参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。7月17日(土)は7名の参加でした(主催者含む)。来週からは、また土日ともに開きます。
7月17日:読みたい本を気ままに読む読書会
うさじさん『零の発見』
今の数字の概念が、インド、アラビア、ヨーロッパ、中国など様々な国々の文化などが合わさって影響を受けていることが面白かったです。
Haruoさん『冬の道 吉村昭自選中期短篇集』
短篇集の表題作を読みました。この前2篇(タイトルは「黄水仙」「欠けた月」)と共に、父親の死期を綴った短篇です。
戦後間もない東京で、妻を亡くして以降、身辺の世話を堂々と女に任せるようになった父親が病気になり入院し亡くなるまでが、淡々と綴られています。混乱期なので、死を親類・縁者に伝えるのも大変、葬儀社は見つからず、棺を自製せねばなりません。
「私」は18歳で、結核による療養があり、工場を手広く経営していた父親が死に、長兄次兄は父親の工場を継いで商売変えなどしながら何とか遣り繰りしている。自分の将来は全然明らかになっていない。
心情をだらだら書いたりせず、何がどうなった、誰がどうした、を簡潔に記していくのが、この作家の面白さだと思います。
自分の18歳だった頃を振り返り、もし自分の父が専制君主的な人物であったらとか、戦後の混乱期を生きなければならなかったとしたらとか、そんなことも想像してしまいました。
Yukikoさん『夜と霧』
今回、読んだ本はずっと気になっていた本でした。
読書会でも読んでいる方もいましたし、テレビでも取り上げられていたので、この回でぜひと思い読んだ本です。
とても暗く、悲しい話かと思っていましたが、筆者は医者であり哲学者、学者なので自分が見てしまった、体験してしまった凄惨な出来事を静謐で淡々とした文章で表現していました。
でもなぜかそこにいる不思議な臨場感があり、自分だったらどうしていただろうと考えずにはいられませんでした。
さすが名著、皆さんがオススメするだけの本です。
これから困難状況に自分が陥った時、何度もこの本を読み返すだろうなあと思いました。
よしだ『新しいヘーゲル』
弁証法というものに興味があったので手に取ってみた本です。弁証法は、物事の矛盾や否定のぶつかり合いの中から、新たな理解やアイディアが生まれるという、物事に対する見方であると今のところは解釈しています。そんな見方を体得できたら、矛盾や否定を糧に前に進むことができることになるので、なんというか、怖いもの無しな感を抱いたので深く知りたいと思いました。
読んだところは序盤で、弁証法にはまだ行きついていませんが(あるいは「ヘーゲル」に関する本だからこの先も弁証法については深く言及されないかも…)、筆者の哲学という学問に対する批判がおもしろかったです。それは、「ヘーゲルは難解」というのがその世界の定説のようですが、原因にあるのはかつての日本人が西洋哲学を崇拝しすぎて難解なものに仕立て上げてしまったからではないかということでした。ありがたいものは、たとえば皇族に対するように、容易に近づけるものであってはいけない、という心理が働いたのではないかということです。ただ、私個人としては、明治期の西洋化の流れが急速すぎて、いかに優れた頭脳をもつ学者でも西洋学問を深く理解し、日本語へ適切に咀嚼して伝えるには、あまりにも時間が足りなさすぎたことにも原因があるのではないかとも思いました。いずれにしても、物事や世界を深く考えるための哲学、これからも分かりやすい本を期待したいと思いました。
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(吉田)