このテーマで先生を訪れた背景は、世の中の裏側も読めるようになりたい、ということでした。
世の中が、政治と経済で構成されているとするならば、政治の側があまりに頭に入ってきません。しかも、政治にはニュースなどでは伝えられていない裏側があることは感じるのですが、それの見当もつきません。そこを想像できるようになると、世の中の見え方や捉え方が、また少し変わるのではないかと思ったのです。
今回は、1972年の沖縄返還を実例として取り上げ、その返還交渉の過程を、密約まで含めて追ってみました。一つの実例に迫ることで、理解が深まり、見え方が変わるのではないかと思ったのです。
日本側の交渉姿勢には、第二次大戦敗戦以降の、日本の国民感情が投影されていました。他方で、アメリカ側の交渉姿勢は、もう少し合理的な利得を追求していたように感じられました。
その姿勢の違いは、起点は両者とも第二次大戦と同じにしながらも、その後の歴史の流れの中で、沖縄という領土にそれぞれ違う意味付けが成されていったことに起因していました。その意味付けの違いを理解するために、敗戦後の日米間の条約や、日本の独立までの流れについても少し触れています。
国家間の交渉はどのように行われているのか、そこに出来るだけ臨場するようなかたちでまとめています。当時の交渉文書も、一部引用しています。
また、その返還や交渉の流れに触れることで、現在でも沖縄をはじめとした領土問題が過熱的である理由も感じられました。敗戦後なんとか独立を守り抜いた、その苦難の歴史の一端としても、お読みいただければと思います。
(吉田)