2021.08.27

読書会の読書感想(8/25-29)

 参加者に任意でいただいた読書感想を掲載します。8月25日(水)は5名、26日(木)は8名、28日(土)は6名、29日(日)は8名の参加でした(主催者含む)。
 今週は初めて平日に開いてみましたが、平日昼はいつもよりすこし静かで、夜はしっとりとした感じでした。

8月25日:読みたい本を気ままに読む読書会

匿名希望さん『窓際のトットちゃん』
 教育というのは後のその人を形成する大切なものだとあらためて思いました。小林先生は優しい言葉をかけてあげようと思ったからという動機でなく、本当にトットちゃんの力を信じていたからそのようにしたのだと思います。
 後半は皆で哲学カフェさながらの深くて興味深い話がたくさんできて楽しくうれしかったです。
 こうして皆で話すと新たな活力になります。
 ありがとうございました。

原有輝さん『善の研究』
 プラトン、アリストテレス、デカルト、スピノザ、アウグスティヌス等の、錚々たる顔ぶれが出てくると思いました。意志による理想の実現。個人の理想か、国家の理想かで、だいぶ違う。全世界的な理想の擦り合わせが大切だと思いました。

おおにしさん『いつかたこぶねになる日』小津夜景
 著者の小津夜景さんは北海道出身の俳人で、現在は夫とフランスで暮らしている。
 本書は夜景さんの日常をまとめたエッセー集で、どのエッセーにも夜景さんが現代語訳した漢詩が紹介されていることが特徴である。
 漢詩と言えば、私には高校の授業で苦しめられた経験があるが、夜景さんの訳を読んでこんなに自由に面白く訳して構わないのだとわかり、ちょっと漢詩が好きになってきた。

 本書で紹介される漢詩は唐の詩人から日本人まで幅広い。
 高校教師であったころの夏目漱石の漢詩も紹介されているが、若いころの漱石がとてもセンチメンタルな詩人であったことを知り驚いた。

 タイトルの「たこぶね」はタコの名称で、メスは船形の殻を作りその中に産卵して子供を育てる。そして子供が巣立った後、メスは殻を捨てて新たな生活に入るそうだ。
 夜景さんは、美しい殻を惜しげもなく脱ぎ捨て未知の世界に泳ぎ出す「たこぶね」に女性の自由な生き方を重ね合わせて、いつか自分も「たこぶね」になりたいと願っている。

 夜景さんの文章は思いつくまま自由に時空を飛び周り、我々にいろいろな世界を見せてくれる。
 私には夜景さんはすでにエッセーの中で「たこぶね」になっているように思えた。

8月26日:読みたい本を気ままに読む読書会

yuさん『おかしな人間の夢』
 2130-2230の時間帯で、寝る前の読書。自分はおかしな人間だと自覚している男が、今晩自殺することにした。家に帰る途中、小さな女の子に膝を掴まれ助けを求められた。それが結局私を,この世にとどまらせた。という。何もかもがどうでもいいと,思っている人むけ?  

原有輝さん『日本人のためのKindle入門』
 初参加の方が、安い報酬の方が、クリエイティブな仕事ができるとおっしゃいました。今日僕が読んだ本でも、薄利多売のKindle出版を勧めていて、最近ではnoteもそうらしいです。

よしだ『生物多様性』本川達雄著
 ナマコやウニなどを、一時期は沖縄の大学に在籍しながら研究していた本川達雄氏の本です。遺伝子などのザ・サイエンスっぽい研究や本も好きですが、日々生き物を観察するようなザ・生物学も好きです。それぞれの生き物は、人間からみると変なのだけれど、ある種の合理性というかすごさを備えていて、単純に「すげぇ」となります。
 この本は前に一度読んでいてまた読み直しています。今回読んだところで印象的だったのは、生物は環境に適応して生きているだけではなく、環境そのものも作ってきたということでした。たとえば、元々は海中にしか住むことができなかった生物が陸上に進出できたのは、シアノバクテリアが酸素を大量に発生させオゾン層ができ、陸上に紫外線が遮断された環境ができたから。また、生物は水がないと生きていけませんが、雲を生み出し雨を降らす空気中の水蒸気は木の蒸散によって生み出されている部分が大きいのだとか。森がなくなれば水蒸気が生まれず雨が降らず森が消えていく。必然的に、他の生物も生きていくことができなくなる。これ以外にも多様な生物が多様な環境を生み出し、だからいろいろな生き物が生きていくことができている。いろいろな生き物がいるから、急激な環境変動が起きても、その中で生き残れるものがいる可能性が高くなり、生き残ってまた繁栄していく。自然とは大いなるバランスの上でに成り立っているのだということが感じられました。

