的な部分に不完結さを備えている。しかし、だからこそ人同士のつながりや、周囲環境からのインスピレーションを受けられるのではないか。アイディアが生まれたり創作ができたりするのではないかということです。
このブックレットで紹介したかったことは、人はそもそも根本的な部分に不完結さを備えていて、その不完結さがあるおかげで周囲環境とうまく調和して生きてきているということです。「人は弱い生き物だ」と感傷的になりたかったわけでも、「あえて弱くあろう」という作戦のようなものを示したかったわけでもありません。そもそも不完結で弱いのが人であり、だけれどもその方がうまくいくこともある、少なくともヒトは今までの長い長い歴史をそうして生きてきたということです。弱いと思っていた部分は、実は強いのかもしれないということです。
自分の力で問題を解決できるような自己完結性は今の社会で求められることだと感じています。しかし、そのような強くあろうとする気持ちを少し薄めてあげると、また新たな景色の広がりに出合えるのではないかと感じました。周囲に委ねてみることと責任を持つということをどう両立させるのか、周囲に預けてみることと自分が望むことの解離をどう整合させるのかなど、様々な疑問はあります。ただ、弱い一歩の先にある広がりが、おもしろそうなことは確かです。ですので、新たに抱いた疑問も一緒に携えながら、弱い一歩で踏み進めていきたいと思っています。
今回のブックレットの作成にあたっては、豊橋技術科学大学教授の岡田美智男先生にご協力いただきました。明日からどんな風に歩いていこうか、希望を膨らませながら考えることができました。ありがとうございました。
■ブックレット『弱い一歩 〜自由な地平へ歩きだす〜』の置き場所
https://liber.community/uncompleted-step/
■『弱い一歩』を使う読書会について
11月22日(日)の午前10:00〜11:45に行います。もし参加したいけど都合がつかない方がいる場合は、ご質問・ご要望フォームまでご連絡ください。何度でも開催致します。
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(吉田)