2021.06.07

読書会の読書感想(6/5,6)

 参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。6月5日(土)は7名、6日(日)は10名の参加でした(主催者含む)。


6月5日:テーマのある読書会「京都」

みつこさん『私版 京都図絵』
 京都は他の地域とは少し違った場所なのだと思いました。
 いろいろな歴史が積み重なっていて、畏怖の念を感じてしまいます。

原さん『はんなりギロリの頼子さん』
 つやまさんが、柳宗悦に言及していて興味を持ちました。

つやまさん『京都の朝市』(柳宗悦)
 著者の柳宗悦は、「民芸」という言葉を発明し、当時美術的な価値が認められていなかった日用の工芸品に「用の美」を見いだす「民芸運動」を行った哲学者であり思想家です。著者が住んでいた大正の終わりから昭和のはじめにかけての京都では、毎日のように各所で大変な人出で賑わう朝市が開かれていて、著者も足繁く通って掘り出し物の織物や焼物などを買い漁っていたそうです。朝市の魅力について、次のように語られています。

『大体こういう朝市には、何も名のある立派なものは出てこない。だから評判などに便ってものを見る要もない。(中略)こんな場所では知識などは余り役に立たぬ。それだけに直観が遠慮なく活躍せねばならぬ。之が働くと、物の方でも悦んで近寄ってくるのである。』

 現代では何を買うにしてもやるにしても、戦略的に植え付けられた情報やイメージによって選ぶというのが当たり前になってしまっていて、このような無意識と偶然に委ねることで生まれる純粋な出会いが少なくなってしまっていることについて、そしてそれがもたらしている心的な貧しさについて、立ち止まって考えてみたくなりました。

てらもっち 7等兵さん『物語 京都の歴史』

京都の魅力。

路地を歩く猫の上品さ。
祇園の艶やかなスナック街としめやかな料亭。
亀石を飛び、鴨川を渡る爽快さ。
寺院の奥にたたずむ巨大な仏像との対話。

1000年の歴史を持つ街が
形作られてきた歴史を知ることは
自分の歴史を作る上でも、役に立つに違いない。


太古の京都。
京都駅南口くらいまで海が入り込む大阪から続く長い湾だった。
この湾の周囲に人が住みだし、歴史が始まる。

弥生時代に入り、沖積地の恵まれた大地は、大きな収穫を生み
富は集積し、人々が集まり、古墳が造られていく。

先に作られた藤原京は、人の心の迷いにより10年で捨てられ、
京都が造られる。

平安初期は、今の御所に作られた平安宮が政治の中心だったが、
北野神社に近い内裏に移動したり、院政のときは銀閣寺に近い白川殿にと変遷する。

豊臣期には10万人都市となった京都。
大阪や江戸、東京に政治の中心は移るが、
文化の中心として、日本の歴史を時計のように刻んでいく。

京都にヒーローはいない。
複雑に織りなす政治的史略や、蠢く人々が歴史を作っていく。

この一定のカオスと目立つことよりも継続することを優先する価値観が
京都の魅力であり、1000年の歴史を持つ町の構成なのだろう。

100年内に生を終え、自分の歴史は終わる。
京都のような、カオスの中の居心地の良さを保ち魅力を継続したい。

6月6日:読みたい本を気ままに読む読書会。

Takashiさん『図解表現のルール』(ドナ・M・ウォン著)
 XY軸のグラフをデカルト座標と言うらしいですが、デカルトって凄いですね。世界をたった二つの軸で表現しようとするなんて、まるで神への挑戦です。
 それはさておき、本書はレポートやプレゼンの図表現のルールを示したものです。時々こういう本で自分のやり方をチェックしないと、独りよがりになってしまうので気を付けています。
 今日のポイントは「プレゼンは白黒印刷してチェックしろ」です。色弱の人がいるかもしれないという前提ですが、そうでない人も濃淡の方が理解しやすいそうです。なるほど。

つやまさん『ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』 2019年12月 (NHK100分de名著)』(亀山郁夫)
【本の内容】
・約150年前の発表ながら今なお読み継がれている世界文学の最高傑作のひとつである、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』の訳者である亀山郁夫さんによる解説書。
・『カラマーゾフの兄弟』は、ドストエフスキーの作家生活と人生の総決算として書かれた長大な長編小説で、ロシア人の不屈の精神性の鮮やかな描写と、父殺しをめぐるミステリーとしての面白さという魅力をあわせ持つ。二部構成となる予定だったが、第二部の執筆前に著者が急逝し未完になった。
・ドストエフスキーは青年期に、領主だった父親を農奴に殺害される、社会主義運動に加担した罪で逮捕され間一髪で死刑を逃れる、という二つの経験によって精神的な傷を負っている。本作の執筆は、自らの人生の二つの傷の治癒のためであると同時に、それを歴史的なレベルに昇華することで、当時のロシア社会が直面していた皇帝権力と革命家の対立の危機を解決しようとするという試みでもある。
・物語の巨大で複雑な構成を理解するために、四つのレイヤーに分けて考えると読み解きやすいーー登場人物たちの行動や心理的葛藤が展開される『物語層』、作者の人生における出来事の意味づけをする役割をはたす『自伝層』、物語と歴史的状況や文化的基層との関係を示す『歴史層』、物語を支配する神や善悪などの原理について思索する『象徴層』。本作の主要なテーマは『父殺し』であるが、各レイヤーにおいて『皇帝殺し』や『神殺し』というように形を変えて展開され、それらの交差や衝突によって物語が重層的に構築されている。

【感想】
 文学作品の解説書はあまり読まない派ですが、今回読んでみて以前に作品を読んだときにはほんの一部しか読み取れていなかったことに気づき、その奥の深さに驚きを感じています。名作とされる作品でも真価を理解するためには読み手の深さも試されるな、と思いました。読書会の小グループでは、なんと全員が少なからず読んだことがあるとわかり、話が盛り上がって楽しかったです。

遠藤さん『シャーロットのおくりもの』
 
うーん、まあどうなんでしょう まだ分からないです。
 読書の感想より、今回はとにかく他の参加者との交流が楽しかったですね。
 「吾輩は猫である」の話題から、「もし、吾輩、じゃなくて、私は猫である、とかになったら平野啓一郎っぽいですよね」って話から、「平野啓一郎、確かに。いやーそれめっちゃわかる」っていう共感に繋がって、同じ趣味と言うか、ピンポイントのあるあるが分かる気持ちよさがありました。あと、こっちのブレイクアウトルームで全員が「カラマーゾフの兄弟」読んでる(挫折含む)のが判明して、「アリョーシャが社会主義に傾倒するじゃないですか」「ええーうそ、あのアリョーシャが?そんな展開になるんですか?」みたいなのとかも、めっちゃ面白かったです。

yukariさん『吾輩は猫である』
 吾輩は猫である。猫の目線から人間観察しているところが新しいなと思いました。猫のうちに泥棒が入ったけど、傍観してしまい役立たずだと、いわれ。

 他の方と共通して読んでた本もあったりして話が通じたのがよかったです。

なかとみさん『春になったら苺を摘みに』
 何かを信じて、それに突き動かされて行動する事と、独善的にならずに距離を置いて見ることのバランスをどう取るか。英国の田舎町をトレッキングしながら、そういう事をつらつらと考えた作者の思索の流れが書かれていた。自分でも歩きながら取り止めのない考え事をすることが多いので、あちらこちらへと行ったり来たりしながら深まっていく人の思索の動きの触れられて、「こんな考え方で良いのだな」と思えた。


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(吉田)

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