8月28日:読みたい本を気ままに読む読書会

Takashiさん『オセロー』シェイクスピア著 新潮文庫
 
ガチの古典だし、どうなの?難しいの?と、思って読み始めたが、これは超面白い。

 立派な軍人オセロー将軍の部下イアーゴー、こいつがオセロー将軍の地位に嫉妬して、色恋を絡めながらオセロー将軍とその周囲を罠にはめていく話だ。イアーゴ―の心情や策略が事を起こす前にセリフで説明してあり、とても親切な構成になっている。

 設定を変えれば今のドラマでも十分面白いものが出来るだろう。昔から沢山作られてるらしいけど。

 解説記事だけ読んで済ませるのは勿体ないと思った。

yuさん『予告された殺人の記録』
 
この話は実話を元に書かれている。はじめはノンフィクションとして書きたかったそうだが当時スペイン語圏ではその分野が発達していなかったからという理由でやめたらしい。それをよんでも信じられない。え?これが。
双子の兄弟が、サンティアゴナサールを殺す話。登場人物が多い。

 他の方は推し燃ゆ。に桐島部活やめるってよを思い出したっていうのが、へぇ。当たり前すぎる風景を言語化できるのは改めてすごいことだと感じました。

8月29日:テーマのある読書会「話すこと」

おおにしさん『人は語り続けるとき、考えていない』河野哲也
【第1章まとめ】
 子供たちが発する質問を答えようとするとき、質問を分解し専門化して回答するしかない。
 それでは問いは連鎖し後退していき、問いに答えることは永遠にできなくなる。
 これが哲学の問いの全体性のバラドックスである。

 ソクラテスの「無知の知」は問いの全体性を取り戻すこと。
 ソクラテスの対話法はあらゆる思想の枠組みを外し、アイデンティティを取り壊し、流動的な生を生きるためのメソッド。
 社会の中で”よりよい”生を生きることを否定し、自分が吟味した”よき”人生を見つけ、それを生きるために哲学があるとソクラテスは言う。
 進歩、発展、成長という画一的な社会的要請により、自分の生に意味付けを行うことは、人生には不要。つまり、人生の意味や価値の探求は、それ自体が無意味なのである。

【感想】
 とんでもない結論。
 良い対話をするためにどうしたらよいのかを知りたくて読み始めた本でいきなりこんな話になって戸惑ってしまう。
 人生の意味や価値の探求は無意味と言われてしまったら、我々は一体どうすればよいのだろうか。
 第2章以降に解決策が書いてあるのか?とりあえず読み進めてみる。

うさじさん『無意識の構造』
 今日もありがとうございました。
 話の中で、教育やデザイン、対話やについての話題がでて楽しかったです。
 型にはまらないアイデアを見出すには、やはり多様な意見やアイデアを受け入れたり、評価できる雰囲気や環境作りが大切なのではないかと感じました。

Takashiさん『オセロー』シェイクスピア著 新潮文庫
 ページ数は二百と少し、そして大きな文字。最初の三十ページで登場人物と背景を把握すれば、ストーリーが単純なので最後まであっと言う間に読めます。

 オセローの不安の種が、悪党のちょっとした仄めかしでどんどん大きくなります。悪い奴の思い通りに事が運ぶのを見ながら、読者ははまるでドリフターズさながら「志村うしろ!」ならぬ「オセローうしろ!」と叫びたくなる状況がテンポ良く展開されます。

 こんなに面白かったのか、シェイクスピア。

原有輝さん『異文化理解力』
 異文化理解には、開かれた心と開かれたコミュニケーションが必要です。シェイクスピアや森鴎外や質問や、開かれた気持ちで聴く姿勢が必要になります。


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